建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!


 DSC_0080

1991年に発足し、毎年各地で赤煉瓦愛好者・探訪者・保存活用団体によって
赤煉瓦建築の保存再生活用に関する研究と交流が行われる
「赤煉瓦ネットワーク全国大会」。

今年は福岡県北九州市、門司赤煉瓦プレイスにて開催されました。

基調講演には博物館明治村館長で東京大学名誉教授の鈴木博之先生を招き
「赤煉瓦はなぜ日本人を魅了してきたのか?」というタイトルのもとにご講演
いただきました。各地の赤煉瓦建築の保存活用に関する事例報告に続き
藤原惠洋先生の行司により、日本赤煉瓦建築番付の公開番付編成会議も
開催されました。

 
DSC_0076
この日、九大生はスタッフとして参加。朝のミーティングの様子



DSC_0081
  
 

 

鈴木博之先生「赤煉瓦はなぜ日本人を魅了してきたのか?」

鈴木博之先生は、1984年に「ヴィクトリアン・ゴシックの崩壊過程の研究」
において博士号を取得され、以降明治期から現代建築まで、実に幅広い視野で
建築史に関する研究を収められてきた。赤煉瓦はなぜ日本人を魅了してきた
のか、この日は19世紀英国ゴシックリヴァイバルの崩壊期の文化と、同時期に
辰野金吾らの留学によって日本にもたらされた建築意匠の影響を、500億を
有した東京駅保存修復の事業を実例として挙げながら、英国と日本のレンガ
建築の関連性や影響を丁寧に取り上げる中で浮かび上がらせていました。

 

英国では、赤い煉瓦、黒い煉瓦、18世紀には黄色の煉瓦造も出現するなどして
多彩な煉瓦表現が行われていた。

辰野金吾が初めてロンドンへ留学した頃にはリチャード・ノーマンショウ

が英国内の重要な建築の数多くを手掛けており(スコットランド・ヤード:
ロンドン警視庁、1887-1888年やエドワーディアン・バロックのピカデリー
ホテル)、辰野金吾はこれらの様式を学び強く影響を受け、日本に持ち帰って
数多くの建築を建てた。東京駅もその影響を強く受けている。

ノーマンショウの建築はクイーン・アンスタイル(赤煉瓦で仕上げた、18世紀
始めのアン女王の頃の中世趣味を取り入れた様式。)呼ばれ、それらを
取り入れた辰野金吾のデザインは饒舌なものとなった。東京駅には多彩な
意匠の屋根があり、イギリスの影響をとても受けている。

 

 
10
 
17
 
24
JR 東日本旅客鉃道http://www.jreast.co.jp 
 

東京駅の修復にあたって

東京駅の手本には、スコットランドエアの様式が参照されたが、修復の手本として
は、ロンドンのセント・バングラス駅(ジョージ・ギルバード・スコット設計)
であった。この駅はかつて取り壊される危機に面したが、現在も使われること
となり、再活用される運びとなった。

東京駅の修復は、およそ500億円をかけた国家的プロジェクトとなり、煉瓦の
目地を扱う職人の方々には、かまぼこ型に膨らんだ、覆輪目地をマスターして
もらうところからはじめた。左官屋さんは、人造石でマケットを作り
実際に修復の技を習得したのち施工した。

 
 

東京駅の建築計画は、もともとはフランツ・バルツァー(18571927
によって提案された計画が素地となっている。お雇い外国人によって設計
されたものは和風を取り入れたものであり、当時西洋文化崇拝的傾向が強かった
日本人には好まれなかったことと、バルツァー自身が日本建築の理解と咀嚼を
十分にできていなかったこともあり却下され、辰野が請け負うこととなった。

 

東京駅は第二次世界大戦時、3階が被災した。修復によって二階建てにし
四角い直線上の屋根に作り替えた。しかし今回の修復の際、被災前の状態に
戻すような運びとなった。東京駅は、赤煉瓦の雰囲気を内外に感じられる
ことが重要であるとして、内側にも煉瓦を露出させることを意識した。

