建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

本日ここに、平成二十七年度信州大学入学式を開催できますことは大きな慶びでございます。関係の皆様に深く感謝を申し上げます。(以下、朝日新聞サイトより転載)

 新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。信州大学は全学を挙げて皆様を歓迎いたします。そして、ご両親、ご家族の方々に心からお慶びを申し上げます。おめでとうございます。

 皆様が本日入学式を迎えることができましたのは、厳しい受験勉強を克服された努力の結果であります。と同時に、励まし頂いたご家族、ご友人そしてご指導頂いた先生はじめ多くの方々のお陰だということを改めて深く胸に刻み、感謝の気持ちをいつまでも持ち続けてください。

 そして、留学生の皆様は母国を離れ、言葉、文化、生活習慣の異なる信州のこの地に生活することになりました。初志を貫徹され、四年後に大きな成果を挙げられることを期待しております。

 また、信州大学大学院にご入学された皆様にも、心からお祝いを申し上げます。おめでとうございます。最高学府である大学院の入学式に臨まれて、決意を新たにされていることと存じます。今の新鮮な知的高揚感を決して忘れることなく、大学院での学びと研究を続けて頂きたいと存じます。

 ところで、新入生の皆様は、本日、大学受験から解き放たれたことになりましたが、もう勉強はしなくて良いなどとは考えていませんよね。

 今までは、皆様は正解のある問題を解くことに終始していました。知識の量を試されていました。世の中では、正解のない問題を解かなければなりません。誰も考えたことのないことを考えるという、知識の質を問われることになります。さらに、世界の状況は変化が大きく、スピードも速く、ICTの進歩で一気にグローバル化します。

 大学院入学生にも、是非聞いて頂きたいのですが、日本が今後とも活力ある社会を維持し、世界へ積極的に貢献していくためには、科学、技術、文化のいずれの分野でも独創性や個性を発揮することが重要となります。横並びの発想では問題を解決できません。

 皆様は、もしかしたら、個性の発掘に没頭する「自分探し」をしませんでしたか。また、これからしようと思っていないですよね。若い時の自分探しは勧められません。特に、解剖学者養老孟司さんは、「個性は徹底的に真似をすることから生まれる」とまでおっしゃられています。伝統芸能の世界に見られる、師匠と弟子の個性の違いを指摘されてのことです。

 個性を発揮するとは、なにか特別なことをするのではなく、問題や課題に対して、常に「自分で考えること」を習慣づける、決して「考えること」から逃げないことです。自分で考えると他人と違う考えになることが多くなり、個性が出てきます、豊かで創造的な発想となります。

 学生で言うと、普段の勉強を真剣に取組むこと、そして身につける「知識の量」を主とするのではなく、「知識の質」すなわち自ら探求的に考える能力を育てることが大切となります。

 ところで、信州大学の学生は独創性が豊かなのでしょうか。ここに興味あるデータがあります。昨年六月の日本経済新聞の調査結果です。上場企業四三三社の人事担当者から見た「大学のイメージ」調査です。「対人力」、「知力・学力」、「独創性」などについてのランキング結果です。

 信州大学は、京都大学を抑えて、「独創性」項目で第一位です。この「独創性」の判断は「創造力がある」と「個性がある」という質問で行っているようです。

 一言付け加えておきますが、信州大学は、「知力・学力」の項目でも、高位にありました。「単に変わった人間が多い」ということでは決してありません。

 就職されている先輩諸氏は、「独創性」が高いという社会的評価です。皆様もそうでしょうか。卒業すると、そうなるのでしょうか。私は違うと思います。受験勉強と同じ気持ちでは駄目です。大学での勉強と生活の仕方を変えなければなりません。

 その理由をお話しましょう。創造性を育てるうえで、特に、心がけなければならないことは、時間的、心理的な「ゆとり」を持つこと、ものごとにとらわれ過ぎないこと、豊か過ぎないこと、飽食でないことなどが挙げられます。

 自らで考えることにじっくり時間をかけること、そして時間的にも心理的にもゆったりとすることが最も大切となります。

 子供の頃をちょっと思い出して下さい。子供の頃は、例えば、夏休みがゆっくり過ぎていたと感じませんか。大人になると、忙しさで、時間は走馬灯のように速く過ぎていきます。脳科学者のDavid Eagleman(デイウィッド イーグルマン)さんは「記憶が詳細なほど、その瞬間は長く感じられる。しかし、周りの世界が見慣れたものになってくると、脳が取り込む情報量は少なくて済み、時間が速く過ぎ去っていくように感じられる」と言っています。

