建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

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 藤原惠洋先生による九州大学公開講座では、20世紀に花開き世界を席巻した
欧州デザインへの探検をテーマに、世界的に有名な椅子コレクターでデザイナーの
永井敬二先生をお招きし講義をいただいています。
最終回はイタリアデザインについて講義をいただきました。
座学は最終回となってしまいましたが、最後まで永井先生のコレクション熱と
デザインに対する哲学はますますヒートアップするばかりでした。



エンツォ・マーリのフライパンは使いこなせない!?

エンツォ・マーリ 1932〜
1976〜79年にかけてADI(イタリア工業デザイン協会)
の会長を務める。グラフィック、インダストリアルデザイン、出版と活動の幅は
広く、イタリアン・デザインを代表するデザイナーの一人。

永井先生は膨大な数のコレクションと共に暮している。「生活を美しくしたい、
豊かな気持ちで生活したい」という望みから20世紀のモダンデザインに魅せられ
収集当初は実際にコレクションを使い日々暮しを彩っていた。
しかし最近はあまりに数が多いので、多くは保存している状態にある。
使わないのに、なぜコレクションするのか?  プロダクトは、実際に触れて
使ってみないと、その魅力は分からないという。

例えばエンツォ・マーリのフライパンは、とてもじゃないけれど使いこなせない。
「おそらく非常に綺麗な状態では使いこなすことはできず、時間をかけて使い
込むことで初めて馴染むものなのだろう」 永井さんはすぐテフロン製のものを
購入して使用した、とのこと! 永井さんの「デザインされたものを、触って
使ってみたい。自分の感覚で確かめてみたい」という気持ちがコレクションへと
掻き立てる根源となっている。

ガウディの展覧会が開催される時、展示するものに自分で触れてみたくて
サポートスタッフとして参加したことも。一脚の椅子を取り上げても
その椅子と比較対象となるものを収集しだし、結果いくつもアイテムを
揃えてしまうそうだ。

例えば無印良品や日本人デザイナーのプロダクトの出所には、ヨーロッパの
プロダクトが背景に多々あると感じている。その背景を感じさせるモノを文脈に
沿って見てみるために、収集したいという気持ちが生まれてくる。



機能主義デザインとガジェット

バウハウスが20世紀に提案し全世界を魅了させ、そして21世紀まで人々を縛り
つけた強力なデザイン概念の一つは「機能主義」であった。
禁欲的なデザインの過剰な歓迎は、1970年代以降にようやくアメリカを中心とし
モダニズムを越えた“ポストモダニズム”へと突入する。
デザインに新たな装飾・遊戯性・ウィットなどが加わり、現代アートにもポスト
モダンやポップアートといった形で花開く。
その一方で、スペインの哲学者ジャン・ボードリアールは“キッチュ”や
“ガジェット”という言葉で21世紀の生活文化に警鐘を鳴らした。




“ガジェット”概念の生みの親 ジャン・ボードリアール

「ガジェットこそは消費社会におけるモノの真の姿なのである。」
「ガジェットを定義するとしたら、潜在的無用性と遊び的な組み合わせによる
 価値をもつモノということになる」
「実用的でも象徴的でもなく遊び的なその使い方によって規定される。」
「モノ、財、関係、サーヴィスなどすべてガジェトにとなる限りにおいて、
 遊び性は現代人の固定的な日常生活は基調低音となる。」
「この投資はもろもろの組み合わせそのものを楽しんだり組み合わせの変化を
 楽しんだりすることに他ならない。」
「人間とモノとの関係は、ここでは魔術的関係つまり幻惑され操作された関係
以外のものではありえない。」
                ジャン・ボードリアール「消費社会の神話と構造」pp.155~160.

