建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

Woher_kommen_wir_Wer_sind_wir_Wohin_gehen_wir

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講師
 

藤原惠洋 九州大学大学院教授・工学博士・建築史家・まちづくりオルガナイザー

 

講演演題

懐かしい未来を求めて〜虫の目で感じる街角(まちかど)、鳥の目で知る世界遺産〜

 
 

講演内容
 

 米国ボストン美術館には19世紀終わりに描かれたポール・ゴーギャンの有名な作品がある。
われわれはどこから来たのか、われわれは何者か、われわれはどこへ行くのか? D'où venons-nous ? Que sommes-nous ? Où allons-nous ?
 一枚の横長の絵の中には、3つの人物像が描かれており、それらは誰もが自分自身のこととして理解できる姿となっている。すなわち向かって右手から、赤ん坊として生まれて過ごす私たちの人生の始まり、そして欲望と誠実さとが対峙しながら渦巻く悩み多き成年期、さらに左手へ進むと人生を諦めかけた老女が描かれ死を迎えようとしている、といった人生の三態を示している。専門家の指摘によれば、老女の足下に描かれた白い鳥は言葉の無力さを物語っており、さらに絵の背後を覆うようにすべてを俯瞰する超越者が描かれている、とされる。あらためてわかるように、
この一枚の絵は私とあなたの世界のすべてを示唆している、というのだ。
 

  2011311日、強大なカタストロフィー(人為を超える脅威)は地震となり津波となり文明を破壊した。そのとき私はこの絵を思い出した。日頃見ないテレビを注視すると、有名なテレビキャスターが声高に「助け合ってください、支え合ってください」と叫び続けていた。私たちは何度も繰り返された映像で臨死体験を共有し合ったに違いない。
 

 一方、ここでは菊池という時空間に注視してみたい。
 
 現代の桃源郷がここにある。鞍岳や八方ヶ岳の輪郭を目でなぞるとき。四季のつれづれに田んぼや麦畑の立ち上がる匂いを嗅ぐとき。すれ違いざまに亡母の語りの響きにも似た菊池方言を聞くとき。清冽な湧き水をごくりと飲みほすとき。故郷に戻れば、懐かしいという感情と安心感がもたらされる。
40年も故郷を離れ、記憶を忘れているにも関わらず、故郷の空間や景観は私に懐かしさと安寧をもたらす。この身体を伴う五感の作用は意外な記憶や経験に再会させてくれる。かつて私はそこに居た。そう思うだけで私は故郷という道しるべに包み込まれていく。
 

 東の空に阿蘇五岳の噴煙を見はるかす菊池盆地。外輪山の山麓には豊かな穀倉地帯が生まれ、私が小さい頃、そこかしこには水が湧き、井手が流れ、菊池川を湛え、そうした水と川によるなりわいと暮らしの風景が私たちの毎日を彩っていた。
 

 しかし歳月は流れ、大きな社会と私たちの心身は変容を余儀なくされた。近代と現代の文明は故郷を捨て、知らず自然を捨て、知らず暮らしの知恵を捨て、知らず人の情感を捨ててきた。そして私たちは人為からカタストロフィーを招来したと言えよう。
 

 1970年代の終わりから、私は建築や都市の歴史的形成過程を分析評価する建築史家としてふるまった。一方、眼前に広がるまちの保全と再生を先導するまちづくりオルガナイザーとして全国に1700もあるまちや村の多くに関わってきた。そして二千年の日本史に背くように、わずかこの30年間で疲弊していったまちや村がみずからの力で蘇る処方箋を探し求めた。その結果、まちの歴史的な成立過程を丁寧にふりかえりながら(文脈の再生)、そのまちの魅力や誇りを取り戻し(矜持の再生)、まちを蘇らせようと言うシナリオを仲間達の共同作業として(紐帯の再生)創造していくこと、効果的な処方箋はこれしかない、と思い至る。。

 そこから人と人、人と自然、そして私の中に眠るもう一人の自分と出会い直していきたい。かつてそこに居た私やあなたがもう一度招来され、出会い直すという懐かしい未来。それは持続可能で私たちが幸せに暮らす社会でもある。私の出自である菊池を背景に、本講演では、とりわけ虫の目で感じる街角(まちかど)から鳥の目で知る世界遺産までを事例として紹介しながら、こうした懐かしい未来への道しるべを探っていきたい。

 

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