建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
平成25年8月25日(日)〜26日(月)に掛けて、創造都市として名高い金沢市中心部への踏査に向かって来ました。

主な行程は次のとおり

金沢21世紀美術館
玉川図書館
長町武家屋敷跡
にし茶屋街
室生犀星詩碑
尾山神社
近江町市場
金沢アートグミ
ひがし茶屋街
金沢市民芸術村

さて、利賀インターゼミを終え一路金沢へ移動した私達、翌日月曜日は閉館ということで、まずは金沢21世紀美術館へ。

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言わずと知れた金沢21世紀美術館、この日も噂通りたくさんの人々で賑わいを見せています。

今回はこちらの特別展を鑑賞

内蔵感覚 遠クテ近イ生ノ声
フィオナ・タン
イザベル・アキリザン アルフレド・アキリザン 住む:プロジェクトーもうひとつの国

一方、有料の展示に限らず、かなりの部分を無料で楽しめるのもこちらの特徴です。

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例えばこちら、「スイミングプール」というレアンドロ・エルリッヒの作品。何だかみんな覗き込んでいますね。実は、プールの地下に潜り込めるのですが、

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こんな具合です。

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下からの写真、まるで絵画のよう。

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他にも、こちらはジェームズ・タレルの「ブルー・プラネット・スカイ

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空って切り取れるんですね。小雨の降った後で、床が濡れています。

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ヤン・ファーブルの「雲を測る男」、雨上がりの空に美しく映えています。

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市内中心部、もともと公共施設の跡地に建てられた美術館は、周囲をぐるりと芝生で囲い、そのコンセプト通り開かれた公園のように機能しています。

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芝生の中に「カラー・アクティヴィティ・ハウス」というオラファー・エリアソンの作品が展示されていました。カラーフィルムのような半透明の構造物の内側に入ると、世界が染まってしまいます。

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渦巻きから抜け出しながら、タゴールの「With the colour of my own consciousness. The emerald became green, the ruby became red.」という一節を思い出してました。

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一夜明けて、

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まず向かったのは、こちらの玉川図書館です。こちらは、旧専売公社の建物(登録有形文化財)に、現代建築を融合する形で作られています。

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画面右側が、旧専売公社の建物、左側が新しい建物です。旧専売公社側は、近世資料館として利用されています。

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こちらが図書館側、一つの上の写真から画面左に振り向くとこうなっています。旧専売公社の煉瓦作りと上手く調和するように設計されています。

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当日は月曜日で閉館。残念ながら中には入れませんでしたが、内部の什器までデザインされているそうです。建設当時には珍しいことだったよう。

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続いては、長町武家屋敷跡一帯へ。途中、お洒落な外観の建物を発見。今回、金沢のあちこちにこのような場所を見つけました。

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こちらも何だか気になる・・・。

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本屋さんでした。(一つの上の写真右側、左側はパン屋さん)

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一帯には、風情溢れ、加賀百万石の威風を湛えた町並みが広がります。これらは、加賀八家と呼ばれる禄高数万石という大名クラスの屋敷群を中心に、大小の武士階級によって形作られていました。

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途中見つけた金沢市足軽資料館、足軽は武士階級の最下層に位置付けられていますが、こちらではその生活の様子を垣間みることが出来ます。

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入って驚いたのは、所謂庭付き一戸建て、50坪〜70坪程度の屋敷を構えていたことです。加賀の強大さを示す遺構ですね。

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また、町並みの保存に対して、非常に丁寧な仕事がなされているようでした。こちらは下見板の壁ですが、斜めに貼られる板に合わせて、カッチリ組まれる様にギザギザの刻みが入れられています。とても手間が掛かるとのこと。簓子板張りと言うそうですね。

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非常に美しい石組。戸室石というものを用いているようです。壁は黄土を用いたものが多く、華美過ぎず、また威圧するわけでもない、ゆったりと落ち着いた町並みを作り出していました。

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立派な門と松、これで平士級とのこと。驚きです。

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町並みの多くが登録有形文化財で構成されていました。そこかしこでこちらのプレートを見ることが出来ます。しかし、例えば一つの上の写真のお宅は現在も居住されているようで、所有者と協力して行く為のどんな仕組みがあるのかも気になるところ。

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古い町並みの中で、溶け込む様にお店が営業しています。

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こちらはレンタサイクル、移動距離がかなりになりそうだったので、町中各所に設置されている「まちのり」という公共レンタサイクルを借りることに。

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これで快適に移動出来ます。(ただ、こちらは旅行者にはちょっと表記が分かり辛いところもあったので改善を求めたいところ、特に1回30分以内と追加料金の点)

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犀川を渡って、

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にし茶屋街に到着。

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この建物は検番、にし茶屋街にはいまも数十人の芸妓の方々が活動されているそうです。

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こちらは金沢市西茶屋資料館2階、茶屋の様子が再現されています。長押が巻かれ、真っ赤な弁柄で塗られた壁、琵琶床と、ここがもてなしの空間であることが建築の意匠によって表されています。

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にし茶屋街を出て、ちょっとぶらり。

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純喫茶、未完成。コーヒ、未完成。

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犀川沿い、木造4階建てだ!

