建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

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  2014
年2月21日の早朝、ふ印ボス藤原先生と私(柯)それに天草少年の中村圭一くん(19)の3名は初めての日田へ向かいました。(ふ印ボスは日田ラボ時代、市内の三和地区に家を借りて住んでいたと聞き、驚きました!!その家が元祖日田ラボだった!詳細は必ずいつか聞き出したいと思っています)

  出発。博多駅でふ印ボスと私は待ち合わせ。ネット購入の切符だと超お得、という新しい情報を仕入れて、憧れの特急に乗車することになりました。
ふ印ボスと私は「ゆふ1号」に乗り込みました。鹿児島本線から久留米駅を経て久大本線へ。九大生だから乗り分けじゃない。途中の久留米大学駅から天草少年圭一君と合流したのです。そして3人連れで久大本線の周りに広がる筑後平野の農村風景に見とれながら山間へ向かって行きます。今日のフィールドワークの目的は、江戸幕府の直轄地(天領)として栄えた日田に文化資源を踏査しに行くことなのです。

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真宗大谷派専念寺

  日田市隈町の専念寺。ここは、詩・書・画に優れていたことから「三絶僧」と呼ばれた『五岳上人』が六代目住職を努めた寺でも知られています。上人の作品の中で、平成15年8月には五岳作の『西郷隆盛肖像画』が発見され全国でも大スクープとなりました。
このお寺で、日田に春の訪れを告げる「天領日田おひなまつり」が2月15日から始まっていす。
  こちらの【雛と合掌の寺 専念寺】では、10年前よりお雛様の展示を行っていて、日田の春の風物詩になっているとのこと。早速探訪することにします。

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日田でも有名な材木商だった舎(ヤマキチ)後藤家の御殿雛の御雛様たち

  隈町を流れる筑後川の分流庄手川に面して、明治20年築の後藤家のお屋敷があります。
母屋には、京都で1番とされた人形師「大木平蔵」の明治末期の御殿雛(ごてんびな)を展示しています。
  十数年前、古い人形は地域の財産でもあり、町の活性化のためにもなる、と市の依頼を受け展示を決めて以来、現在に至ります。
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  舎(ヤマキチ)後藤家の御雛様の案内板によると「御殿雛は、京都四条堺筋町北東角の御雛人形細工司大木平蔵は当時京で一番の人形師とされ、ニセモノが多数横行したと言われる程の全国的な人気でした。また、現存する作品の中でもこの様に一式揃っている雛は珍しいと言われております。舎(ヤマキチ)後藤家の初代は子どもがなく、養子である二代目の長女(大正三年生まれ)の出生に大いに喜び、自ら京都に赴いて求めた祝いの品でございます。」と説明されていました。

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  隣の蔵をリノベーションしたレストラン「すてーき茶寮和くら」は、平成20年に国の「登録有形文化財」に登録されました。ここではちょっと一休み、コーヒーなども味わえます。
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  国登録有形文化財は所有者がみずから文化財登録への名乗りを上げることができる重要な仕組みです。
 文化庁の説明によると、近年の国土開発、都市計画の進展、生活様式の変化等により、社会的評価を受ける間もなく消滅の危機に晒されている多種多様かつ大量の近代の建造物を中心とする文化財建造物を、後世に幅広く継承していくために、届出制と指導・助言・勧告を基本とするゆるやかな保護措置を講じる制度です。
 これは、従来の指定制度(重要なものを厳選し許可制等の強い規制と手厚い保護を行うもの)を補完するものであり、平成8年10月から導入されています。
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  ボスの説明によれば、「第44-0156~0159号」の「44」は大分県の所属番号、「0156~0159」がこの登録文化財には4件が含まれており、家屋以外に棟札が含まれているとのこと。この「コード」に隠された「秘密」を知ることができました。意外なことがわかり後藤さん親子は大喜びです。ささやかなことですが、ひとつひとつを丁寧に説明して行くふ印ボスの仕事は嬉しい限りです。