山口県会議事堂などなど12の物件(12棟のうち7棟が赤煉瓦造)を調査し
東京駅の修復の参考にした。日本人はなぜ赤煉瓦に惹かれるのか。

ロンドンにおいても赤煉瓦の建築の魅力は人々に訴えかけるところがある。

ロンドンのセント・バングラス駅においても、施設内の食堂では、意図的に
煉瓦を露出させており、利用者にとっても味わうことができる仕掛けが
できている。東京駅も同様に、内部にはオリジナルの煉瓦の躯体が残る。
 

 

赤煉瓦と銅板はつきもの。緑青が綺麗に出ると、貫禄が現れる。東京駅に
関しては化学反応で緑青化させず、自然のままに任せることにした。
しかし近年は酸性雨などの影響を懸念し、少し厚みのある(4mm厚。
通常は3mm厚のものを用いる)銅板を使用している。

 

現在は、東京駅駅前の広場も整備しようとしている。広場に関しては議論が
あり、広場も煉瓦の舗装を用いてはどうかという話が挙った。
しかし東京駅はとても人通りが多く、何が通るか分からない、という耐久性の
問題もあり、道路は石造りにし、厚み8cmのものを希望している。
しかし、石であると照り返しが厳しいので、ミスト加工したものが望ましい。

皇居には、たびたび信任状を馬車で運ぶので、馬がこけないような加工を施す
ことも必要である。東京駅駅前の広場の整備が完成して初めて、東京駅は
完成すると言えるであろう。

 

 DSC_0082 
DSC_0084
 
DSC_0086
 

続いて、門司麦酒煉瓦館の館長市原猛志氏や藤原先生によって、門司・下関
周辺の重要な建築の紹介がなされ、NPO法人赤煉瓦倶楽部舞鶴  馬場英夫氏、
NPO法人赤煉瓦倶楽部半田 理事長 馬場信雄氏によって事例報告がなされ
ました。会場には100人近い来場者の赤煉瓦好きがひしひしと伝わってくる
ように、皆発表に耳を傾けていました。




藤原惠洋先生の行司により日本赤煉瓦建築番付の公開番付編成会議!

 IMG_2129

2000年に開催された「蒙御免 弐拾世紀 日本赤煉瓦建築番付」では、行司の藤森
照信氏、 堀勇良氏、 清水慶一氏、 水野信太郎氏によって、番付が行われました。
今年は藤原惠洋先生の行司によって行われました。

2000年時には東の横綱とされた東京駅はじめ重要文化財の行く末や、なんと引退に
至ってしまった物件、今年新たにしこ名が改まったものなど、会場は笑いと感嘆に
包まれ、楽しい雰囲気の中でも熾烈な番付編成が行われました。
 
 

 

2013年度の番付の特徴は?
 

・番付編成においては、近年世界遺産登録にも重視されるように、「市民による
 保存活用」に重点を置いているところが最大の特徴!
 

・市民活用による保存と活用がなされた赤建築を大きく評価している。

 次いで、保存活用度、解体危険性、建物規模、歴史的経緯、意匠・著名な設計者
 等が考慮される。
 

47都道府県1つは必ず物件を参入させる。赤煉瓦建築に興味を持ってもらうことと
 地域に誇りを感じてもらうためである。
 

・「年寄」の存在…価値が明らかになり、保存が確定した物件に対して敬意を
 表するとともに、新風を入れるため、重要文化財は「年寄」として位置づけられ
 赤煉瓦に収まらない土木構造たちは「相撲茶屋」として位置づける。

 

物件紹介のスライド写真は、ほとんど市原さんが現地に赴き収めたもの。
臨場感ある物件の説明と、数々の重要文化財や世界遺産に対する評価付けを行って
いる藤原先生の、時代性や最先端の見解を取り入れた番付編成は、2000年度の
ものから一新する一方で、番付といった競争に捕われない、包括的で各地域に誇りを
もたらすような編成が行われました。

 



IMG_2138
 
IMG_2141
IMG_2142





D3 國盛 

Add Comments

名前
URL
 
  絵文字
 
 
プロフィール

藍蟹堂

藍蟹堂。感受性は海の底から波濤や世界の波瀾万丈を見上げる蟹そのもの。では蟹とは?

