建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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ふ印ラボ同人の倉内慎介さんより耳寄りなお話が・・・・・


特集
天草下浦フィールドワーク2014
  地域再生の処方箋はあるのか?
 ~天草石工のふるさと「下浦フィールドワーク」の意図と主旨~

藤原恵洋(九州大学)

  九州大学下浦フィールドワーク+デザインショップの追想

松岡政幸(下浦実行委員会)

  情熱で焼かれた石

千葉友平(下浦石工)

  天草下浦フィールドワーク&デザインワークショップの学生幹事を務めて

吉峰 拡(九州大学)

  下浦写真館2014 〜参加者の見た天草下浦〜

下浦フィールドワーク参加者

  下浦フィールドワーク感想文集

下浦フィールドワーク参加者

   

下浦フィールドワーク関係者のみなさま


日田は秋らしくなったかと思いきや、30度の暑さとなりました。
日本全国スギダラケ倶楽部 広報の倉内君より月刊杉発刊のお知らせが届きました。

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特集記事担当のみなさま
月刊杉連載陣のみなさま
スギダラ各支部のみなさま

こんにちは、月刊杉編集部の倉内です。
大変送れてしまいましたが、
月刊杉104号、遅ればせながら発刊です!!!

http://www.m-sugi.com/

涼風にちょっと寂しさを覚える9月の特集は、
暑い暑い夏、真っ直中に行われた「天草下浦フィールドワーク2014」です。
今年は、石工のふるさと下浦で開催されました。
九州独自の石造文化を支えてきた下浦。
杉と通底するソウルが伝わってきます。

そして、今号から新企画がスタート。
「杉々つながる 読者つぶやきコーナー」です。
リレー形式で、日頃思っていることや最近のことなどなど、綴っていただきます。
読者から読者へ、スギづなの広がりが楽しみです。

本当に皆さまの力で月刊杉は地道に進み続けております。
これからもどうぞ宜しくお願いいたしまスギ!!

たまに肌寒さを感じる季節となりましたが、ステギな毎日をお過ごし下さい。

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地域再生の処方箋はあるのか? ~
天草石工のふるさと「下浦フィールドワーク」の意図と主旨~

藤原惠洋


前略


 暑い暑い夏です。九州はなおさら暑いのです。このところ毎年、盛夏を過ごす熊本県の天草なら、この暑さはいったいどうなることでしょう?論より証拠、一度こちらに来てみませんか?各地に広がる緩やかな地域社会の崩壊を目の当たりにしながら、何も出来ない自分へのいらだちや無常観を忘れないこと。濁流のような汗を額に流しながら、この下浦の地で私や私たちが何をしようとこころざしているのか。暑さを忘れるほど熱中しながらまちを歩き、石工場を訪ね、マイスターと語り合い、未来の下浦を語りあうにはそれだけの理由があるのです。公民館長が集めてくれたママチャリを駆る私たちの横を伴走しながら、この汗の理由を知るのも一興かもしれません。地域再生の処方箋を探し出したいと続けてきたフィールドワークとワークショップの織りなす効果を現地で味わってもらうのも有意義なことかもしれません。暑い夏です。しかし、私たちの想いはもっと熱くて覚めてはいません。日本の宝島と言われながらも、緩やかな崩壊へいたるシナリオから誰も逃げられない厳しい現実。そこに無垢だけれど溌剌とした笑顔と叡智を傾ける仲間達を集め、フィールドワークとワークショップを展開するのです。さていったい何が生まれるでしょうか。どんな処方箋を提供することができるでしょうか。指揮官とも言える私に明快な勝算があるわけではありません。しかし、毎年開催してきたこのフィールドワークとワークショップには、どこか懐かしい、どこかほっとするような、参加者の笑顔と叡智が溢れ出て行き、ささやかなつぶやきから何かが生まれるような、何かが起こるような、不思議な待望の場が生まれ出てきたのです。う~む、今私はこうした現象をなんと言えばいいのか、適切な言葉を持ちませんが、暑い夏に潮風を浴びながら一緒に現場を見ていただければ、きっと何かを共感していただけると思うのです。だから一度、ここに来てみませんかと願うばかりです。まだまだ暑い夏が続くようです。どうぞお元気でお過ごしください。 

早々


さる2014年7月25日(金)~27日(日)にかけ熊本県天草市下浦地区全域を会場に、満を持して「下浦フィールドワーク2014」がはじまりました。「フィールドワーク」と言っても、いったい何をするのだ、何をしたいのだ、何度も事前の現地説明会で聞き返されました。このようにリスクのある企画だったにもかかわらず、国内各地や遠くは韓国、アメリカ西海岸から馳せ参じてくださった60名を超える参加者のみなさまに心より御礼を申し上げます。

 今回は九州大学をはじめ全国および韓国の合計8大学(九州大学、久留米大学、福岡女学院大学、愛知淑徳大学、駒澤大学、韓国産業技術大学、韓国江原大学、韓国釜山大学)から学生・大学院生・留学生および大学教員が参加すると同時に、都市計画家・広告デザイン・印刷会社・建築設計・ランドスケープデザイン・プロダクトデザイン・ユーザーインタラクティブデザイン・ユーザーエクスペリメントデザイン・鉄道会社・イベントプロデューサー・漫画評論家といった専門分野の達人が集いました。ある種の多彩で偶発的な異業種交流集団を即興で生み出し、全国各地の疲弊する地域社会が必要とする実践的な地域再生への果敢なチャレンジを、なんとかこの下浦で体験できないものかと妄想のように企画したものです。

