建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

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さる7月29日(火)1900〜、前期公開講座の大団円を迎えるにあたって、
東京から駒澤大学グローバルメディアスタディーズ学部長 川崎賢一先生が
いらしてくださり、「魅力的な創造都市〜シンガポール〜」のテーマのもと
講義されました。公開講座直後に、風人さんが記事に挙げてくださっています。

http://keiyo-labo.dreamlog.jp/archives/1998548.html

 

駒沢大学グローバルメディアスタディーズ学部長を務める川崎先生は
文化社会学・創造都市研究・グローバルメディア論をご専門に、これまで
シンガポール、アメリカ、イギリス、上海など各国の調査研究を行っており
前文化経済学会<日本>理事長等を歴任されてきました。

文化社会学の中でも、川崎先生のテーマは大きく分けて2つあります。
インターネットなど情報社会における文化の問題と、現代の文化を「文化政策」
「文化産業」「文化交流」の3つの視点から考察するグローバル文化論です。

 

 
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1993年に初めてシンガポールを訪れ、踏査は21年目となる。その経過を
見ている中でも、シンガポールは類希な急激な成長を遂げている。

基本は社会学、特に国際社会学を専攻しており、文化社会学を長年行ってきた。

国際社会学会、文化経済学会、情報通信学会などに所属し、3つの領域を
横断的に行ってきた背景には、元々父がアメリカの横田基地にエンジニアとして
務め、アメリカ文化の裏側を代々見て来たことが色濃く影響しているだろう。

シンガポールの象徴的な場所を挙げると以下のようなものが挙げられる。
 

 

おすすめ訪問先

URA

NUS

・高島屋・オーチャードロード

・博物館・美術館エリア

・ブキット・ブラウン墓地・ローチャードセンター

・マリーナベイサンズ・マリーナ地区

・ナイトサファリ

 

シンガポールは、国民の85%が団地に居住している。国家が非常に強く
社会政策を強靭に行っているため、都市計画もまた国が一挙に行っている。
その中で、近年ローチャードセンターは、欧米型・日本型の住民運動が
盛んな地域となりつつあり、市民の自発性が伺える。

シンガポールは隣国マレーシアとの関係性が良好ではないが、それでも
マレーシアから大量の水を購入せざるを得ない状況となっている。
しかし、近年開発されたマリーナベイサンズ・マリーナ地区は、海水地区を
淡水化することに成功し、水資源の自立が急速に求められている様子が伺える。

 

 

シンガポールにおける最近の社会的変化

学 歴:学歴が非常に高度化した。英語が主体となり、第二カ国語が母国語となる。
    学歴による社会身分差が拡大しつつある。

性 差:男性<女性(2013

経 済:一人当たりのGDPは既に日本人を大きく上回る。
 

グローバル化と世界都市調査(2010.UK:

 世界において最も発達し影響力のある都市としては

1位 ニューヨーク 2位 ロンドン 3位 パリ 4位 東京 5位 香港 
6位 シカゴ….シンガポールは8位。

 

森ビル作成の都市指標:

東京都港区六本木に位置する森ビルが作成する都市指標においては

1位NY 2位 ロンドン 3位パリ 4位東京 5位シンガポール 6位ベルリン
7位アムステルダム 8位ソウル 9位香港

となっており、シンガポールの急成長ぶりが伺える。

 

観光都市シンガポール

・観光都市

・都市的生活

・エンターテイメント

・買い物天国

・グルメ天国

・多文化テーマパーク

・芸術文化

 

 

シンガポールの文化制度

イギリス:ナショナルアーツカウンシルを参考にしている

1960-1970 年代:文化の砂漠 

1980年代:3階の経済危機を乗り越え、文化制度の重要性に目覚める

1990年代:芸術家へのインフラ制度を整える[A global city for the Arts](1995)

              Renaissance City Plan(1999)

2000年代:Renaissance City Report and Making Creative industries in Singapore
 

直面する問題点

gentrification problems 外国人—シンガポール人のみでなくシンガポール人
同士の中で階層化されている。
 

2012年以降:

ACSR(芸術文化戦略レビュー)final report next 15 years

20 years history of establishing cultural institution

The 3rd stage of cultural planning

Mobilization for almost all Singaporeans in order to achive “first class Global City”

 

1963年にイギリスから、1965年にはマレーシアから追い出されるような形で
シンガポールは独立した。シンガポールは7割が中華系であり、チャイナタウンが
存在する。中華系・マレー系・イスラム系・インド系といった民族が混じり合う
本国のリトルインディアでは文化財も存在し、国を代表する地域となっている。

 
 

 

シンガポールの文化制度の変遷と抱える社会問題

シンガポール・香港は元々、中・上流階級のみが芸術を楽しむ風土であったが
近年は芸術文化に対する認識は市民まで広がっている。文化制度も整えられる
ようになり、社会が変革していった。その一方で、世界規模で刻一刻と進む
格差社会の波はシンガポールにも同様に押し寄せており、現在は階層文化が
広まっている。1%の大金持ちと99%の一般市民というような捉え方も
アメリカ・イギリスを中心として蔓延しつつあり、シンガポールも例外ではない。
シンガポールにおいては、イギリス統治時代の富裕層や中国人の富裕層が
芸術を楽しむ人々であった。現在は4分の1が外国人であり
40%が富裕層にあたり、日本人もこの中に含まれている。
アメリカ・イギリス・オーストラリア系も多い。



検閲国家
・1965
年、建国以来の一党独裁(人民行動党:PAP)状況

・シンガポール政府への批判を禁止

・出版・放送・ネットの検閲がある

・ガーデンシティ維持のためのルール重視

・社会秩序の安定を重視
 

シンガポールは検閲国家で規制が厳しい風土があったが、彼らの存在により
ナイトライフをはじめとする、自由な表現文化への規制が緩和されるように
なった。また新しい国であるシンガポールの文化的土壌の不在から
1990年代初頭から国家戦略的に力を入れて来た経緯が、現在の芸術文化が
活気づく礎を作ってきたと言える。現在は雇用、経済、産業分野においても
芸術文化の力が認められるようになっている。
個人の創造性から集合体としての創造性へと発展していっていると言える。

 

厳しい検閲も、現在はやや緩和されている傾向もある。中国はfacebook,
You tube
の閲覧が不可能であり、独自の国のSNSが発達している。
シンガポールはfacebook,You tubeを閲覧することができる。本国では
NEWSをもじった NOOSEという番組において、シニカルで社会批判的な
ことを放送しており社会の変化を感じている。

都市利用における規制も厳しく、チューインガムを噛んではいけない。
横断歩道がない所を横断してはいけない。食べ歩き・つばを吐くことの
禁止など規制が厳しく、美しい景観が保たれている。ガーデンシティでは
緑化が推進されており、やや過剰な傾向も見られている。

 

 

アジア的価値実現のために

・リー・クアン・ユーの価値観

・衛経済的発展の最優先

・社会秩序の安定

・東アジア的価値の強調

・家族の重視

・アメリカへの距離感

・モデルなき段階

 

リー・クアン・ユー(1923〜)はイギリス人家庭のような風土の中で育てられ
非常に優秀な成績を収めた初代シンガポールの統治者である。
彼は家族を非常に大切にすること訴え続けていた。後に続くマハティールも
同様に家族の重要性を訴えている。経済の発展と社会秩序の安定を重視し
8090%の人が団地に住み、富裕層はコンドミニアムに住んでいる。
 

リー・クアン・ユーは、文化芸術に対する制作の重要性は説いては
いなかったと見える。

参考:「文化は宿命である」Foreign Affairs Report, 1994, No.12,p.p63-80
 

アジア的価値観

「政治・経済開発について<アジア・モデル>は存在しない。しかし社会・政治を
めぐる欧米と東アジアの基本的な違いは、個人が家族の延長線上に存在すると
東洋では考えられていることだ。(p.67)」

 

シンガポールが2年間かけて世界中の事例を調査し、理想の都市として選出した
地域や政策を選出してきた。パリ・ロンドン・NYが事例とされ、熱帯地域の
3都市を目指している。