『ふ印ラボ』 最新記事
『日田ラボ』 最新記事
『きくけん』 最新記事
カテゴリ別アーカイブ
月別アーカイブ
記事検索
ギャラリー
  • 練習に熱中!!【九州大学大学院芸術工学研究院藤原惠洋研究室 熊本・天草フィールドワーク2018 第1回フィールドワーク・リテラシー(順応能力)形成ワークショップ】
  • 練習に熱中!!【九州大学大学院芸術工学研究院藤原惠洋研究室 熊本・天草フィールドワーク2018 第1回フィールドワーク・リテラシー(順応能力)形成ワークショップ】
  • 練習に熱中!!【九州大学大学院芸術工学研究院藤原惠洋研究室 熊本・天草フィールドワーク2018 第1回フィールドワーク・リテラシー(順応能力)形成ワークショップ】
  • 練習に熱中!!【九州大学大学院芸術工学研究院藤原惠洋研究室 熊本・天草フィールドワーク2018 第1回フィールドワーク・リテラシー(順応能力)形成ワークショップ】
  • 練習に熱中!!【九州大学大学院芸術工学研究院藤原惠洋研究室 熊本・天草フィールドワーク2018 第1回フィールドワーク・リテラシー(順応能力)形成ワークショップ】
  • 練習に熱中!!【九州大学大学院芸術工学研究院藤原惠洋研究室 熊本・天草フィールドワーク2018 第1回フィールドワーク・リテラシー(順応能力)形成ワークショップ】
  • 練習に熱中!!【九州大学大学院芸術工学研究院藤原惠洋研究室 熊本・天草フィールドワーク2018 第1回フィールドワーク・リテラシー(順応能力)形成ワークショップ】
  • 練習に熱中!!【九州大学大学院芸術工学研究院藤原惠洋研究室 熊本・天草フィールドワーク2018 第1回フィールドワーク・リテラシー(順応能力)形成ワークショップ】
  • 練習に熱中!!【九州大学大学院芸術工学研究院藤原惠洋研究室 熊本・天草フィールドワーク2018 第1回フィールドワーク・リテラシー(順応能力)形成ワークショップ】
  • ふ印ラボ定例ゼミ第3回において王仕岳くんが重慶交通大学建築学科の課題、卒論を発表しました!そして、その後は天草フィールドワーク準備!ハイヤ踊り練習!!
  • ふ印ラボ定例ゼミ第3回において王仕岳くんが重慶交通大学建築学科の課題、卒論を発表しました!そして、その後は天草フィールドワーク準備!ハイヤ踊り練習!!
  • ふ印ラボ定例ゼミ第3回において王仕岳くんが重慶交通大学建築学科の課題、卒論を発表しました!そして、その後は天草フィールドワーク準備!ハイヤ踊り練習!!
  • ふ印ラボ定例ゼミ第3回において王仕岳くんが重慶交通大学建築学科の課題、卒論を発表しました!そして、その後は天草フィールドワーク準備!ハイヤ踊り練習!!
  • ふ印ラボ定例ゼミ第3回において王仕岳くんが重慶交通大学建築学科の課題、卒論を発表しました!そして、その後は天草フィールドワーク準備!ハイヤ踊り練習!!
  • ふ印ラボ定例ゼミ第3回において王仕岳くんが重慶交通大学建築学科の課題、卒論を発表しました!そして、その後は天草フィールドワーク準備!ハイヤ踊り練習!!
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