建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
イタリア踏査レポート 第2弾です。

辿り着いたヴィツェンツァのまち。ここはパラディオによる建造物が集約された世界遺産の町としても知られています。
9月28日、今日はそこから少し離れたヴェローナの都市調査へ鉄道にて日帰りツアーを楽しみました。
じつはここもまた世界遺産の町として知られているのです。

しかしそれ以上にもっと有名なことがあります。
ヴェローナは、あのシェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」の舞台となったまちなのです。
そしてさらに古代ローマ時代の円形競技場跡(アレーナ・ディ・ヴェローナ)や中世の町並みが残っており、2000年には「ヴェローナ市街」としてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されています。
我々は、その中心部へどんどん入って行きました。

カステルヴェッキオ美術館/カルロ・スカルパ 1964年改修
 
イタリアの内外に残る建築家カルロ・スカルパの建築は、古いものをそのまま修復するものではなく、異なる素材を活かしながら、違和感無く斬新なデザインを取り入れた改修方法をとっています。とくに代表作とも言えるヴェローナの古城を生かした「カステルヴェッキオ美術館」は、築城から700年、改修から50年を経過していますが、日本の歴史的な古都や町並み保存の伝建地区にはあまり見られない古さの中の新しさをじ〜んと感じる事ができます。

コンクリート、鉄、大理石、木、といった素材を組み合わせた階段、重厚な木製の扉、開口部の窓枠など、あらゆるところがずっと前からそこにあったような存在感を放ちながらも、いぶし銀のように渋く輝きながら、とても格好よく感じました。
古い建物を保存する時には、その当時の方法や飾りをそのまま再現することも大切ですが、時代により変化してきたものを、こんな風によみがえらせることができるというのも素晴らしいことだと感じました。
 
※1376年に築城されたゴシック様式の「古城」。1926年に市立美術館に改造。さらに、1964年スカルパの改修により、繊細で密度の高い建築に変貌させた。

そして一路方向を東へ進み、イタリアのロンバルディア地方の最後の目的地へ、いよいよアドリア海に面した憧れのヴェネツィアです!

ヴェネツィア調査/サンマルコ広場をはじめとする市街地全般およびムラーノ島
 
ヴェネツィア・サンタルチア駅より十分に徒歩で歩ける圏内に町が作られています。
同時に、町の中をくまなく巡る運河を利用したヴォパレットと呼ばれる水上バスや水上タクシー・ゴンドラなどが無数に行き来しています。
しかもこうした市街地へ車の乗り入れは禁止されており、徒歩か船での移動のみ可能です。
またヴェネチアガラスで有名なムラーノ島やリゾート地として脚光を浴びるリド島など、陸続きではない島へも問題なく24時間移動することが可能です。(夜中は1時間に1本の運航、終電や終バスはない)
今回、この調査に先立ち参加した9月後半の第1回きくち文化資源・地域再生・創造都市ワークショップの中で参加学生から提案された「隠れてしまった水路を蘇らせて、おおいに水空間を活用したまちづくりをしましょう」の提案をまさに古い時代からそのまま実践している凄い都市とも言えます。 
 
一方、離れたムラーノ島はヴェネツィアングラスの工房や工場が建ち並んでいます。工房を見せることや、展示品のディスプレイなど工夫がなされており、ゆっくりすべてを回ることができる広さであることも魅力的です。
 
ヴェネツィア調査/第55回ヴェネツィア・ビエンナーレ(1)
 
開幕後、すでにこれまで100年以上の歴史を誇るヴェネツィア・ビエンナーレは、毎回世界中から多くの来場者が訪れます。奇数年に開催される現代美術部門だけでなく、映画部門(毎年開催)・建築部門(偶数年開催)・音楽部門・演劇部門・舞踊部門といった門戸が開かれているため、観光客や来場者の年齢や国籍などもじつに幅広く、実際に毎年来ているという女性のグループと交流したり、遠いアジアからも多数の学生達のグループなど多種多彩な人たちが訪れているように思えました。
 
