建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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私、張(ジャン)は、9月終わりから10月始めにかけ、2回に別けて韓国の東大門市場エリア調査を行ってきました。

1回目調査:9月17日(水)〜 9月19日(金)
−ソウル国際ハンドメイドフェア2014
−チャンシンドンㅏ公共空間(000間)
−東大門深夜市場
−Garden5(衣服専門総合ショッピング・モール)

2回目調査:10月1日(水)〜3日(金)
−チャンシンドン Art Bridge(芸術団体)、まち歩きツアー参加
−チャシン・スンイン都市再生支援センター
−DDP Open Market

 ソウルは2010年、ユネスコデザイン創造都市に指定されています。以前の都市ブランド上昇を目標に掲げたオ・セフン市長のイベントや企画から離れ、最近では2011年に市長になったバク・ウォンスン市長によるソフトな都市政策が展開されております。その中でも私は韓国のファッションの中心地と言われる
東大門エリアが魅力的に思えました。なぜなら、そこには前のオ・セフン市長が推進した東大門デザインプラザ(DDP)というデザイン産業の拠点としての立派な建物があり、その裏には東大門デザイン産業をささえている1200カ所余りのチャンシンドンという衣類の家内制手工業地域があるからです。前のオ市長のハードを重視した都市政策と今のバク市長のソフト重視の都市政策の共存は不思議かつ魅力的に見えます。
 加えて、産業と住居、行政の政策と住民の意欲、中央(卸売り)と地方(小売り)などが一つの場所で見ることができるのでホットスポットだと思っております。創造都市、地域再生の最前線のように思えるのです。
 私は創造都市を研究対象としておりますが、その概念だけでは把握しきれないので、「再生」というキーワードも加えて調査を始めました。都市と文化の関連から生まれるものが地域コミュニティにどのような影響を与え、それが「再生」につながるのか、調査する価値があると思います。

まず、ソウル市にあるGarden5という複合ショッピングモールの現況を見てみることにしました。Garden5はソウルの
淸溪川の復元事業を行う時、以前の淸溪川で店を出していた人たちが新たな場所で出店できるようにと東南圏最大のショッピングモールを目指して2010年にオープンしましたが、現在では空き店舗も多く、お客さんもなかなか来ないということで、ソウル市の施策の失敗ではないかと言われるようになってしまいました。
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 以上がGarden5の様子です。

 一方、↓東大門デザインプラザ(DDP)はGarden5とは性格が異なります。都市政策における位置づけが違うのです。しかし、市民との十分な合意がないままつくられた経緯もあり、今後を憂う地域住民もおります。
東大門プラザは昔の東大門運動場が古くなり、1988年のソウルオリンピクの際には新しい運動場が建てられましたが、結局老朽化により、その地域の再開発を行いました。しかし、東大門運動場は1925年に建てられた韓国の最初の近代体育文化施設であり、DDPの工事中には、ユネスコ世界遺産の登録を目指しているソウル城郭の一部及び遺跡地も発見されましたが、復元は一部でとどまり、その後工事を続行したものですから、市民から建設反対の声が上がりました。
 バク市長は前のオ市長が目論んだ世界的なデザイナーや展示の誘致・情報発信という戦略から、市民の文化空間としての公益性を重視する戦略に路線を変更したのです。
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市民の文化空間のを示すものとして、10月1日~5日まで、DDPオープン・マーケットが開催されました。  DDPオープン・マーケットは
1)東大門市場の商人が参加した「東大門文化マーケット」
2)チャンシンドン縫製町の共同組合やアート集団が参加した「チャンシンドンオープン・マーケット」
3)中央アジアの貿易商人が集まって、東大門のシルクロードとも呼ばれているグァンヒドンの「マルチカルチャーマーケット」
4)第3世界の自立を手伝っている多様な公正貿易や地域共同体の「公正貿易マーケット」
5)デザインを通じてストーリーを作っている「ストーリーデザインマーケット」、
6)日本、中国、北ヨーロッパのデザイン小品の「ワールドデザインマーケット」
7)出版文化の多様性を奨励するための「独立出版マーケット」
とともにGary Hustwit(グラフィックデザイナー、映画監督)の映画上映及びセッション、創造的な音楽活動を行っているインディーズバンドの公演が行われました。

