建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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3月6日、 私、岩井は九州大学大学院統合新領域学府ユーザー感性学の田北雅裕研究室の「卒論・修論発表会2014」に行ってみなさんの発表をきかせていただきました。

発表者とタイトルは以下でした。いつもとは違う方々の発表を聞くことができとても良い刺激になりました。
▼大学院(統合新領域学府ユーザー感性学専攻)
1)愛甲梨恵:福岡市における事業者連携見守り事業の現状と事業者の選定に関する一考察
2)阿部亜美:一般誌における「リノベーション」の概念の把握及び価値の体系化
3)鋤柄さやか:街区公園を媒介とした新旧住民による一体的自治活動の提案 —行政区画や居住空間の隔たりを越えて—
4)副島久江:崇敬者を対象とするウェブサイトを活用した神社の広報に関する一考察
5)戸高諒子:福岡県における図書館のアウトリーチ活動の現状と課題
 ▼学部(教育学部)
6)松野梨沙:里親への関心から登録に至るまでの心理的プロセスに関する一考察
 
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 1)愛甲梨恵:福岡市における事業者連携見守り事業の現状と事業者の選定に関する一考察
高齢者のセルフネグレクト(認知症がその一因)による孤立死を防ぐため、事業者による見守り事業が福岡市で行われています。高齢者などの自宅を訪問する業務中、孤独死など疑いがある住民の異変に気付いた場合、福岡市が設置する「見守りダイヤル」に通報を協力するという事業です。考察では、来店型の事業者は高齢者と実際に対面し、高齢者の社会活動を見守ることができることから認知症の高齢者に有効であるといえる。金融機関では継続的な見守りによって異変を察知することができると考えていることがわかった。課題としては、多面的な見守りの欠如、個人情報把握の限界、がある。
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2)阿部亜美:一般誌における「リノベーション」の概念の把握及び価値の体系化
 空き家の増加が深刻化するなどストック活用の社会的必要性が謳われている。古い建物に新たな付加価値をつけて再生させるリノベーションへの注目がある。
 一般向け雑誌の中でリノベーション特集記事を調査分析し、変遷や多様性をみる。
 雑誌のなかでリノベーションは、「大規模改修工事」(2001)⇒「価値を引き上げる」(2004)⇒「ライフスタイルに合わせて」(2008)⇒「ライフスタイルが変わる」(2011)と、 リノベーションという語の使われ方が、空間の変化⇒暮らし方や生活に影響する変化と変容してきた。2008年以降リノベーションは住宅事例が8割以上を占める。
一般消費者にとってリノベーションといえば住宅になった。
 広告文は、2002年 「東京はリノベを繰り返して新しく再生していく」←不良債権化した不動産の蔓延2003年問題。2003年「Rプロジェクト不良債権化した老朽物件をおしゃれなテナントビルに」など、クリエーターによるリノベーションプロジェクト、リノベーション専門企業の登場。2009年「コダテリノベ」などキャッチ―な表現の増加。
2012年「ふえてます!男子おひとりさまリノベ」リノベーション実施者の一般化。
 価値要素の変遷。機能的価値、社会的価値、情緒的価値。2002年は情緒的価値が割合としては大きかった。その後も情緒的価値の割合が大きいことは変わらないが、機能的価値も増えている。
 都市計画・大規模開発⇒住宅部分的補修  クリエーター高所得者ヴィンテージ好き⇒一般消費者
 今後はリノベーションに対する実質的な理解を求める一般消費者の増加で、雑誌では「賢い選択」を喚起する傾向が強まるのではないか。

3)鋤柄さやか:街区公園を媒介とした新旧住民による一体的自治活動の提案 —行政区画や居住空間の隔たりを越えて—
 新旧住民が共同する活動の舞台として、街区講演の運営活動を提案したい。清掃・植栽管理・イベント企画など頻度・難易度・目的の異なる活動がある。様々な年代や立場の人が活動できる舞台。地行2丁目に新設される公園計画の住民WSを対象に調査。
 住民の意見を反映させた公園の計画。新公園の管理体制の検討。既存の公園の課題が表出。新規住民の取り組みと町内会を超えた管理体制づくり。
 公園完成後の3つの実践活動として、オープニングイベント・公園の愛称の募集・公園清掃があったが、アンケート結果から新規住民をも巻き込みながら、公園管理の新たな担い手づくりにおいいて、これらの活動を通して一定の成果が見られた。

4)副島久江:崇敬者を対象とするウェブサイトを活用した神社の広報に関する一考察
 
氏子と崇敬者にとって魅力あるコンテンツと、現在の神社のウェブサイトにおける問題点を明らかにすることが「新規の崇拝者獲得」と「今まであまり神社と関係を持ってこなかった氏子区域に住む人々が積極的に氏神に関わるキッカケ」になることについての一考察。
 アンケート結果から、氏子という意識が薄いことやサイトの閲覧数が少ないことがわかった。もっと知りたいと思わせる仕組みが必要である。
 一般企業のように差別化広報をするのではなく、神社全体を底上げしていくような広報が必要である。
 
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5)戸高諒子:福岡県における図書館のアウトリーチ活動の現状と課題
 福岡県下の図書館にアウトリーチ活動をしているかどうかの調査をおこない、図書館のアウトリーチへの意識と活動状況を調べた。アウトリーチ活動としては読み聞かせ、ブックトーク、ストーリーテリング、朗読会、移動図書館、講演などの普及活動、利用困難者への資料の貸出(刑務所や身障者などへの郵送貸出)
 アンケート結果から図書館職員が感じている課題が明らかになった。
1.人員・時間不足 2.予算不足 3.要望の把握不足 4.連携不備 5.広報手段が不明(利用者が集まらない) 6.ボランティア不足 
 アウトリーチ活動を必要と感じながらも実施しない要因としては、他の図書館(例えば、分館でなくて中央館)がしたらよいという意見があった。この他、図書館の無自覚性、予算不足、アウトリーチの優先度が低い、ボランティアの役割の曖昧さ、図書館の受け身的姿勢があげられる。

 ▼学部(教育学部)
6)松野梨沙:里親への関心から登録に至るまでの心理的プロセスに関する一考察
 里親の登録者を開拓することは、家庭養護を維持し、委託先の選択しが増えるということでマッチングの質を高めることになる。福岡市は養子縁組と併せた情報発信や産婦人科での情報発信。基礎的情報へのニーズがある。
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他の研究室の卒論修論発表に参加させていただき、非常に有意義な体験をすることができました。
 自らのゼミにいたのでは、聞けないこともきかせていただくことができました。
 
 「一般誌における「リノベーション」の概念の把握及び価値の体系化」や「崇敬者を対象とするウェブサイトを活用した神社の広報に関する一考察」は、などは切り口が今風で興味深く拝聴させていただきました。「福岡県における図書館のアウトリーチ活動の現状と課題」では、アウトリーチ活動を必要と感じながらも実施しない要因として、他の図書館(例えば、分館でなくて中央館)がしたらよいという意見があったということを知りました。この他、図書館の無自覚性、予算不足、アウトリーチの優先度が低い、ボランティアの役割の曖昧さ、図書館の受け身的姿勢など、考えさせられるものでした。
 田北研究室のみなさん ありがとうございました。大変興味深い内容の発表でした。
                       
                                      岩   井
              

 

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