建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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 2014年8 月3日(日)にアクロス福岡の大会議室で「明治日本の産業革命」世界遺産セミナーを行いました。

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 そのセミナーで、工業博士・ 建築史家・九州大学大学院芸術工学研究院教授芸術工学専攻環境遺産デザインコース長・文化庁文化審議会世界文化遺産特別委員会委員藤原恵洋先生は「廃墟化・遺産か —— 産業遺産群を守り、活かし、世界遺産に導く市民の力 ——」のテーマで講演を行うことになりました。
講演の内容ないくつのポイントとしてまとめていました。
 
 ▷ 廃墟か、遺産か
 ▷ 産業遺産が文化遺産として認められる社会的背景
 ▷ 福岡県における産業遺産の特徴
 ▷「明治日本の産業革命遺産」の特徴
 ▷ 産業遺産群を守り活かす
 ▷ 世界遺産に導く市民の力


 実は藤原先生は長い間に世界産業遺産の研究を行い、建築史学者として80年代半ばか軍艦島を見守ってきた。以下は昨年の11月30日に毎日新聞で掲載しました藤原先生書かれました記事です。
 
       廃墟か世界遺産か〜〜私たちの想像力が育む軍艦島〜〜

 廃墟か、遺産か。長崎港の沖合、通称軍艦島と呼ばれる旧端島坑跡が話題になっている。幕末期に鍋島藩等の炭坑であったが、明治23年から昭和47年まで三菱の主力坑として操業し続け、単独坑としては黒字のまま閉山を余儀ないされた。来年は閉山から40年。孤島の護岸や地上の建造物は老巧化しており、強い波涛や台風に曝され風化も著しい。新たな所有者となった長崎市は「長崎市端島見学施設条例」「端島への立ち入りの制限に関する条例」にもとづき平成21年より公開に着手、上陸後の限られたコースにも関わらず多くの観光客で賑わう。さらに最近、2015年の世界文化遺産登録をめざし「明治日本の産業革命遺産」の構成産業として政府の推薦が決まった。
 一方、私は建築史学者として80年代半ばから軍艦島研究を見守ってきた。1974年の閉山直後から現地を詳細に実測調査し続けた阿久井喜孝東京電気大学名誉教授が先導者である。大正期から端島には、わが国黎明期の鉄筋コンクリート造集合住居群が出現、南西の海上から見た偉容が通称軍艦島と呼ばれるようになった経緯を解き明かした。海底に眠る炭田は良質な石炭を産出し、三菱も主力坑となった。最大で五千人を超える島民が暮らしたと言う。戦前の強制連行により過酷な労働環境から戦後高度でイチョウ期に現れた流行最先端の電化製品を楽しむ暮らしまで高層集合住居の記憶は時代の相を映す。
 さて近年の私たちには独特の文化遺産観が芽生えている。時代の転変が喪失させたものをあらためて補填したいと思わせる働動は、作家森まゆみ氏が示唆するように「小さいな物語や記憶を記録する」ことからレトロや世界文化遺産のブームに至るまで私たちの想像力刺激する。同時に式年遷宮を迎えた伊勢神宮や出雲大社尾平成も大遷宮を注目した場合、社殿を立て替え技術を伝承し、旧材を全国のお宮でリサイクルするというシステムこそが持続可能な文化遺産であると見ることが大切である。廃墟か、遺産か、断片しか見ない廃墟趣味に対し、より包括的な全体を知ることで、部分として余儀な差くれていたものの全体性を回復することが遺産を見つめる目であろう。
 こうした遺産観に立ち、私は3年前に九州大学軍艦島研究会を結成した。副代表の建築家中享一氏を中心に新たな文献資料の発掘や3DCG技術を用い幕末から明治期の端島坑の変容ぶりを検討、生き生きとした文脈をあぶり出しながら歴史遺産としての価値を論じ合っている。
 一方、文化庁文化審議会世界文化遺産特別委員会メンバーとして国内暫定リストの中の軍艦島と出会い直している。しかし私が開講した九州大学公開講座では、阿久井氏を講師に現地を訪ね一般観光客と同じルートを歩き、30号棟を至近距離にしたものの、それを日本初の鉄筋コンクリート造集合住居と判定した阿久井氏と柵を越えて近づけないもどかしさに地団駄踏んだ。
