建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

ふ印ラボ博士1年の張慶彬(ジャン)です。


去る2014年11月15日(土)から17日(月)にかけ、私は大阪の相愛大学砂田和道先生から誘われて、横浜市で開催された日中韓文化芸術教育フォーラム2014に参加することができました。

今回のフォーラムの参加は、日本の芸術教育を研究していらっしゃる相愛大学の砂田先生の通訳をしながら、韓国の方々との交流を目指したものですが、創造都市を研究している私にとっても、アジアの社会において芸術が地域の創造的な人材=人財をどのように育成しているのかを知るには、とても有意義な体験になりました。

砂田先生は、ふ印ラボ藤原惠洋研究室と交流が深い先生です。元来は、アメリカ・ボストンにあるニューイングランド音楽学院出身のオーボエ奏者として知られます。さらにはティーチングアーティストとしてアメリカのニューヨークフィールハーモニーとのコラボレーションをはじめ、これまで約500回ものワークショップを体験し、帰国後2010年からは、文科省でコミュニケーション教育推進会議というところで委員をなさっておられるほどの芸術教育の専門家です。
しかしコミュニケーション教育推進会議を行う時に芸術ワークショップでどのようにコミュニケーションの努力を高めていくかという検討から、学校教育に合わせた芸術ワークショップを行うための教育システムはどうしたらいいか、あるいはコーディネーターのシステムはどうしたらいいのかという検討まで、いろいろ思案を重ねてこられましたが、2011年の東日本大震災が起こった頃から、会議が徐々に切れてきたそうです。
そこで砂田先生は一念奮起され「音楽を暮らしに」プロジェクトを構築されてこられました。そして、約10年まえからでき始めた韓国の芸術教育システムに強い興味を持つようになり、現在まさに韓国の芸術教育に関する調査を行っているところです。

日中韓文化芸術教育フォーラム2014は、今年東アジア文化都市で指定された横浜で行われることになりましたが、これはただフォーラムを開催するだけではなくて、日中韓の高校生を対象として演劇ワークショップや2014東アジア文化都市横浜のクロージングイベントを兼ねて行われたのでした。
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まず11月の15日から16日。
日中韓の高校生のワークショップが行われました。
韓国の学生5人、中国の学生5人、日本の学生10人が参加した今回のワークショップのタイトルは「やって/みる」。
言葉も通じない三つの国の高校生たちがとりあえず、やってみる今回のワークショップは国境は言葉を超える芸術教育の重要性を十分感じることができました。
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15日初日に行われたもの。
各国の高校生たちはとりあえず、簡単な数字ゲームやボールゲームを通じてアイスブレーク時間を過ごしました。
また、動物園を見学し、動物園の様子を皆が協力して体で表現したり、スポーツの様子を表現したりしながら、学生さんたちはそれぞれの創造力を生み出しました。
その後、どんどん仲良くなった高校生たちは16日の最後の日には簡単な演劇を三つのグループで分けて各国の言葉で行いました。
それぞれの言葉を使っているにも関わらず、演劇を通じてお互いが感じたのは言葉の壁ではなくて、相手の心をたいせつにしあったからでしょう。
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続く17日のフォーラムでは、日本、中国、韓国のそれぞれの芸術教育の政策や事例が多数紹介されました。
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中国のばあい。
芸術教育とは社会主義の教育の元で立徳樹人(徳を立て人を樹える)のため社会に貢献する教育の一つとして重視されていました。
特に2014年「学校における芸術教育の発展推進に関する若干意見」よると小学校における学生の芸術的素養の評価制度を確立するということと、学校における芸術教育活動の自己評価公示制度を確立するのを唱えているのが特徴で、無形的なアートの価値をどう教育的に評価させていくのかが期待されました。
また北京の大学生たちの多様な芸術イベントの開催を通してイベントの参加、学校間の交流による芸術教育の事例が紹介されました。PB171159

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日本の場合。
横浜市の芸術教育のプラットフォームの仕組みが発表され、アートNPOや民間団体と地域の文化施設を中心に学校、企業、地域住民、行政を連携する中間支援組織であるSTスポットというNPO法人により芸術教育が主に行っているのが分かるようになりました。
その一環として、今回の文化庁と横浜市が主催した日中韓文化芸術教育フォーラムもSTスポットが横浜が地域の劇団と行政をつなげて行ったのです。
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韓国の場合。
文化体育観光部(日本の文化庁に当たる)の公共機関として2005年に韓国文化芸術教育振興院が設立されて、三つの国の中で行政による積極的な芸術教育が行っていました。
また、中央だけではなくて、地域に地域芸術文化支援センターを設置し、中央の芸術教育政策を実行しています。
さらに、芸術教育で専門化された芸術教育講師を雇用して、各地域の学校に講師を派遣させ、教科教育で足りなかった芸術教育を補完していました。
その事例としては釜山の廃校危機があった町はずれの小学校が芸術教育を強化することによりどう変わってきたのかという事例が発表されました。
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このように、今回のフォーラムは東アジアの芸術教育の傾向をいっきに把握できるとても有意義な時間でした。
特に韓国の行政主導の文化・芸術を活かした地域再生政策に反対している私にとっては、芸術教育にとっては行政の関心が力が重要ではないかと思いました。
教育というのは元々社会のインフラであり、芸術そのものが教育の一部に受容されたのは誰にも平等な芸術教育を受けられる国民の権利になるので、今後からも各国の行政による芸術教育に関する関心を高める必要があるでしょう。
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今回のフォーラムでは、今年3月の終わりに砂田先生と韓国芸術文化教育振興院のヒアリング調査を行った時にあった国際交流チームのリ・ダヒョンさんとも会うのができました。フォーラムの発表者である振興院院長と一緒にフォーラムに参加したということで、交流会では韓国芸術文化教育振興院の方々や芸術教育講師との交流を行いました。

現在、韓国では各芸術分野のそれぞれの教育ではなくて、韓国芸術文化教育振興院の講師方々がが中心になって美術、音楽、演劇、伝統などの各芸術分野の統合的な芸術教育ワークショップを企画しているところ、また、冬休み、あるいは夏休みぐらいに砂田先生と私が参観しに行くつもりです。

フォーラムの終わりにモデレーターである太下義之氏から、現代の芸術教育の重要性に関する話は三日間のフォーラムの意義をはっきり説明してくれました。
「2~3年前、ニューヨークタイムズの記事によると、現在の小学生の65%が、今はまだない仕事に努めるようになる、という記事があった。今はない仕事を創造していくためには、こどもたちにどんな教育が必要なのか?今回のフォーラムは現在のこともたちに創造性を高める芸術教育の重要性に関して考えられることになった。」
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創造都市を研究している私にとっては、今回のフォーラムの参加を通じて未来の創造クラスを育成するためには、現在のこどもたちの芸術教育がとても重要だ、ということをあらためて感じることができました。たいへん有意義だったと思います。砂田先生、あらためてありがとうございました。

以上

D1ジャン

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