建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!


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本日の芸術文化環境論では、ゲスト講師として神戸芸術工科大学准教授であり
藤原研究室OBである谷口文保先生が、はるばる神戸からいらしてくださり
「芸術創造と公共政策の共創を誘発するアートプロジェクト」と題した
講義をいただきました。
 

今、全国津々浦々でアートが展開されています。田舎、海、山、病院、学校etc…
これらは近年“アートプロジェクト”と呼ばれ、展開されています。
アートとは純粋なものでは?何かの役に立つことはアートなのか?
アートとはアーティストが死ぬ程苦しい思いをして創るものではないか?
そのような既存の枠には捕らわれない、社会と密接に関わりながら展開される
「アートプロジェクト」について「公共政策」「共創」という言葉を
キーワードに講義をいただきました。

 
 

九州で有名なものは、大分県別府市「混浴温泉世界別府現代芸術フェスティバル」
が大変有名である。その他、「瀬戸内国際芸術祭」なども非常に大きな規模で
行われており、何十万人もの観光客が訪れている。その前身となるものが
「新潟越後妻有トリエンナーレ」であり、新潟県で大々的に行われている。

最近は道後オンセナートが開催されており、谷口先生は文化経済学会の際
鑑賞されるご予定とのこと!

谷口先生は、20代の頃からアーティストとして東京・神戸で毎年個展を
開催していた。神戸芸術工科大学で教鞭を取るようになり、次第に地域や
福祉施設などと連携して、アートプロジェクトを行うアーティストとして
活躍するようになる。アートプロジェクトはいつから始まったのだろうか。
 

アートプロジェクトの歴史

1990年 ミュージアム・シティ・プロジェクト(福岡)はアートプロジェクト
の原点の一つ。場所の重要性や文脈が重視された作品が注目されるようになる。

その後、仮説展示的な作品を、都市のスキマを埋めるように展示していくもの
となっていった。ちょうどその頃、企業や国による文化政策が本格化していく
時期となっていった。
 

1995117日 阪神淡路大震災が発生。都市の機能が麻痺し、全国から

ボランティアが駆けつけた。この年をボランティア元年と呼ぶようになり
市民による公共活動が一般化するきっかけとなった。そしてNPO法が成立し
アートプロジェクトの発展に大きな影響を与えた。避難生活や苦しい非人間的な
日々を送る中で、芸術文化に触れることが救いであったと述べる人々が多かった。
ボランティアで訪れる人の演奏や、震災に屈することなく開かれた生け花展には
大勢の人が詰めかけたという。
 

南芦屋浜震災復興公営住宅が建設されると、NPO法人文化農場の橋本敏子氏と
アーティストのたほりつこ氏によって「注文の多い楽農店」という作品が住宅の
公共空間に設置された。これらは住民が畑を営み、コミュニティを育む作品として
全国的な注目を浴びることとなった。作品は現在、組織が解体し、市民農園や
植栽となっている。

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http://zukan.exblog.jp/4417129/ 
注文の多い楽農店

アートプロジェクトの展開

2000年越後妻有トリエンナーレ(新潟)は、豪雪地帯であり限界集落として
非常に問題を抱えている地域で行われた。北川フラム氏がプロデューサーとして
展開したものは、棚田の中に作品を設置する事業から始まり、その後アート
プロジェクトを通して地域住民の参画が積極的に見受けられるようになる。

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越後妻有トリエンナーレ2012


学校と連携し、地域の表現を誘発するアートプロジェクト

このようにアートプロジェクトの歴史の中には、年々大規模化し、認知度も
爆発的に高まったものも少なくない。その一方で、谷口先生は小規模の
アートプロジェクトを専門に行っている。2007年、姫路市立安富北小学校では
「ホタルキノコ」を開催した。小学校では隣接する川でホタルに飼育し
再生活動を行っていた。環境教育とコラボレーションし、作成したホタルキノコ
には蓄光塗料が塗ってありホタルとキノコのコラボレーションが成功した。

