建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

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さる7月15日(火)19:00〜21:00 藤原先生の公開講座が開講されました。
この日の公開講座では、九大OGで藤原研究室とも関わりの深い児島理華さんが
香港からゲスト講師として駆けつけて下さいました。 


児島理華さんは九州大学大学院デザインストラテジーのOBで、藤原先生とも
長らく研究を共にしていました。現在は香港で広告代理店とブランティングに
関する仕事をされています。演劇が大好きな児島さんは、その傍らで
アートプロジェクトや演劇祭を開催し、大活躍しています。
この日も、彼女が手掛ける沢山のプロジェクトや香港の創造都市の様子を
パワフルに講義して下さいました。

 

 

香港の事情

最近は20代〜30代が非常に政治に参加している。政治が自分自身に直接関わって
きていることや、ある中学生が政治活動を行ったりしてきたことをきっかけに
盛り上がりを見せている。先日も大規模なデモが行われていた。

今香港では、とてもアパート、マンションが高騰化している。アパートマンション
だと、香港の中心地から164m2で約2600万円。マンションは、若い人が
結婚したり同棲したりする時に住むようなコンパクトなものが多い。

アートセンターやギャラリーは、香港の中心地にもあるが、香港の中心地から
離れている場所に多く存在し、比較的安く空間を借り受けることができる。
政府が中心となっている都市にもアート関係の機関や工業地帯が広がっている。

 
 


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元創方 PMQ
 
 http://www.pmq.org.hk

上環にあるPMQは、かつて警察官の独身寮であった。ここで結婚相手を探すなど
の活動をしていたが、現在はその小さな寮を活用して、アートデザインの活動の場
となっている。香港の中心地にある立地条件からも、香港ではとても新しい動き
として注目されている。

このような場所には、アート活動のアーカイヴがまとめられた情報センターや
人々の交流の場としても活用されている。香港の人達は、この場所に対して
うまく出来過ぎではないか?という疑いの目を持っていることも事実ではある。
すべてハイクラスの人を対象としていることで、平等性に欠いているのではないか
ということだ。 PMQではナイトマーケットが、月1回〜2回開催されており
手作りの料理を提供したり、手作りのモノを売ったりしている。
PMQのエリアでは、ハイクラスのギャラリーが設置されている。
これらがハイクラス向けの意識を人々に持たせている原因ではないか。
しかしこの場所自体はとても興味深い場所である。

 

 
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JCCAC ジョッキークラブ・クリエイティヴ・アーツセンター

http://www.jccac.org.hk

2008年に創設されたJCCAC元産業工場である。現在では、人々が陶芸、
アート、演劇などをしたりする場所となっているが、ここは悲しい歴史を
持っている場所でもある。1950年代から中国大陸から香港にたくさんに
人々がやって来た。彼らは住む場所がなく、スラム街を構築し、その場所で
生きて行くために小さな商いをおこなっていた。
しかし、スラム街ではよく火事が起き、5万人の中国人の方々の命が
失われたという。この大火事の後、全てのスラム街がなくなってしまったので
政府は団地を建設した。住む場所を構築し、働く場所として工場を設置した。
これらがJCCACの歴史である。

ここで行う手作り市は、非常に盛況し一年に一度であった企画が
一年に五度ほど行われるようになった。現在はオープンスタジオなども行い
JCCACは活気のある場所となっている。

 

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WOOFERTEN
http://wooferten.blogspot.jp 

WOOFERTENは中心市街地の狭い場所で活動を行っている。

この活動自体は香港政府の支援を受けている。香港の中心地でこのような
アート活動を行うには、大変金銭的に負担がかかるためである。
香港では地上階にあたる場所が非常に高額となっているが、このアートセンターは
路上に面した一角に設けられている。WOOFERTENでは様々な活動が
職人を呼び、伝統的な装飾を作るワークショップなどを開催し
クリスマスパーティーは無料で参加することができる。とは言いながらも
対象となる人は周辺の住民であるので、限定的なものでもある。
特に制限している訳ではないが、結果的にそのような状態となっている。