 その結果、2泊3日にわたる包括的な7つのプログラムを通し、同地に隠された豊かな文化資源の魅力や価値に気づき、そして課題を発見し、解決や改善へ向け真摯に論議し、数多くのユニークな提案や足跡が生まれました。ご理解くださったみなさまのご協力とご支援により、初めての地だったにもかかわらず、成功裏に実施することができたと考えています。

 さて、この下浦で私たちは今、石に接近しています。石に学び、石を知り、石を化けさせたいと期待しているのです。

 下浦は、天草のちょうど間に位置する地区ですが、幹線道路から裏に隠れ、本渡瀬戸に面しているため、地区全体のイメージはまったく見えません。あえて探せば天草石工を代表する下浦石工のふるさとです。そうは言っても、多くの観光客や天草島民にさえその名は知られてはいません。石の仕事は、道路の下の橋梁や神社境内の鳥居や仁王像といったものが多く地味なのです。そして時代も変わり、今は墓石を中心に仕事の業態も限られており、長年培った石材産出と石工業の歴史的・伝統的な蓄積をふりかえる機会も失われているようです。しかしながら中国伝来の長崎・中島橋の眼鏡橋をはじめとする石橋群、加藤清正の築城で知られる熊本城や、江戸期以来の種山石工集団による霊台橋や通潤橋といった堅牢な石橋群。九州には独自の石造文化が培われてきましたが、こうした動きの長崎と熊本に天草島は挟まれ、歴史的な複数の石工技能集団が培われていたのです。

 阿蘇火砕流溶結凝灰岩の御領地区、安山岩の松島、岩谷、飛岳地区、さらには下浦石や栖本石の下浦地区。こうした石材産出の地に石工技能集積が根付いてきました。その代表が下浦石工なのです。代表作の国重要文化財祇園橋(天草市本渡町)は石造桁橋として知られます。一方、幕末明治期に築造された長崎居留地の南山手・東山手地区には石垣護岸をはじめオランダ坂等の石畳に北野織部(小山家)を棟梁とする天草石工の技と材料が投入され、さらにグラバー邸、オルト邸、リンガー邸といった西洋館や大浦天主堂の普請にも小山秀乃進(小山家九世)を棟梁とする天草大工の技と材料がもたらされています。さらに現在それらはユネスコ世界遺産の候補として注目されているのです。

 本事業はこうしたユネスコ世界文化遺産をものがたる天草石工と私が教育指導する九州大学学生がつながりもやうことを念頭に、地域と大学が「域学連携」しあう短期滞在型のデザインワークショップを創出するものです。将来のデザイナーおよび生活ユーザーでもある九大芸術工学部学生が石工文化の産地や技能者と直截的に交流をしながらデザイン力を育んでいきます。同時に、地元はこうした機会を活かして情報発信や石工仕事のブランド化を展開することができます。下浦町における少子高齢化や石工産業の衰退化に伴う困難な課題に対して「よそもの」「ばかもの」「わかもの」の九大生や複数大学生たちが専門職のOBOGとともに多様で溌剌としたなデザイン提案を生み出していくことができます。石工技能者とのコラボレーションが育てば製品化も夢ではなく、近い将来、天草ルネッサンス「天草謹製」事業(下浦フィールドワークの企画立案者でもある私が2007年の創立以来選考委員会委員長を務める)へのチャレンジも進めていきたいところです。

 一方、派生効果として、これまで埋もれていた同地の歴史的・文化的価値を明らかにすることで、石工技能や石工産品を体系化しながら地域固有資源としての価値を再評価し、生活用品供給産業としての伝統的工芸品産地の特徴を把握したいと考えています。そこから天草石工の技能集積を対象として経済産業省「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」に基づく伝統的工芸品の指定をめざしてはどうだろうか、と呼びかけだしているのです。

 さてフィールドワーク終了後、私たちは自分のホームグランドへこの際の荒削りなアイデアを持ち帰り、遠隔地連絡を取り合いながら、その後の検討やデザインを重ねています。さて、ここから何が生まれ、何が育っていくでしょうか。そしてそれは下浦の地域再生に効果的な処方箋となるのでしょうか?さらには各地で再生の支援を待ち望むまちやむらに普遍的に持ち込むことができる知恵やアイデアになっていくのでしょうか。

 この秋、ふたたび下浦地区へ集いたいと考えています。下浦コミュニティセンターにおきまして、今夏の下浦フィールドワークが生み出した成果を地元へお返しする会を催します。私たちの成果をさらに質疑応答や意見交換を通して磨き込んでいきたいと思うからです。


────────────────────────────────────
月刊杉発刊の後は、報告会→報告書発行と続きます。
アンケート+感想文+報告写真、どしどしお待ちしております。

タカクラ


MLホームページ: http://www.freeml.com/2014shimoura-fw

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