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階段アパート。

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そんなこんなで、やって来たのがこちら「尾山神社」しかし、私達の目的は神社本体ではなくて、こちらの神門です。どうでしょうか、何か変ではありませんか?

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裏側。

実はこの神門、所謂「擬洋風」建築とされるものです。明治の頃、日本の職人達がまだ少ない西洋建築の情報をもとに、洋風と和風を融合させて生まれた建築。藤原照信著「日本の近代建築(上)」p137にも紹介されていたこちらの神門ですが、それによるとこれを建てた大工の津田吉之助は、後に発明家となって津田式紡績機で成功したのこと。かつて日本海に向かって、まるで灯台のように立っていたというこちらの門、明治の職人達の進取果敢な心意気を今も照らしているようです。

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金沢の台所、近江町市場の活気を抜けて、

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辿り着いたのが、こちらの北國銀行武蔵ヶ辻支店。ただならぬ佇まいですが、それもそのはず、こちらは建築家村野藤吾の設計、かつての加能合同銀行の本店でした。

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こちらに来たのは、建築もさることながら、最上階に入居している金沢アートグミを訪れる為。こちらは、同名のNPO法人が運営するアートスペースで、ギャラリーの他、様々なイベント、中間支援活動が展開されています。訪れた際は「20億年光年の孤独」展が行われていました。

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裏側から。

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天井。

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重厚な階段。

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「味噌」「塩酢」「醤油」

打って変わって、金沢アートグミを出た私達は、ひがし茶屋街へと向かいました。こちらは、にし茶屋街、今回は向かえませんでしたが主計町茶屋街と並んで、伝統的な金沢の町並みを構成する名所です。町並みの中で目立っていたのがこちらの暖簾、大胆な筆書きと真っ白な地の組み合わせが、潔良くて格好が良いですね。

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現在、大きな賑わいを見せるこのひがし茶屋街ですが、30年程前は寂れてしまっていたそうです。しかし、それが今やこのように、

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伝統的な町並み保存の努力が報われているようです。

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金箔が有名な金沢、金の蔵までありました!

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卯建もあがっています。

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一歩入った路地裏。

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金沢夢二

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ジョン・

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設えがあんまり小気味良いので入った乾物屋さん。思わず、お土産にふぐの乾物を頂きました。

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このような行灯が各所に設置されています。夜に来てみたいな。

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こちらは、温水を出す噴出口、流石雪国でした。一度冬にも訪れてみたい。

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最後に向かったのがこちら「金沢市民芸術村」です。こちらは、かつての紡績会社の倉庫群の一部を残し、市民の文化芸術活動の場として設置された公共施設です。

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残暑厳しい折、子ども達は、公演内の水場をプール代わりに。でも実はここ、舞台の一部。

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この金沢市民芸術村は、PIT1〜5まで、ドラマや、ミュージック、アート工房といった創作活動が可能なスペースがあり、スタジオや、各種の設備(楽器、音響等)を備えています。そして、2大特徴とも言える24時間年中無休低料金、そして公共文化施設で初めて市民ディレクター制度を取り入れています。

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こちらは、PIT4ミュージック工房の様子。中にはさらには独立した複数のスタジオがあって、この日もバンドの練習などが行われていました。

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建築物も、旧来の紡績工場の遺構に、新しい建築を上手く調和させる形で作られています。

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こちらは「パフォーミングスクエア」、大人数の芸術活動のサポートを可能とする施設、至れり尽くせりです。

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このような情報スペースも設置されていました。インターネット全盛の現代でも、集約的に情報を得るのは思った以上に困難です。また、どのような情報を組み合わせて置くか、また取得するかが大切になります。

ところで、伺った当日は、ちょうどディレクター会議が行われていました。熱心な議論が行われている側で、突然の訪問にも関わらず、職員の方に実に丁寧な説明を頂くことが出来ました。

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実はこの芸術村、隣には金沢職人大学校という金沢の職人の人材育成を図る施設が併設しています。この日も、芸術村と共有されているスペースで、石に蚤を入れる職人達の姿がありました。

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さてさて、随分と長くなってしまいましたが、富山県利賀から金沢へ向かった今回の旅は、私自身にとって大変得るものが多い旅となりました。次回インターゼミをはじめ、来年も是非金沢へも向かいたいと思います。

最後に、こちらは帰り際に立ち寄った「安宅の関」から見た日本海の夕陽。勧進帳では、源義経、武蔵坊弁慶、そして富樫泰家の3人が、時代のうねりの中に人間性の光を見せてくれますが、こちらの旅もちょうど3人。旅は道連れ、世は情け、ご同行頂いた藤原先生、相愛大学の砂田先生に深く感謝致します。

佐藤 忠文

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