 そして今夏、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域(産業革命遺産)8県28件により構成遺産群がユネスコ世界遺産登録へ推薦されることに決定。この中に軍艦島も含まれるが、機能上の相互補完をなした高島炭坑跡地や中ノ島戸あわせ、世界文化遺産登録へ向けて何より先に国史跡指定化や保存管理計画の策定を急がねばならない。三菱長崎造船所や旧は八幡製鉄所の構資産は今も現役で用いる稼働資産のため、文化財保護法以外の景観法や工場法、港湾法による措置を講じることになっている。
 ここでは製鉄・鉄鋼、造船、石炭による構成が産業革命遺産を示される。世界の歴史が教える産業革命とは、失して重工業化への過程や成果のみを指すものではなく、産業近代化の黎明期から成熟期へ至る大きな社会循環をなす概念であろう。先行の軽工業過程から重工業化まで密接に関わる資本主義化過程への言及も含めていく必要がある。
 この観点から見た場合、軍艦島も本来は穿足れた竪坑から網の目上に広がった海底炭田の採掘現場全体が炭坑遺産として重要だが、視認できる地上の生産施設だけを炭坑遺産として評価していまいかめない。「海に浮かぶ」と称される地上部分と護岸に目がいく。そこには中央の南北稜線を軸に東側の生産施設と西側の高層高密度の労働者住居群が相対する。保存管理の難易ぶりから、高層住居群を風化に任せて対象外とし、護岸と生産施設さえ遺せば良いとの声も漏れ聞く。
 しかし小宇宙とも言える炭坑都市全体への理解が産炭地の歴史的意義を知るためには欠かせない。高密度の都市住居が世界中の同時代にあったという普遍性はユネスコ世界遺産が示すOUV(顕著な普遍的価値)そのものであろう。
 ここで再び学ぶべきは阿久井氏の観点である。以前に長崎市内で開催された市民向け講演会の壇上、阿久井氏は真剣な面持ちで「軍艦島だけは構成資産群から外し、別途単独で世界遺産を目指してほしい」と懇願し会場湧かせた。理由は明快である。明治期から1970年まで建設された住居群に冠たる高密度都市であった、が同時にそこには喜怒哀楽をちゃんと持った炭坑労働者がしたかに済んでいた、その記憶が今を生きる私たちにも共感されるから、という。廃墟ではなく遺産へのまなざしがここにある。
 予想を凌ぐ数多くの観光客の興味・関心はどうか。不謹慎だが廃墟を期待した者もいるだろう。生産施設や機械・設備等の残骸や廃墟が好きなら、産業構造の転換や近代化に置き残された残滓が各地に溢れており、管理運営が手つかずの場所も多い。
 一方、今回の軍艦島は文化財保護への経費負担も厳しい。多額の予算が必要とされる。世界文化遺産への難関とも言える国際記念物遺跡会議(イコモス)による現地調査も来夏には実施されるが、そこでは適切な保存管理計画のあり方も厳正に吟味されていく。さらにそこには多くの市民の理解と賛同、そして支援を得ていくことが大切である。
 一昨年、私も参加し国史跡三井三池万田坑跡(熊本県荒尾市)の保存管理計画を策定した。結果として万田坑も同じ「産業革命遺産」群の構成資産になったものの、あらためて地元市民の立場に立つ、廃墟と遺産は紙一重ではないかとの懸念を払いながら、今後多くの市民参加により厚い支援と積極的な活用が展開するよう真摯に策定作業を進めていった。その過程で求め多野は、より想像力溢れた市民の存在であった。一体誰にとっての産業なのか、何が遺産としての価値なのか、これからの暗しに遺産をどう活用できるのか、荒尾市民のみならずそこに訪ねる内外の万人が、これらの観点に関して論議し合えるような場づくりこそがたいせつであると考え、その市民育てに向け万田坑の価値を丁寧に伝えていきたいと気持ちを震わせた。
 軍艦島も同じである。廃墟ではなく遺産としての軍艦島を支える市民とはいったい誰だろう。かつての島民や新参の観光客も含め、これからの軍艦島を育みたいと願い集う想像力溢れた市民こそ今求められる。

D3  馬麗那



 

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