「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」(劇場法)が2012年に施行され、劇場や音楽堂などが、地域の文化拠点であり、公共財ともいうべき存在と位置付けられた。
一方、全国の公立劇場の現状は、管理・運営を民間などにも代行させることができるとした指定管理者制度の導入から10年を超え、様々な課題が浮かび上がっている。
ひとつが、運営や事業に携わる専門的な人材の雇用と育成である。財団法人「地域創造」のサイトには劇場の求人情報が多く掲載されているが、指定期間が3~5年で、引き続き運営できる保証が無いことから、大半は1年ごとの有期雇用だ。
また、改正労働契約法で有期雇用が5年を超えると無期への転換が可能になったが、むしろ、継続更新について5年未満での「雇い止め」も懸念される。
自治体との協定により、人件費も固定され、求人は欠員補充が中心となり、翌年度の就労意向が判明する秋以降の募集となっている。
他方、2000年代以降、アートマネジメント関連科目や講座のある大学などが増え、100を超えている。専門知識を学んだ卒業生の受け皿のひとつとなるべき劇場ではあるが、元々即戦力を重視する上に、5年未満の有期雇用が中心で、募集が4年生の秋以降となると、学生も二の足を踏む。
当劇場でも毎年、大学生らのインターンシップを実施し、昨年は8人が9カ月間、劇場の運営や事業を体験している。いずれも「舞台芸術に関わる仕事」を希望しているが、その熱意が冷まされかねない現実がある。また、めでたく就労に至っても、将来的なキャリア設計が描けず、結果、30歳前後で他業種に移る者も少なくない。
文化庁の文化審議会文化政策部会では今、「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次)」に向けて、人材育成も含め議論されている。
文化芸術は、愛好者のものと捉えがちだが、その波及力として、教育、福祉、まちづくり、観光・産業などとの関連性や、社会参加の機会を開く包摂機能も認識され、「文化芸術立国」がひとつの国家目標とされている(同方針第3次)。
劇場法などの趣旨を踏まえ、文化芸術と社会をつなぐアートマネジメント専門人材の雇用環境の整備や育成に向け、指定期間の長期化や、専門職の資格化、助成制度の柔軟化など、実効性ある施策と、各自治体の文化政策への反映が必要である。
(きしまさと あうるすぽっと〈豊島区立舞台芸術交流センター〉支配人)