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三隈川の散策
  日田の町なかにはじつにいろいろな「文化資源」があります。ゆっくり歩きながら、それらを探索していくと楽しさがいっぱい。
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日田杉材やぶくぐりの木材開発研究先端者と出会う

  日田市街地に位置する有限会社紅屋を訪ねました。かつてふ印ボスが異業種交流勉強会「プラザ日田」の助言者をつとめていた頃からのお仲間で、加藤正孝会長さんと再会です。研究室のような社長室を訪問。そこで驚く実験材料を見せてもらうことができました。
  木材に関する加藤さんの知識は豊富です。また長年、みずから私財を投じて、日田杉に付加価値を与えて行きたいと、研究開発を続けておられます。日田の特産品―日田杉に関わる開発商品をみんなに見せてくれましたが、アイデアに富んだ試作品を手にして、一同非常に驚きました。日田杉で商品を開発し、量産化、産業化をしていくのが加藤会長の悲願とも言えます。いつか実現できるよう努力を惜しみません。きっとこうしたアイデア展開が日田における地域活性化の力になると祈っています。

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小鹿田焼

  小鹿田焼(おんたやき)は、大分県日田市の山あい、皿山を中心とする小鹿田地区で焼かれる陶器です。その陶芸技法が1995年(平成7年)に国の重要無形文化財に指定されました。さらの2008年3月には地区全体(約14ヘクタール)が「小鹿田焼の里」の名称で重要文化的景観として選定されています。
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    民芸運動を提唱した柳宗悦1931年昭和6年)にこの地を訪れ、「日田の皿山」と題して評価する内容の一文を発表したこと、さらに、日本の陶芸界に大きく名を残したイギリスの陶芸家、バーナード・リーチも陶芸研究のため、1954年(昭和29年)、1964年(昭和39年)に滞在して作陶をおこなったことにより、小鹿田焼は日本全国や海外にまで広く知られるようになったとのこと。素晴らしい民芸・民陶の里です。
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  陶土を搗くための臼は「唐臼(からうす)」と呼ばれます。京庭園等で見受けるししおどしのように受け皿に溜まった水が受け皿ごと落ちる反動によって陶土を挽いています。

  ここに遍在する「唐臼」の情景と雰囲気を受け、日本とアメリカの合作映画である黒澤明監督の『夢』(英題:Dreams、1990)、そこに広がる「水車のある村」の情景を思い出し、落ち着いていて、穏やかな桃源郷のようです。DSCN3289


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小鹿田焼の原土(陶土)は、すべて集落周辺の山からの自給します。
皿山は集落全体の地質が厚い陶土層で形成されているため、表土を少し掘り下げれば陶土を掘り出せます。

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 小鹿田焼で特徴的な技法「飛び鉋」は蹴轆轤を回しながら、生乾きの化粧土に鉄の小さな鉋の先が引っ掛かるようにして削り目をつける技法です。朝鮮半島由来の技法と言えます。

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 伝統を守りつづけている小鹿田焼は、平成7年に国の重要無形文化財に指定を受けました。平成8年には「残したい日本の音風景100選」にも認定。
 今も昔も変わることなく静かな山中で川と唐臼の音が響くなか、開窯当時以来、一子相伝で小鹿田焼の技術や伝統を守りつづけています。
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 今回はまたいろんな「初」体験をすることができました。特に国指定重要文化的景観の小鹿田焼の里では、言葉に尽きせぬ、なんとも言えない感動がいっぱい溢れていました。
 ここでは
地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地は充分に感じていました。また今度訪ねて行きたいと考えています。

 最後、心よりふ印ボスの藤原先生、日田達人のタカクラさん、天草少年の圭一君にお礼を申し上げます。いろいろと付き合いと案内していただき、ありがとうございました。



BY D1 柯勝釗

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