 

グローバル文化都市シンガポール

・経済的発展の達成

・政治的秩序(政党政治)の不安的化の始まり

・社会的秩序の安定化への工夫

・新しい国家的目標

・多層的・多文化的秩序

・芸術・文化的リタラシー

・熱帯版グローバル文化都市



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質疑応答
 

 

Q:シンガポールは、資源が乏しく、マレーシアから独立した不安定な状態という
   瀬戸際の状況が、急激な芸術文化の成長を促したと言えるだろうか。

 

A:シンガポールは、日本でいう文部科学省のような場所にインターナショナルな
作品の展示コーナーがありファインアートが高額で取引されている。
近年ではアート市場は確実に拡大している。チャンギエアポートには
アート作品の保存倉庫があり、免税でハイアートを購入することができる。
ビエンナーレ会場には日本のギャラリーも入っており、集合的なアート
ギャラリーを政府主導によって国際的に展開している。日本的な創造都市、
創造農村とシンガポールの芸術文化風土は随分と異なっている。
日本的な市民主体の地域主導のアートプロジェクトが蔓延しているが
シンガポールはもっと行政主導でブルドーザーのように一気呵成に
整備されている印象を持っている。

 

Q:日本は極めて強い公平性を保つ風土がある。日本においては、芸術文化を
 活かした社会発展・経済発展は一工夫、二工夫をしながら開拓して
 いかなければならないのではないか。

 

A:マレーシアはマレー人の優遇政策を行ったシンガポールは中華系の人々が
多かったことで、独立するきっかけとなる。シンガポールナショナルカルチャー
というものは存在しない。中華系の人々が多かったことから中華系の文化が
ベースになるかと思うが、リー・クアン・ユーはそのような政策を取らなかった。
エスニシティ・ナショナル・コスモポリタンの3つの要素を成立させるために
芸術文化の力を重視したと見える。シンガポールは、ベーシックなものと
ナショナルなものが結び付き易いという傾向がある。

 
 

Q:周辺隣国とはどのような付き合いをおこなっているのか。
 

A:マレーシアとは仲が良くない。またインドネシアはGDPが世界で
10位以内に入る世界最大のイスラム教国である。自転車操業的にトップを
走ってきたシンガポールは徴兵制もあり軍隊も持つが、狭い国であり
軍事的には非常に弱い国である。優位性をどのようにして取って行くかという
ことに常々注意を払っており、そのような背景も現在の国のような
政策の選択を促して来たのではないか。

 
 

Q:シンガポールの国家の歴史や神話など、地域に対する愛着や誇りは
  どのようにして醸成しているのか。

A:シンガポールに国の成り立ちを感じさせる神話は存在しない。おおよそ、
3代程移住者が住み続けると文化が根付き始めるという。
らのアイデンティティは、先代が「いつ移住したのか」「なぜ移住したのか」
「どのようにして現在ここに住んでるのか」といった経緯がルーツとなっている。
シンガポール人がずっとシンガポールに居続ける可能性は、貧困層の方が
可能性が高い。富裕層や高学歴者は、移住することが可能であり、また移住を
志す者も多い。社会的流動性が高く、様々な政策を含めて実験国家といえる。
シンガポールの人は自国を好きな人が多いが、「好き」の内実が異なるのでは。

 
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最後には公開講座受講生の方全員に、修了証が渡されました。
皆さま、お疲れさまでした! 

 
 

川崎賢一先生がシンガポールを捉える視点には、常に世界の中における
シンガポール位置付けが意識されており、相対化しながら考えを深めてゆく
ような意義深い講義をいただきました。創造都市を語るときに、芸術文化拠点や
文化政策の事例のみならず、政治、国の特性、歴史、経済、民族といった
様々な背景に触れながら語られる様子から、文化が多様化する社会を包括する
においてどれほど重要であるのかを伺い知る事ができました。
同時に、芸術文化や創造都市を考えるにあたって、局所的にその分野のみを
考えることはあり得ないのだと改めて痛感しました。
川崎先生、貴重な講義をどうもありがとうございました。


 

 

D3 國盛

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