第8回国際芸術祭「釜山ビエンナーレ」に間に合った。
アーティスティック・ディレクターは、仏マーグ財団美術館館長のオリヴィエ・キャプラン氏。
テーマは「Inhabiting the World」(世界に住まう)。
オリヴィエ・キャプラン氏は「安定しない現在の世界で、私たちは積極的に世界というものに働きかけ、積極的に住んでいるのかという疑問を投げかけたい。芸術家はよりエネルギッシュにそしてアクティブに、なおかつポジティブに世の中を捉えている。これを皆様に提示したい」と語ってきた。
メイン展示となった釜山市立美術館の館内は「抽象・運動」、「宇宙」、「建築的空間」、「アイデンティティ」など7つのセクションに構成。
さらに2カ所の会場へシャトルバスで往来できます。
私が味わって出色だった作品は、期待とおり塩田千春(第56回ヴェネチア・ビエンナーレ(15年)日本館出品作家)のものでした。
これはいたって感動的でした。
天井から吊り下げられた年代物のスーツケースが斜めの空間を生み出しており、その中のいくつかはがたがた音を出して揺れ動いているのです。
カタストロフィーを前にして私たちが余儀なく突きつけられる感情、のようなものが、皮膚の下から汗のように涌き出してくるのです。
うふむむ。金縛りにあったように立ちすくむオーディエンスが次々と捉えられてしまう空間。
とりわけ私はこの夏、ベルリンで塩田さんとお会い出来るチャンスがありました。しかしながら、韓国・釜山へ
仕事で行かれてしまって会えなかったのです。
その仕事というのが、驚いたことに、この釜山ビエンナーレの作品制作だったことを後で知って、いつかはぜひとも観てみたいと思っていたのです。
会場全体では約50名の作家たちの作品や表現活動が抽象からデジタルへ、平面からインスタレーションへ、所狭しと作品を提示しており、私たちがどこかで見てきたようなアートの領域の多くがそこに網羅されているように思えました。