 自分の時間を有効に使うために、自力で時の流れを遅くする必要があります。

 そのために五つの方策が提案されていることは良く知られています。

 一、学び続けること。新しい経験が得られて、時間感覚がゆっくりとなる。

 二、新しい場所を訪ねる。定期的に新しい環境に脳をさらす。

 三、新しい人に会う。他人とのコミュニケーションは脳を刺激する。

 四、新しいことを始める。新しい活動への挑戦。

 五、感動を多くする。

 信州大学では、自然に囲まれた緑豊かなキャンパスでの勉学と課外活動、都会の喧騒とは無縁の落ち着いた生活空間、モノやサービスなどが溢れることのない地に足の着いた社会など、知的にものごとを考え、創造的な思考を育てる環境を簡単に手に入れることができます。先輩諸氏は、このようにして、ゆっくりとした時間の流れを作っていたのです。

 皆様はどうでしょうか。残念なことですが、昨今、この信州でもモノやサービスが溢れ始めました。その代表例は、携帯電話です。アニメやゲームなどいくらでも無為に時間を潰せる機会が増えています。スマホ依存症は知性、個性、独創性にとって毒以外の何物でもありません。スマホの「見慣れた世界」にいると、脳の取り込み情報は低下し、時間が速く過ぎ去ってしまいます。

 「スマホやめますか、それとも信大生やめますか」 スイッチを切って、本を読みましょう。友達と話をしましょう。そして、自分で考えることを習慣づけましょう。自分の持つ知識を総動員して、ものごとを根本から考え、全力で行動することが、独創性豊かな信大生を育てます。

 最後にご紹介したいことがございます。本日の入学式では二つの歌を皆様と一緒に歌うことになっています。一つは信州大学の前身の一つである旧制松本高等学校の思誠寮寮歌「春寂寥」です。大正九年に吉田実さん(作詞)と濱徳太郎さん(作曲)の二人の学生によって作られました。

 旧制松本高等学校は、大正八年(一九一九年)に開校され、その後信州大学の発足にあたりその母体の一つとなり、文理学部に改組されて昭和二十五年(一九五〇年)には閉校となりました。

 文科と理科の専攻に分かれての勉強ですが、授業時間の四割が外国語、文科でも数学と自然科学が週五時間ほど課せられ、また理科でも国語及び漢文が週四時間ほど課せられる、文理の差が非常に少ないカリキュラムでありました。

 ほとんどの生徒は思誠寮での寄宿生活であり、寮生活を通して、切磋琢磨により、自らの生き方を見出すという恵まれた時間をつくることができたと言われています。まさに独創性が育まれたということです。作家の北杜夫さん、辻邦生さん、病理学者の飯島宗一さん、日本人として初めて南極点に到達した南極観測隊々長の村山雅美(まさよし)さんなど各界で著名な方々が多くいらっしゃいます。

 もう一つの歌は、信州大学学生歌「叡智みなぎる」です。昭和三十五年に文理学部宮坂敏夫さん(作詞)と工学部羽毛田憲一さん(作曲)の二人の学生によって作られました。文理学部同窓会誌に、宮坂敏夫さんが書かれた「作詞の経緯」によりますと、信州大学学生部が六十年安保闘争のデモに明けくれる学生の実態を見て、学内に潤いが欲しいと思って、学生歌の募集を始めたのではないかとあります。なお、宮坂敏夫さんは、現在俳人としてご活躍でいらっしゃいます。この「叡智みなぎる」の学生歌ができた頃の学生達は、自らの勉学時間を削ってでも、日本の国の在り方と国の行く末を案じるという、熱い情熱を持って学んでいたのです。

 また、この二つの歌はいずれも、松本在住の音楽家丸山嘉夫さんによって、見事に編曲され、若者たちの「青春の歌」として蘇っていることを付け加えておきます。

 皆様は、一日も早く新しい生活環境に慣れ、心身ともに健全に保ち、勉学に励み、目標に向かって進んでください。大学生時代は、長い人生の中でもかけがえのない大切な時期であります。充実した楽しい大学生活を過ごされることを期待しています。

 そして、大学院に入学した皆様は、自らの高い問題意識と積極的な取り組みによって、初めて真理が探究でき、新しい知の創造の喜びが生まれ、社会に貢献できることを肝に命じてください。

 学術研究の将来を担うのは皆様です。信州大学の学術研究は皆様の肩にかかっています。高い志と熱い情熱を持ち続けてください。そのことによって、日本の明るい未来が開けるものと確信しております。

平成二十七年四月四日

信州大学長 山沢清人

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