建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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 11月30日(日)北海道深川市の文化交流ホールみ・らい開館10周年記念事業で開催された音楽物語「わが街 深川」を観てきました。私はこの深川市からJRの特急で30分、車で1時間程の距離にある美唄市出身です。美唄市も深川市も同じ<空知(そらち)>という北海道の中ほどにある地方(10市14町で構成)です。私は同じ空知の人間として、深川市民がどれだけの力をもっているのか、芸術というものに対して市民は何ができるのか、内輪受けにならないか、芸術のクオリティは守られているのか等、疑問や期待、不安の入り混じった気持ちで観劇に臨みました。
     (写真は関係各所の許可を得て掲載しております。)
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 JR深川駅附属の観光物産施設で「わが街深川」のPR映像をみました。
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 このコミュニティスペースでちょっと情報収集。この音楽物語に参加している市民のみなさんがどのように取り組まれたかを小耳にはさみます。ナニナニ…「倒れるほど練習をやったようだ。」との情報を得ました!!
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 ↓ここが深川市文化交流ホールみ・らいです。こんな立派な施設があることを知りませんでした。
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 ↓ この絵(原画)はポスターやパンフレットにも使われております。演技指導をした渡辺貞之先生が描かれたということです。白樺、遠くに見える青い山、ナニヤラ話をしているような動物たち、この絵だけで一つのお話ができそう。-北海道をわかりやすく、きれいに、絵本の一場面のように描いてくれており、非常にうれしい作品です。
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 早めに行ったのですが、みなさん列を作って開場を待っていらっしゃいました。
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 車椅子の方のスペースもちゃんと確保されておりました。
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 とうとう始まります!チラシには、
「♫ソラチ ソラチ ソーラプッチ 空を知る土地。その一番北に、わが街、深川があります。このステージは私たちの街の歴史と街に関わる人の記憶を、音楽と演劇で綴るユニークなもの。屯田兵の入植、米つくりの始まりと発展、水害、カナデル広場、ウロコダンゴ、そばめし、まちのケーキ屋さんや喫茶店、拓大(拓殖大学北海道短期大学)プチミュージカル、この街で培った愛の物語、インタビューで集めた様々なエピソードを元にした、空のように広く、川のように深い【深川】のドラマ」とあります。

