建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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 「菊池の図書館を考える市民の会」主催による<菊池の図書館を考える市民の集い>が9月23日菊池市文化会館小ホールにて14:00から開催され、100名近くの方々が集まりました。
 この日は、伊万里市民図書館館長の古瀬義孝氏による講演会が行われ、市民のみなさん、私のように市外から参加のみなさん、どちらも熱心に古瀬館長のお話をききました。古瀬館長はもともとは市役所職員、昭和46年伊万里市役所入職。平成4年伊万里市民図書館準備室長、平成7年伊万里市民図書館次長、その後、教育委員会、生涯学習課、男女共同まちづくり課長兼国際交流課長、政策経営部などを経て、平成21年伊万里市役所退職、平成22年から伊万里市民図書館館長を務めていらっしゃいます。

 図書館研究の世界では伊万里市民図書館は「市民とともにつくった図書館」としてとても有名で、優等生の図書館と言っていいかと思います。視察も多いと聞いております。私も伊万里市民図書館に何度か行って、職員の方々、利用者の方にお話を伺ったことがありますが、職員と地域住民とが親しくコミュニケーションをしている光景はなんともいえずいいものでした。そんな図書館の館長のお話です。特に、菊池市では新図書館建設で色々な意見がでております。今後50年先を見据えた、地域づくり、ひとづくりにはどのような図書館がふさわしいのか。是非とも伊万里市民図書館の事例を当事者である古瀬館長から聞いて大いに参考にしたいものです。
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 まずはじめに「菊池の図書館を考える市民の会」の坂本敏正代表による挨拶がされました。
 またこの日の講演会は全体を通じて、手話通訳と発話者の言ったことをその場でタイピングしてスクリーンに映し出す文字通訳とでもいうのでしょうかが行われました。非常に良いことだと思います。

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 聴衆の期待が高まる中で古瀬館長の講演が始まりました。
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 以前の伊万里図書館は小さな図書館で、それが20年続いていたそうです。当時の市長が6期24年になろうとしており、市長は最後の仕事(公約)ということで、図書館をつくろうということになったそうです。
 「市民の思いがあるのであれば市民とともにつくろう」ということになり、設計段階から市民の考えを入れたそうです。古瀬氏は当時から本を4000冊ほど持っており本を読む姿が庁内でもよく目撃されていたので、図書館の担当になったとのことでした。

 それまでの公共施設は行政から市民に与えられるもので役所が「さあつくってやったよ。」といって建てれば済むものであった。しかし、行政はその建物が実際にどのように市民に使われているかを知らなかった。録音室を作っても使えない代物であった。図書館は市民が毎日使うところ、市民の声が反映されないのはおかしいということで設計段階からと市民を入れたのだそうです。

伊万里市民図書館の目標は、<伊万里をつくり市民とともにそだつ市民の図書館>

 図書館は市民の力の源としての図書館、文化エネルギーとしての図書館、役所の為の図書館ではないとのことでした。

 平成5年に公開講座をしたそうです。「図書館は誰の為にあるのか」

 小学校へいってヒアリングもしたそうです。

 布絵本をつくる団体から、作品をいれる納戸とミシンが使えるようにコンセントが沢山ほしいとリクエストがあったそうです。設計段階で、図面を少し変更して布絵本団体が使いやすいようにしたそうです。すると、この団体は「自分たちの図書館」という意識を持つようになったとのことでした。

 平成6年2月26日起工式が行われ、設計者の説明に市民200人が参加、「伊万里の図書館つくりを進める会」から、ぜんざい200食がふるまわれたそうです。この日を伊万里図書館はめばえの日として、現在までぜんざいがふるまわれております。
 図書館にあまり来ない人でも、ぜんざいを食べると「じゃまた来るか」ということになるそうです。館長によると図書館には様々な仕掛けが必要であるとのこと。「使ってもらわないと意味がない。」

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 市民による図書館支援は、アメリカの「図書館友の会」があるが、伊万里市でも参考にしたそうで、実際に市民をアメリカまで視察に行かせたとのことです。現在このぜんざいをふるまった組織は「図書館フレンズいまり」として活動。会員数は400名近くで年会費は1000円だそうです。読み聞かせなどのボランティアだけではなく、図書館の廃棄本も含めた古書の販売なども行い活動費にしているとのことです。

 私は館長のお話の中で「まちの問題を図書館に反映させる」というのがよいと思いました。まちの問題は図書館が課題とすべきことでもあり、それがその地域を浮き彫りにし、共通の認識を持つことができるからです。解決すべき課題があるということは、それをオープンにすることでなんらかの解決方法も見つかるように思えるのです。

 私が今年になって伊万里市民図書館に行き、職員の方に紹介してもらった福嶋徹さんという図書館利用者の方がいます。福嶋さんは、退職後、風力と太陽光を組み合わせた家庭用発電を図書館を利用することで研究し、幾つも特許を取ったとのことです。

 また、伊万里図書館にはTVのスペースがあったり、将棋ができたりします。高齢者があつまって将棋をさす姿がよく見受けられます。ある時、ここで将棋をしていた高齢の独居老人が倒れ、すぐ病院に運ばれたそうです。後でご家族から、「図書館で倒れてよかった。一人暮らしなのでもし家に一人でいたら、気が付くまでに時間がかかっていただろう。」ということをいわれたそうです。皆のいる前だったから命が助かったのです。

 実際に立ち上げから、そして現在も図書館で働いている古瀬館長の話の一つ一つが虚飾のないお話で感動しました!全国には大規模図書館、カッコイイ図書館があると思います。しかし、伊万里市民図書館は、その名の通り「市民図書館」なのです。市民によって支えられ、市民が使うことで自己実現できたり、お互いを思いやったりできる場なのです。これからの少子高齢化、人口減少、限界集落などさまざまな問題の受け皿に図書館はなるかもしれません。伊万里市民図書館をみていると図書館の機能が図書を貸し出すだけでない、コミュニティの維持そのものにかかわってくるのではないかと思えてきます。


 古瀬館長のお話の後は、市民のみなさんが菊池の図書館へ望むことを発表。
 
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 会場に来ている方との質疑応答もあり、坂本代表や古瀬館長が丁寧に答えておりました。
 照明の問題、隣接するプールに関しての問題、2階につくられる公民館と分断されてしまうのではないかという意見、などなど、市民のみなさんの声を直にきくことができ、非常に有意義な市民の集いになりました。
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 昨年の11月23日に開催された「前小布施町立図書館長・花井裕一郎氏講演会」で、図書館というものの在り方について根底から考え直さなければならないと感じさせられましたが、今回の講演会でも市民と図書館の関係について更に考えさせられました。
 新菊池図書館が「菊地市民図書館」となることを願っております。
                          
                                    岩   井

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