 

 

FACTORY AREA

工業地域がアートの地帯となっている事例は、香港中心市街地の周辺の地域で
見る事ができる。この場所では、学生のみがスタジオを借りることができる。
近隣に大学があり、学生の金銭的な面からサポートしている。
現在は沢山の生徒が借りるようになり、賃料が高くなってしまっており
学生は他の場所に移動しつつある。

アートバーゼルは香港においてとても有名なものであり、コレクターや
コマーシャルギャラリーが介入する商業的なイベントである。
村上隆など有名なアーティストの作品を購入することができる。
しかしこのアートフェアは変わりつつあり、学生やアーティストが一級の
美術品を見たり、スケッチするなどして学ぶことができる場となっている。
ただ美術品を展示するのみならず、建造物に介在していく作品も展示している。
アートバーゼルの期間中には、企業×デザイナーとのコラボレーションが生まれ
フェスティバルを盛り上げている。

 
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HKRRFM

香港でもHKRRFM(リアリーリアリーフリーマーケットin香港)を行っている。
これは2009年に福岡アジア美術館トリエンナーレに参加したシンガポールの作家が
すべて無料で利用できる「リアリーリアリーフリーマーケット」を開催したことを
契機に持つ。すべて無料であり、経済産業至上主義の現代社会に対する批判、
あるいはコミュニティの創出を目的としている。そのコンセプトやシステムを
受け継ぎ、香港では児島理華さんが主催者と成って行っている。その中で
JCCACにスタジオを持っている人と繋がることができ、理華さんはJCCAC
おいても活動を行うことができるようになった。
 

新聞に掲載されてからは、HKRRFMに来場者が殺到し、いろいろと問題も
生じるようになってしまった。児島さんは100人以上のボランティアと共に
SUPER HKRRFMを開催。なぜ「スーパー」となったのか。
楽器、400着の新品の靴、10台以上のカメラやパソコンなども商品の対象と
なったからである。その他フリーサービスなどもあり、タロット占い、
マッサージ、時計修理などのコーナー、フリーカフェも設けた。
時計を修理する人は、職人ではないものの、長けた人が行っている。
Facebookやボランティア同士の口コミで集まった。
もともとフリ−カフェはコーヒーのみであったが、紅茶やケーキなどを
持ち寄りしてくれるようになった。8時間ずっとカフェを運営する
ボランティアはハードな現場であってもとても楽しそうに過ごしており
休憩もろくにしないでサービスをしてくれていた。
私が始めたフリーマーケットが、フリーステージやフリーカフェといった
活動が拡大していることがとても嬉しい。今後は、この場所で得たスキルや
ノウハウを、沢山の人に伝えていきたいと思っている。
現在は既に5つの団体に継承している。

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PERFORMING ARTS

香港にはパフォーミングアーツの場所が様々な所にある。
3つのカテゴリがあり、コンサートなどの音楽劇場・広東オペラ劇場・
ダンスシアターに分類され、多くの劇場は政府により支援を受けている。
工業地帯のあったスペースがパフォーミングアーツの拠点として使われている。
政府が支援している場所の賃料は、そこまで高額ではないものの
JCCACブラックボックス劇場で演劇をするには二年待ちの状態となっている。
そのため中心地から離れた場所にアーティストが集まり、消防法に則った設備
などが充実してないため危険である。
ストリートや本屋でパフォーミングアーツを行う人も多い。

 

香港においては、行政の支援を得た芸術祭、民間が行う芸術祭、
エディンバラ演劇祭にインスピレーションを得たものも開催されている。
この演劇祭は、50箇所以上の場所で行われており、子ども向けのもの
参加型ワークショップ、農業活動なども開催されている。様々な分野の
企画が多くなり過ぎることで、企画同士の繋がりが希薄となってしまい
問題として捉えつつある。