 はじめは子供たちによるコロポックルが市内にある縄文時代の墓と考えられているストーンサークル(1956年に国の史跡にしていされている)を紹介するところから始まりました。
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 北海道深川の土地の大きな歴史物語と、そこで生きる人々の個人の物語が同時進行で展開されてゆきます。大きな物語は屯田兵の入植、冬の厳しい生活、小さな物語は北海道にはからずも来た人々の話。注目すべきは紹介される人々の中に有名人は一人もいないということです。名もない市民の話を集める、一人ひとりの話を大切にききとり物語化されたお話がこんなにオモシロイとは思いませんでした。
 この「わが街深川」で脚本・演出・プロデュースを担当した、桜美林大学教授で北九州劇場プロデューサーの能祖將夫先生はパフレットの中で、「舞台を創るにあたって三ツ井育子館長から3つの課題をいただきました。市民参加・音楽と演劇・地域オリジナル。子どもからご年配の方までが参加して音楽と演劇で綴られる、深川ならではのオリジナル作品を創ろうというわけです。なぜ音楽と演劇かといえば、深川は合唱やお芝居が生活に根付いているからです。一番の問題は地域オリジナルでした。深川らしさとは何か?悩んだ末に思い至ったのは<人>です。深川に生まれ育った人、やってきた人、出ていった人…それぞれの人の思い出話やちょっとしたエピソードを織り上げていけばそれが一番の深川らしさになるのではないか。そこからは館長と一緒にたくさんの人にお目にかかり、ホールでは<人生で心に残っていること>を募集して話しを集めました。(中略)-外からは作曲の長生淳さん、指揮の中川賢一さん、ピアノの白石光隆さん、特別合唱指導の村上敏明さん、そして私の五人。深川の文化芸術の為に共に戦うというわけです。」
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 ↓は地元・拓大のプチミュージカルを取り入れた部分。拓大ミュージカルには30年以上の歴史があります。
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 一つのエピソードとして、イクエとヒロシの物語がありました。イクエは四国高松の若い女性、知り合ったヒロシと結婚したいのですが、親の反対にあいます。「北海道には熊が出る。北海道ではエスキモーの暮しをすることになる」など親から色々言われます。
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 深川市のHPより「この深川に北海道開拓のために入植した屯田兵たちは、北海道へ来る前には米を食べていたが、入植してからはアワや麦を食べざるを得ず、米を食べたいという思いが強かった。試しに植えてみるものもいたが、寒冷な気候のためうまく育たなかったり、水不足で田が乾いたり、水害で稲を流されるなど失敗の連続であった。深川では、1892年(明治25年)、音江で稲を植えたところうまく育ち、また、稲を植えることを禁止されていた一已(いちやん)の屯田兵の一人が1896年(明治29年)、稲の栽培に成功した。当時は屯田兵には稲の栽培を禁じられていたが1897年(明治30年)頃からは、米を自由に作れるようになった。 」昔の北海道では米を作ることができなかったのです。米を食べるのが当たり前になっている現代では信じられないことです。
 このような歴史的背景の上に、ある屯田兵が使っていた蓑についていた3本の稲穂が農業地・深川の基礎をつくったことが紹介されました。
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 ウロコダンゴという、ういろうのような味と触感で三角形の外観を持つ、素朴な味わいの深川名物菓子があるのですが、これがどうして、<ウロコダンゴ>という名前になったかのエピソードも紹介されておりました。
 1913年に誕生したこのお菓子は、深川~留萌間に旧国鉄留萌線が1910年に開通したことを記念して、高橋商事の創業者・高橋順治氏が製造・販売を開始したものです。当時の名称は「椿団子」。しかし、この「椿団子」というネーミングに待ったをかけた人物が 当時の深川駅長の椿修三で「どうも僕の苗字の下に団子をつけて大声で売られるのは変だ」。そこで代替案として考えたのが「ウロコダンゴ」。当時日本海岸ではニシン漁が盛んで、留萌沿岸から来る貨物列車がニシンの鱗だらけ、そして団子も側がウロコ状だったから。
 このような深川に因んだ物語があったり、イクエとヒロシが結婚できるか否かの話があったり、厭きさせず、私の眼には新しい物語が音楽とともにこれでもかこれでもかと打ち出されました。
 ピンクの洋服は深川市民で現地合唱指導をされた菊入三恵さん。声楽・ピアノ教室主催。この方が四国から来た、この物語の一人の主人公ともいえる存在。すんごい上手でした。
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 物語の進行をしていたのが、この↑二人。実は一人は地元のパテシエの佐藤おずまさん、もう一人は新聞記者の嶋あつしさん。お二人の声はよく通り、わかりやすく、お笑いもありで楽しかったです。
 ↓ソーラン節の合唱があったのですが、画期的なアレンジ!歌いにくいソーラン節を実に上手にうたってました。 
 もう一つ、カナデル広場という広場がありました。深川市民からお金をあつめて皆でタイルに自分の思いを書き、それを集めたオブジェを作りました。でも今では、このカナデル広場は使われなくなり、このオブジェが残ってます。
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 歌・合唱の伴奏はピアノのみでした。他の楽器はありません。白石さんのピアノがずっと勢いが衰えることなくしかし歌声と美しいハーモニーを保ちながらばんばか聞こえました。プロフェッショナルの演奏とはこういうものかと感激したり、感心したり、びっくりしたり、喜んだりしてました。
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 第九もありました。
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 最後はみなさんで歌い上げました。
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 ピアノの白石さんは3時間の上演中、ピアノを弾きっぱなしでした。
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 3時間に及ぶ音楽物語が終わりました。このミュージカルを創造し、この地の人々のエピソードを丹念に集め、作詞作曲(長生先生はオリジナル曲を30曲作った)し、演出し、参加者を募集し、練習し、3時間にも及ぶピアノ演奏で質の高い演奏をできる演奏者、楽しい演技もできる指揮者をみつけ、地元の音楽家がコラボレーションした非常に見応えのある作品でした。私は市民劇というものを初めてみましたが、ビギナーズラックとでもいうのでしょうか。質の高い市民音楽劇に出会うことができました。市民参加・高い音楽性、物語の展開、地元重視の姿勢、深川市の中にあるものや人を丹念に拾い集め、物語として提示し、練習を重ね、高いクオリティを保った市民による音楽物語「わが街深川」。堪能させていただきました。舞台美術も照明も良かったです。