子ども達から山の遊歩道に展示したいという希望や自治会からの提案が
出たことをきっかけに、山で展示するという展開にもなり、さらに新しい
作品が設置されることとなる。この時、谷口先生は企画に関わっておらず
地域の人々の創造性が誘発されたことになる。



 
 

新しいコミュニティを育むアートプロジェクト

ガーデンシティ舞多聞というニュータウンが出来た時、地域のコミュニティを
育むためのアートプロジェクトの要請があった。神戸芸術工科大学、
UR都市機構などの協力によって、2007年 舞多聞ネイチャーアートが実施され
現在も継続されている。自分で切った木で軽自動車くらいの大きな動物を
参加者が創り、その動物が旅する写真も作品として収めた。
その後、絵本の制作や学生による自主企画によって様々な形に展開し
地域に広がることとなった。

08-p-47
http://kiyou.kobe-du.ac.jp/08/report/08-09.html
 

 

福祉と育みあうアートプロジェクト

2008年から継続している「えびすアートプロジェクト」は、障害者とアートの
関係が社会と結びつき、豊かなコミュニティを築くための様々な人々との
恊働によるプロジェクトである。



兵庫県たつの市にある福祉事業所NPO法人えびすは、手作りパンや「さをり織り」
など製品を作って販売。ここに、谷口先生のアートの力が加わっていく。
きっかけは、障害者の方が描いた絵がとても魅力的で、その原画を基にアートを
創出することを思いついたことであった。みっくすさいだーとの
コラボレーションにより、エプロンが完成。障害者の方の原画学生との
コラボレーションによる作品制作 →
デザイン学科学生がエプロンデザイン
工業高校とのコラボレーションによりファッションショーに出演するなど
地域の濃密な連携から新しい可能性がどんどん広がった。
  profile

http://www.mixsider.com/profile/profile.html 
 
 

コラボショール−まちを身にまとう−

谷口先生とばんばまさえ先生によってあらたなアートプロジェクトが
NPO法人えびすの方々と行われた。21組になり、カメラマンと監督に別れ
まちの写真を撮る。カメラマンは監督の指示にしたがって風景を切り取るので
景色の共有と思い通りにならない写真が手に入ることとなる。
その写真をもとに図案を学生が考案し、コラボレーションしたショールを
完成させてファッションショーに参加した。

このような活動は、障がい者の社会参画の促進、障がい者福祉の啓発
大学生の成長を促す重要な教育プログラムでもある。

 

 

東条川疏水アート&ワークショップ

20145月、兵庫県北播磨県民局・神戸大学・神戸芸術工科大学・兵庫教育大学
のコラボレーションにより実施されたものである。
地域の農業用の疎水施設を見学してまわった。鯉のぼりを乗せた車がパレードし
地域住民の興味関心を引きながら調査を行う。東条川疏水のある地区は以前は
こいのぼり産地として有名な場所であった。「鯉の里帰りツアー」として
堅苦しくないアートとしての学習・ワークショップが実現した。

 
 

このように、アートワークショップをきっかけに、創造行為が広がり、繋がる
創造の連鎖が生まれたと言える。連歌のように展開されたアートであると言える。
課題としては後継者の育成や、アーティストと社会との接点を創出すること。
薬にも毒にもなるファルマコンとしてのアートをうまくマネジメントしていく
ことが不可欠である。アートプロジェクトは新しい芸術の創造である
「民衆の芸術」「共創する芸術」と言えるだろう。
 

 

谷口先生の分かりやすく楽しいご講義に、学生も興味深く聞き入っていました。

これまでアートプロジェクトに参加したことがない学生でも親しみやすく
参加してみたい!と思わせられるようなお話をいただきました。

谷口先生、貴重なご講義をどうもありがとうございました。

 

D3國盛

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