万博のような会場のみの展示に終わらず、街全体に各国のパビリオンや作家の作品が展示されているところも魅力的です。日本ではこれからですが、これまで菊池や天草を対象としてふ印ラボ提案型のフィールドワークやワークショップ時に実験的に試行しながら取り組んで来ている民泊型や長期滞在型の滞在環境に関して、想像をはるかに超えた量と質が実践されているなあと感じました。
 
さらに会期は半年間とじつにゆったりしており、期間中の展示も変化していくことから、作品の中身はもちろん、半年間の間に作品の環境も少しづつ変化することも可能です。展示方法もたいへんユニークなものでした。(期間中、何度も訪れても楽しめます。)
 
今回は日本館で展示された現代美術作家田中功起と東京国立近代美術館学芸課長でふ印ボスと千葉大学時代に美術史家長田謙一先生を通して交流のあった教え子蔵屋美香さん(キュレーター)の企画による「抽象的に話すこと - 不確かなものの共有とコレクティブ・アクト」が特別表彰を受賞していました。3.11以降の東日本大震災以降の人間関係を美術を通して考える行為をテーマに掲げたものです。昨年の金獅子賞を受賞した建築ビエンナーレ展から引き続き震災復興の中でのテーマを展示した日本館が選出されたこともあり、大変興味深い調査となりました。
この他、「がれき」の上を歩くという行為をアートにして見せたり、戦争を扱っているものなど、アートだから見えるものがたくさんあったように思います。 

パビリオンだけでもじっくり鑑賞するには最低でも2日間程かかると思いました。
さらに街全体の展示を鑑賞しようとすると、もっと時間が必要です。そこで焦って見て回るよりも、途中のカフェで休憩しながら、ゆっくりゆっくり楽しむことが、とても重要だと思いました。


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フィレンツェ調査
 
9月30日、ヴェネチアからトスカーナ地方へ移動しました。
ここフィレンツェのまちも、フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅より徒歩でまちの中心部へ行く事ができます。
ルネサンス黎明期を代表する建築家フィリッポ・ブルネレスキにより設計されたサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂やメディチ家歴代の美術コレクションを収蔵するウフィツィ美術館、橋の上に宝飾店が建ち並んでいるヴェッキオ橋(ポンテ・ヴェッキオ)など、他の都市と同じように石で作られた建物を中心に古い町並みが続きます。
また大通りの裏路地には、飲食店や市場が立ち並び多くの観光客を魅了しています。

ふと日本のことを考えました。
地域よみがえりのために文化資源総合調査研究を進めてきた菊池では、毎月第4日曜日早朝に月1回の軽トラ朝市が開催されています。しかしヨーロッパ社会では定期市は何処でも繁盛しています。フィレンツェの市場(衣料や雑貨、食品までさまざま)は毎日朝9時から夜9時まで開店しており、遅くまで人の足が絶えません。
また夜9時以降の市場は、屋台を 片付ける様子を見る事ができて、これも大変面白いものでした。
 
※ウフィツィ美術館は、1591年より部分的に公開されており、近代式の美術館としてヨーロッパ最古のものの1つである。またイタリア国内の美術館としては収蔵品の質、量ともに最大のもの。

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10月2日、今回の調査の最終調達点はローマです。 

すべての道はローマに通じる。

いわずとしれたローマは大変古い都市です。
掘れば遺跡が出て来るという理由で、地下鉄は都市の中に2本のみしか通っていません。
遺跡群の中に、都市があり、共存しています。
イタリア全土に感じることですが、遺跡を大切にしているとは思いますが、特別扱いしていないといった雰囲気があります。
当たり前に扱いながら大切にしていくことは、日本の文化財の扱い方とは少し違うような気がします。
私たちが暮らす町の中での、古いものの生かし方をもっと考えて行きたいと思いました。

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今回の踏査はイタリアを西から東、東から南へ、急ぎ足で移動しながら多くのことを踏査し、歴史の中の文脈を生き抜いている人々の元気な姿と知恵をたくさん学びました。
また中心テーマのひとつとして、大理石の採石場をはじめ、まちを形成する「石」についてや、あちこちで開催されている市場と人々の暮らしなど、多くの事を学ぶことができました。

今後、この体験をふ印ラボ藤原惠洋研究室が各地で展開しているフィールドワークやワークショップの現場を通し、様々な場面で生かしていきたいと思います。

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