ボードリアールは、大量消費に心酔させられた人々の暮らしに享楽性を
見出していた。それらは現代においてもまだデザインの中に見受けられる。
近年は、メディアに訴えるだけのデザインが多く、あまりにも急ぎすぎている
ように感じている。現代のデザイナーはメディアへの意識を無視することができず
結果どことなく消費されるデザインに結びついてしまう。
キャッチーさではなく、長い時間プロダクトを使い、そのデザインについて話して
ずっと楽しいやりとりが出来るものこそが心地よくそれが美しさである。



デザインを処方する

あらゆるデザインに精通した人の役割は、それぞれの人の暮らしに合ったデザイン
を処方することである。たとえば椅子一つにとっても、岡本太郎の椅子はアート
であり、非常に座りにくく座ることを拒否するものである。
見た目が美しくても座りにくいもの、どこか野暮ったい外見であっても座り心地
がとても良いものなどそれぞれ個性がある。プロダクトを望む人にとって
どのようなものが生活に寄り添うものになるのか、永井先生はご自身の役割を
「一つの処方箋をその人に対して書くようなもの」と捉えている。

目の前にいる人のライフスタイルを聞いて、考えて初めて、その人に適した
プロダクトを提案することができる。その一つが唐津の洋々閣であり
公開講座の歳暮旅として実際に踏査します!




本日登場した主なイタリアのデザイナー

フランコ・アルビーニ(1905-1977)
プロダクトのみならず建築、都市計画、デザイン誌Casabellaの編集長を務める
など幅広い活躍を見せた。arflex社のプロダクトデザインも手掛ける。
熊本県天草市牛深の橋をデザインしたレンゾ・ピアノもアルビーニの事務所に
勤めた後独立した。

ジオ・ポンティ(1891−)
ル・コルビジュエと4つ違いのポンティは、スプーンから超高層ビルまでデザイン
は多岐に渡った。デザイン誌Domosを創刊。
プロダクトや建築に軽やかさを追求したポンティは1951年当時、世界一軽い椅子
“スーパーレジェーラ”をデザインし、1956年にCassina生産開始となった。
永井コレクションにはスーパーレジェーロ646・699のセロファンコード、
藤張りと様々なバリエーションがある。
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Cassina ink http://www.cassina-ixc.jp/shop/g/g646/



ジャンカルロ・ピレッティ(1940−)
1969年にデザインしたPliaは、現代の折りたたみ椅子の原形となっている。
折り畳み、スタッキングが可能な軽やかなデザインが特徴。

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http://livedoor.blogimg.jp/keiyo_labo/imgs/0/e/0effe191.jpg


カルロ・スカルパ(1906−1978)
建築を理論的側面によって構築するというよりも、素材に精通し職人と現場で
可能性を追求するようなスタイルをとったデザイナー・建築家。
美術館・墓地・銀行などを手掛け、サン・ジョルジョ・マッジョーレ島では
ヴェニーニ社のガラス博物館に彼や彼の息子トビア・スカルパのプロダクトが
収められている。 スカルパの椅子は博多の都ホテルに入っているとのこと!

ヴィコ・マジストレッティ(1920−)
ミラノ工科大学を卒業後、父の事務所で働く中で都市計画やインテリアデザイン
を手掛けるようになる。プラスチック素材にいち早く目をつけた。
ニューヨーク近代美術館にも所蔵されている。 


 
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カッシーナ社長からプレゼントされた椅子や、娘アデーレ・カッシーナが復刻
したものの製品化されなかったものなど、大変貴重なチェアのスライドを
見ることができました。
その他エンツォ・マーリ、女性デザイナーのチリ・ボエリ、エットロ・ソットサス
カルノ・モリーノ、オスワルド・ボリサーニのテクノチェア、アルベルト・メダ
の世界で50脚しか生産されたなかった「ライト・ライト」(ジオ・ポンティの
椅子より軽い!)などなど、今回も膨大な数のスライドからイタリアデザインの
特徴を感じることができました。

北欧やドイツデザインと比べて装飾性や個性的な表現を楽しんでいるように
見えるイタリアデザインは、プラスティックやビニールといった近代的な素材を
積極的に使い、彩度の高い色なども大胆なものが数多くありました。
人間が使うプロダクトというよりも、プロダクトそのものに人間味を感じる
ような有機的な曲線やセクシーさが見られるものも多くありました。

この日をもって後期公開講座の座学は終了ですが、12月22日は永井先生を含め
唐津の洋々閣へ歳暮旅へと出かけます!



D3 國盛

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