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 次の日は、館長が深川市を案内してくれました。
その前に私がみた深川には以前、北海道拓殖銀行として使っていた建物が現在では市民の交流の場となっているものがありました。このような立派な銀行の建物は美唄市にはありません。留萌でとれたニシンを鉄道で深川に運び、取引があったのでしょうか?
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↓ライスランド深川にて。
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 その後、ととろ峠で猫バスに遭遇。
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 生憎の天気でしたが、深川市を一望することができました。
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 市民の皆さんによって30年前につくられたタイル。
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もちろんホールに帰り地元の出演者・関係者の皆さんからお話を伺わせていただきましたし、ホール内も担当者に見せていただきました。私にとっては貴重な体験となりました。一つの舞台を作り上げるにはこれだけの人々の熱意と努力、芸術活動をしたいという気持ちがないとできないといことがわかりました。
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 進行役で本当は菓子店ボーダーのパテシエ・佐藤自真(おずま)さん。
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 三ツ井育子館長と加藤理事長。
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 ↑乳幼児を持つ人々のための観覧席。↓にはミルクをつくることができるキッチンがありました。
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 主人公のお二人からもお話を伺いました。イクエを演じた保坂さんと合唱指導の菊入三恵さん(地元在住の声楽家)。
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 私は25000人の田舎町出身です。田舎ではなかなか芸術と巡り合うのが難しいです。美唄市には安田侃という石の芸術家の作品が設置されているアルテピアッツア美唄ということろがあり、コンサートも時々していますが、この他は札幌まで行ってみなければなりません。市民の中に絵画・音楽・芸術を求める心があっても、芸術に接する環境に恵まれているとは言い難いです。なんでも札幌に行かないと(芸術は)無いと思っておりました。
しかし、深川は市民の声を拾い、それを具体的に音楽物語に昇華できたのです。不思議です。なぜできたのでしょうか。合唱やお芝居が好きな土地柄に、地元の小さな物語を拾い上げようとする能祖先生や三ツ井館長、そしてプロフェッショナルな音楽家の指導、地元のみなさまの努力があったからこそ、このような市民参加としてクオリティの高い、非常に見応えのある作品ができたのだろうと思います。合唱参加者の主婦の方に聞いたところ、「もともと合唱をしていたのでこの劇に参加した、4月の団結式のあと、非常によく練習した」とのことでした。
 
この音楽物語を見て、空知地方の人間で良かったと思いました。空を知るというフレーズもいいし、この物語の展開もこの北の大地に生きる人々を肯定的に捉えております。私は空知は貧しく教育にも熱心でない土地柄だと思い、都会である札幌(石狩地方)をいいものとしてきましたが、この劇を観終わって、空知にもいいとこあるんだと、なにやら九州のみなさんにこの「わが街深川」を自慢したくなりました。

 ↓最後に進行役で出ていた佐藤おずまさんはパテシエで、「わが街深川」の為に限定でお菓子を作りました。
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 原材料名にはアレが入っておりました。
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                                    岩  井


 
 

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