建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

 みなさん柯です。
 日本への留学をひとつの機会ととらえ、アジア全体へ広がる視点を獲得しつつあります。
 そのなかでも今、私が最も興味があるのは「世界遺産」です。身近な言葉になってきましたが、よくよく考えてみると、これは国際法に基づいてはじめて登録されるという壮大な事業でもあります。この仕組みを私たちはいったいどれだけ熟知しているのでしょうか。

 これは1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基き、世界遺産リストに登録された遺跡、景観、自然など、人類が共有すべきOUV「顕著な普遍的価値」を持つ物件のことで、移動が不可能な不動産やそれに準ずるものが対象となっているのです。

 世界遺産に登録されるとそれはそれで保存管理上のさまざまな課題が突き付けられることもたいせつな視点です。私が考える最も肝要な問題点は「観光地化」です。
 見学の場所が、元来特別な聖地空間となっている寺社亭閣の場合はまだ大丈夫ですが、最も問題なのは、登録された遺産の場所が住居地の中にある場合、外来の観光客の見学行為が地元住民の生活を侵害したり、毎日の生活を邪魔することになっている点が大きな難点です。
 
 こうした観点から日本で最も知られている事例は、登録後に観光客数が激増した白川郷、五箇山です。白川郷の場合、登録直前の数年間には毎年60万人台で推移していた観光客数が、21世紀初めの数年間で140-150万人台に激増しています。
 これらの地域では、世界遺産の公共性を身勝手に曲解した一部の観光客が、住民の日常生活を無遠慮に覗き込むなどのトラブルも発生しています。世界遺産における保全管理と観光活動が共にどのようにバランスを取るのかは、今後重大な課題になるのではないでしょうか。

 近年、世界遺産巡りの旅行は各地で盛り上がっており、世界遺産に登録される遺産の価値は世界に認められているのはもちろんのこと、世界各国で国家のブランドと誇りにもなっています。

 私は留学生として来日しているため、各地の世界遺産を見学できます。これはとてもありがたいことと思います。

 以下、近年私が実際に訪ねた日本・法隆寺、中国・万里長城、韓国・宗廟を比較しながら、世界遺産のマネジメントについて、いったいどのような保存管理や観光への提供のしかたがあるのだろうか、それらの観点を検討していきたいと思います。

 まず、以下に各国を代表する三ヶ所の資料を簡単に紹介します。

万里の長城:人類史上最大の建造物、万里の長城。そもそも長城とは、中国歴代王朝が北方遊牧民族の侵入を防ぐために築いた城壁でした。紀元前3世紀の秦の時代から17世紀の明の時代まで営々と築かれ、すべてを合わせると長さは5万キロ以上になると言われています。(参考:NHK世界遺産)
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 法隆寺:奈良県生駒郡斑鳩町にある寺院。7世紀に創建され、古代寺院の姿を現在に伝える仏教施設であり、金堂、五重塔を中心とする西院伽藍と、夢殿を中心とした東院伽藍に分けられ、西院伽藍は現存する世界最古の木造建築物群です。法隆寺の建築物群は法起寺と共に、1993年に「法隆寺地域の仏教建造物」としてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。(参考:ウィキぺディアフリー百科事典)


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 次は、それぞれの現場を歩きながら、世界遺産が私たちにどのように感じられるのか、どのように適切な保存管理がなされているのか、さまざまな観点から遺産のマネジメントの様相について総合的に見ておきます。

 宗廟:朝鮮王朝(13921910)歴代の王と王妃の位牌が祀られ、祭祀が行われる儒教祠堂です。もともとは中国が起源ですが、儀礼と建築様式において韓国ならではの特徴があり、特に主殿の正殿は19間の建物で、同時代の単一木造建築物としては世界最大規模とされています。荘厳で節制された東洋建築の精神と宗教的建築が持つべき価値を実現しています。

 また宗廟祭礼は、毎年5月宗廟で開かれる祭祀儀礼です。1464年から現在まで原型そのまま保存されていて、儀礼音楽の宗廟祭礼楽とともに世界最古の総合祭礼文化として、ユネスコ人類口伝および無形遺産傑作に選定されました。(参考:韓国観光公社)

一、所在位置によって管理方法が違う

宗廟はソウル市内にある、交通手段は便利だが、上記の方法を行わないと、大勢の人がいる恐れがある。宗廟の見学する際、必ず所定の時刻に従ってガイドさんが連れて見学するのことになる。それで、この時間帯は一つのグループで見て回るから、大勢の観光客からの騒音や邪魔にならない。警備さんも随時現場の状況を把握して、この時間帯がそろそろ終わる前に、受付に連絡して次のグループを入場させる。収容力(capacity)の配慮を工夫しながら、宗廟の祭礼の神聖空間の機能も尊重している。
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万里の長城

 法隆寺、万里の長城の場合はいずれも郊外に位置しており、行くのも便利とは言えないため、見学者は団体でバスを利用することになります。どちらの場合も、どんな団体や個人でも随時に入場でき、大勢の人が行き交わすため、見学する際の騒音や行動等も品質に影響を及ぼしています。

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法隆寺境内

二、管理人さんは、安全、秩序の配慮のために文化遺産の保全にも必要になっている

 管理人さんがいると、現場の状況が把握でき、万が一、緊急事故や文化遺産を損害する行為が起きた時(落書き、タバコ、人員オーバー)すぐに対応できます。また、文化遺産を修復する時期、管理人さんはさらに必要となります。観光客がいる中で行われている万里の長城の修復工事では、見学ルートや秩序の管理もないため、もし事故が起きたら大変です
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法隆寺の境内
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宗廟で警備さん(後ろにいる人)が随時現場の状況を把握している


万里の長城工事現場では、作業員と見学者が混在し、安全問題になっている

三、ガイドさんの育成

 宗廟のガイドさんは国家の訓練を受けた方が担当しています。しかも、現場に駐在しており、文化遺産に対する愛着心と環境を詳しく知っているため、見学客に丁寧に案内できます。反面、法隆寺や万里の長城で観察した状況では、旅行会社のガイドさんは滞在時間と人員の行動に注意しなければならず、または時間不足のため、急いで説明する可能性もあり、品質の低下につながる恐れがあります。

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四、見学する前の、見学者に対する教育

世界遺産についての基本情報、これから見学する遺産はどんな重要性を持っているか、注意事項を呼びかける等、ビジターセンターを設けて見学者への説明をおこなうことが必要です。

 
 以上の日本・中国・韓国の代表的な事例にかかわらず、世界遺産は人類の至宝ともいえます。国籍、種族を問わず、マネージマントを通してより良い見学環境と品質を促進することが重要です。各例を検討して遺産にふさわしいマネージマントを行うことが大切だと考えます。


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