 
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STBD 小劇場・大演劇アジアフォーラム

http://stbd.asia/whatsnew.html

小劇場・大演劇アジアフォーラムは、児島理華さんがプロデューサーとして
行う国際的な演劇フォーラムである。開催の動機は、日本から移住した7年間、
北京など様々な場所に引っ越しをしたことで、たくさんのアーティストと
出会う機会を得た。シンガポール、香港、日本のグループを呼び、本企画を
開催することを着想したという。

2011
年から4回目を迎える今年は、北京、日本、香港のグル−プを呼ぶ予定。
その他、広州、マレーシア、韓国のグループも呼んだことがある。
この活動の特徴は演劇以外に様々な企画が構成されていることだ。
フォーラム、参加型ワークショップ、出演者と観劇者が一緒に朝ご飯の飲茶を食べる
企画なども行った。企画の後は参加者と共に、広東など旅行に出かけることもある。
最初は児島さんと友人の2人が個人的な出費で行った。
現在も政府からの補助金を受ける金額は非常に微々たるものであるが
現在は4年目を迎えている。

 
 

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質疑応答

Q:香港の創造都市の核となるJCCACを借りながら運営する小劇場・大演劇アジア
フォーラムは大変そうであるが、予算はどの程度であるか。

 

A:渡航費は実費で参加してもらっている。6人のホテルと劇場代、すべての
マーケティング、少々のギャラを出している程度であり、現在は信頼関係で成り
立っている状態である。現在は非常に質の高い劇団が実費で来てくれている。
専門的なテクニックがスタッフ側にないので、そのようなことも加味して
アプライしてもらっている。2012年にはパンカオという劇団が来てくれたが
彼らは自ら参加してくれた。マレーシアでもSTBDを行いたいと
言ってくれている人もいる。

 
 

Q:一方で、香港ではアートバーゼルが開催されている。
香港では児島さんのような人の動きもあれば、巨額なアートマーケットが
展開されているという状態である。マーケットとの関わりはないのか?

 

A:アートバーゼルの人々から見ると私たちの活動は関係ないと思っていると思う。
しかし、いつか声がかかるのを待っていますよ。(笑)
 
 

 

Q:香港ではM+という巨大な美術館が出来ているが、その他にエリア全体に
20箇所くらいオペラシアターや美術館を建設していく動きがある。
これまで香港は金融拠点であったが、その力をさらに付けるために
アートマーケットにも注目しているのではないか。

 

A:STBDには政府から45万円程の援助を受けている。そのうち20万円は場所代、
  出演者のホテル代ですませている。それ以外は自腹で活動費を捻出している。

 

 

Q:STBD の集客率は?
 
A:劇場自体には100人程度しか入らないのであるが、集客率は6070%である。
1人だけで見る芝居もあり、1人に対して6人以上のアーティストが演技する
ものである。期間中、200回の公演を行い、集客率は100%!笑

とても希有な演劇をする劇団に恵まれたと思う。

  

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金融や観光都市としての印象が強かった香港ですが、児島さんが密に関わる
様々なアートセンターやフェスティバルの様子から、非常に活気のあるアートの
世界を見ることができました。
人と繋がることを臆することなくどんどん広げてゆき、多岐に渡る活動を
やり遂げてしまう児島さんの講義は、とてもパワフルで、香港の熱気の一部は
間違いなく彼女が生み出していると思ったひとときでした。
このような仲間がいる研究室はとても心強く、励みになります。

講義の後は赤木酒店でまだまだ児島さんから沢山お話を聞かせていただきました。
理華さん、どうもありがとうございました!

 

 
 
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おまけ 

翌日のフライトまで、理華さんの好きなもんじゃ焼を食べて、
福岡アジア都市研究所を訪れ、三菱地所アルティアムの展示
ニコラビュフの「ポリフィーロの世界」を鑑賞しました。
演劇の舞台セットも手掛けている作家のインタラクティヴアートを
楽しみました。 また日本に来てくださいね。


D3 國盛 

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