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チャンシンドンは東大門市場とDDPがある場所から北に約1kmぐらい離れている住宅地です。そこには東大門周辺の衣類マーケットが入り、家を改築した
家内制手工業地域が自然発生的に結成されました。昔は約3,000カ所の縫製工場があったですが、衣類産業の衰退によって、今は約1,200カ所に減ってしまい、町の衰退が進んでいます。
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今回はArt Bridgeという町で演劇を通じ、子どもの教育や町でコミュニティー支援活動を行っている芸術団体のまち歩きツアーに参加しました。今回のツアーでは、チャンシンドンの地域コミュニティー活動を学ぶため、ソウル市のゴンルンドンという町から住民が30人ほど参加しました。

私は前に一度この地域を訪れたことがあります。その時はよく分かりませんでしたが、このツアーでで会った住民たちの案内や説明を通じて、地域に隠れている多様な資源とでも呼べるようなものに気づくようになりました。
チャンシンドンは縫製産業以外にもソウルの城郭が残っている城下町であり、韓国最初の演劇学校だと言われている朝鮮俳優学校の敷地があり、世界的なビデオアーティストであった白南準(Nam June Paik, 1932.7. 20~ 2006. 1. 29)の幼年時代の家もあります。そして、何よりも6つの村の共同体で組織された美術や演劇などの芸術教育、村ラジオ、こども図書館運営などの活動を行っていることがその特徴といえるでしょう。PA030300

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<000間>
美術の専門家二人が地域子どもセンターで芸術教育プログラムを行うことがキッカケとなって、今はチャンシンドンにおける地域の問題をアートの力で解決する活動を展開しております。アートの中で暮らし、暮らしの中にアートを持ち込み、まちとアートをつなげているのです。
子ども教育、町の環境を整備する美術プロジェクト「オルマク(上り坂)プロジェクト)」、縫製工場看板作り、村散策プロジェクト「都市の散策者」、地域縫製工場との協業プロジェクト「Zero Waiste」など地域再生のためのコミュニティーアート制作をしております。
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<Art Bridge>
もともとソウルの文化特区として小劇場が沢山集めている大学路で子どもの歴史教育のための歴史演劇をやっていた社会的企業であったですが、2012年に初めて演劇プログラムをして大学路との文化的な差に驚いたそうです。チャンシンドンと大学路(ソウル文化特区)は城郭により分けられているだけで、実際は直線距離にしておよそ1km程度で隣り合っている町なのですが、住民たちは今まで演劇を見たことがない人がほとんどだったそうで、
Art Bridgeのシン代表は大学路の事務室をチャンシンドンに移して、住民たちと演劇活動を一緒にしてみようと思ったそうです。また、チャンシンドンは1925年に建てられた韓国の最初の俳優育成学校であった「朝鮮俳優学校」があったり、有名な画家が沢山住んでいた町なのに地域の子どもたちにはその意識はあまりなかったとのことで、子どもたちによる演劇を通して、自分や住んでいる村に対する自負心を取り戻す活動をしております。
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<村ラジオドム(韓国語でおまけという意味)>
村ラジオのジョ局長はもともとチェジュ島出身で、若いごろ仕事を探しにソウルに来たそうです。それでチャンシンドンの縫製工場で就職して、ソウルの暮らしを始めましたが、いつも朝早くから夜遅くまで仕事をし家には寝に帰るという生活を20年間続けてきました。しかし、ある日、故郷であるチェジュ島ではあった街の暮らしががソウルにはないということに気がついて、ソウル市の「われわれ、村メディア教室」でラジオ運営技術を学んでチャンシンドンで町のためのラジオ放送局を作りました。今は住民が歌を歌ったり、楽器を演奏したり、自らの話をしたりと住民を主体にした放送をしております。他者の話を聞くことがきっかけとなり、今は個人から町という共同体に興味が広がり、住民インタビューなどを通じて、町の状況報道も計画されています。点の活動が面の活動に広がったのですね。
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<モドンジ(なんでも)図書館>
チャンシンドンは中国や東南アジアとの価格競争に打ち勝つため、人件費を極力減らすということをせねばなりません。つまり、少ない人数で朝早くから夜遅くまで大人たちは働いております。その結果、子どもの世話にはなかなか手が回らなくなっております。それで、チンシンドンではモドンジ図書館をつくり、子どもたちが自由に使える教育的空間を作っております。住民たちが自らで壁にペンキを塗ったり、本棚を作ったりして、子どものための文化空間を作ったのです。
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<チャンシンTable>
チャンシンTableはUrban Hybridという地域のコミュニティーを重視する都市開発会社として、大学の都市計画研究者で構成されています。
Urban Hybridはチャンシンドンでデザイナーと縫製の技術者とのプラットホームとしてグログロというブランドを作り、クッションや人形を制作・販売しています。
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このようにチャンシンドンでは2年前から住民によるコミュニティーがつくられ、外部団体との協力を通じて多様な活動を行っております。今年からは行政の支援ももらえるようになりました。

チャンシンドンは地域の衰退によりソウル市が2004年から取り組んでいる「
New Town」という開発事業の対象地域として2007年に「
New Town」地区に指定されました。しかし、人口減少や経済低迷、不動産価値の下落などが原因で2012年にソウル市の14カ所のNew Town」対象地域の中で8カ所が住民同意により、「New Town」地区の指定を取り消すという事態になりました。その後、韓国では都市再生特別法の制定によって、全国の13カ所の町が「都市再生先導地域」に指定され、その一環として、チャンシンドンは住居地と縫製家内手工業の特区として指定されました。その他、釜山は釜山駅と北港の創造経済区域、江原道(カンウォンド)太白市(テベクシ)は廃駅舎や炭鉱町のアイデンティティを活かした小都市再生があります。PA020130

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チャンシン・スンイン都市再生支援センターはソウル市の「都市再生先導地域」であるチャンシンドンとスンインドンの都市再生本部として、行政と大学教授などの専門家で組織されております。今年7月29日に開所されたこの組織は現在、「チャンシン・スンイン都市再生先導地域活性化計画」を策定中で、「地域共同体活性化」、「縫製産業支援による地域経済活性化」、「空間環境活性化」を目標としているそうです。また、なにもより、現在の町の一番大きな問題は既存の「New Town」の開発を支持する住民と「都市再生」を支持する住民間の間に考え方の相違があるということです。この為、今年はとりあえす、この相違を減らし、全住民の積極的な参加を図ることが急務とのことでした。
ソウルの東大門周辺はこのように住宅地、家内工業地、商業地がDDPを中心にして集まっているので、服の注文をすると、3日に後にはデザイン、生産を経て、販売ができる仕組みを持つ地域です。また、このように生産された衣類は各地域に卸売り価格で販売されます。夜8時から次の日の朝6時がその時間で、釜山はもちろんデグ、光州など全国の小売り商人がこの時間になると団体バスなどを利用して東大門に集まってくるのだそうです。

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 なんだこれは!凄い!
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東大門市場は昔のソウルの城郭などの伝統や現代のファッションデザイン産業、DDPのような未来のシンボルなどいろいろな時間と空間が共存しているところです。今からソウル市はこのような独特な東大門市場の風景を都市発展にどう活かして行くのか、多くの人々の関心をよびそうです。

                                       D1ジャン 

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