建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
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 みなさんこんにちは。今回の藤原先生の対談相手は山下和貴さん。株式会社サンワハイテックの社長です。まず初めに喜ばしいニュースから。サンワハイテックのSTAViという製品が3月8日熊本県工業大賞を獲得しました。以下がそのSTAViと大賞受賞理由です。STAViはstanding vehicleからきているとのことでした。
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 熊本県工業大賞
<株式会社サンワハイテック> 様
受賞内容:「次世代型高齢者用パーソナルモビリティの開発」
受賞概要:
文化施設、商業施設、娯楽施設において乗車するパーソナルモビリティを来る高齢化社会に向けて開発したもの。
ブランド名:F-CITE、商品名:STAVi。特徴は①近未来的なデザインを持ち、年寄りくさくない。②後ろから楽に乗り込める、③昇降するシートによって歩いているときと同等の目線が得られることである。
足の衰えがあっても若い頃と同じような活動ができ、生活の質(QOL)の維持、向上に貢献するものである。
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このstaviはスマートフォンでの遠隔操作が可能とのことです。
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  今更ながらですが、菊池まちづくり道場の開催主意とは「世代間のコミュニケーションを図り、相互に支え合うための交流のきっかけ(=場)づくり」です。今回の対談相手の山下さんも、<人>と<場>づくりを考えている方でした。
 始めに、藤原先生から、山下さんへの質問が3つありました。

(質問1)ものづくりで起業した山下さんが、人づくり、まちづくりといった包括的なものに力を入れているのはなぜか?

(質問2)山下さんのいう<技術は人にあり>という考えは、1968年開校した九州芸術工科大学初代学長:小池新二の言った<技術の人間化>と重なるがこれについて尋ねたい。
質問3)泗水の人は菊池をどうみているのか?

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 (↑会場のレトロ館に集まった皆さん、熱心な聴衆者です)
 まず、山下さんの生い立ちと会社創業への道のりがビデオやお話から紹介されました。
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両親が満州から引き上げて来て、花房飛行跡地に入植。元は畑だったが、戦争中は砂利を入れて飛行場としていた。戦後それを元に戻したものの、飛行場として使われていたし、台地なので米ができない。実家は酪農をしていたが、貧しい暮らしだった。「貧乏から抜け出したい。自分の人生を自分で築いていきたい。都会に出て違う人生を歩みたい。」という気持ちから熊本を出たとのことでした。
川崎に8年程いて、技術者として技術を磨き、新工場立ち上げにかかわった後、樹芸農家を営む父の事故を機に帰郷。地場企業の半導体工場設立に参画。91年有限会社サンワハイテックを設立。「技術は人にあり。お客様へは誠実さで対応。あの人に頼んだんだから大丈夫だという【信頼を裏切らない、ごまかさない】姿勢を貫いている。」とのことでした。
 会社は、始めに物がある会社ではなく、依頼主から求められて初めて、物を作り上げるやり方で、求められることは、姿・形・機能はもちろん、価格もある。依頼主はどこの会社に依頼するのがいいのか吟味したうえで依頼してくる。<サンワハイテックだから依頼したい>とくる。そう考えると、仕事の一つ一つが真剣勝負である。そして、「技術を通じてお客様とつながることができる」という考えが山下さんの中には常にあるようで、これが、プラザ<場>の発想になっていくようです。「お客様とのかかわりがあって初めて提供するものがある。お客様と触れ合う場所:プラザがないと意志は伝わらない。」
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 私が個人的に最も心を打たれたのは、人員整理の話です。会場にあった『One hour』という冊子と併せながらみてみると、サンワハイテックのような半導体に関わる製造業は、浮き沈みが非常に激しく、対前年比が倍上がって、翌年には半分に下がるということを何度も経験しているそうです。好況期の受注量に対応する為に地域から広く人材を確保し、数年かけて技術者として育成するが、育て上げたら、今度は落ち込みから人員整理をしなければならないということを山下さんは経験なさっているそうです。半導体業界ではこのような人員整理は常識だったようですが、山下さんは<人は消耗品ではない>との考えから、育てた人材を解雇するのではなく、サンワの技術力として異業種や他社工場に提供するという技術サービスをしているとのことでした。
 -都合が悪くなったから解雇なんてことがまかり通る世の中ですが、人を解雇せずに会社を運営していく方法ってあるんですね。それはきっと、山下さんが従業員を解雇したくない、彼らの生活・人生を守りたいという強い思いがあったからこそできた方法だったと思います。そして、それは、満州から引きあげてきた両親を見、貧乏だった少年時代を過ごし、自ら都会に出て苦労したというのが根源にあるように思います。苦労した人間だからこそ出てくる人間愛といえばいいでしょうか。

山下さんが<人>の他に心に留めているものが、<場所>のようです。会社が地域の中に溶け込んで自分たちを受けてとめてくれるか、どこに軸足を置くのか明確にしなければならないということでした。上記冊子には、「サンワハイテックは、製品・技術を海外に移転するのではなく、菊池に軸足を置いて勝負したい、そのためには、①何ができるか ②進出すべき分野はどこか ③地域・社会のなかで果たすべき役割は何か、をとことんまで掘り下げる必要がある」と書かれておりました。この考え方は、企業のみならず、研究をする者にも通用する考え方かと思います。
 そのうえで山下さんは、世界の需要にこたえるためにどのような道筋が可能かを決める。何処にいて、未来を支えるために何を提供するのか、どのような市場にするのかを事業の柱にしていくとのお話でした。
 この他にTQCのお話もありました。TQC(TotalQualityControl)とは、統合的品質管理のことで、主に工場などの製造部門に対して適用された品質管理の手法に加え、製造部門以外(設計、購買、営業、マーケティング、アフターサービス等に適用し、体系化したもの。山下さんは
、「小集団のリーダーを集めてその人達を向上させる。毎週1回リーダーを集めて検討会をする。リーダーはそれを自らの集団に持ち帰り、問題を解決する。」ということをしたそうです。
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 もう一つ疑問。なぜ、元は半導体の会社が、上記にあるSTAViのような室内用電動カートをつくったのか?
(↓は サンワハイテックの事業内容)
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 山下さんからは、「メーカー気取りでいたが、やってることは全て委託受注じゃないか。自分たちで商品づくりできていない。世の中の景気がどうなるか少しだけ先読みして防波堤にするだけである。それではいつまでたったも同じことの繰り返し。自前の商品づくりが必要だ。シリコンバレーでケアハウスのオーナーが、トイレとお風呂と移動に困っていた。ベッドではパラマウントといった企業にに勝てない。そこで自前の製品として、STAViを開発した。3年前のことである。人を預かって事業をするのがつらかった。」というお話を聞くことができました。ぐっとくる内容でした。
 この後、STAViがテレビ番組で紹介された時の映像が流されました。キーワードは3つ「目線」「スマートフォン」「衝突防止機能」。目線は、STAViのサドルの部分が上がってSTAVi利用者と周りの人や環境との目線が合うこと、スマートフォンは、スマートフォンで遠隔操作ができること、そして、衝突防止機能は、STAViが人やモノや壁にぶつかりそうになると自らで速度を押さえ、自動的に停まる機能を持っているということでした。ビデオでは山下さんに直進してきたSTAViが、山下さんにぶつからず、とまったところ↓が映し出されました。オヨッ。
現在は受注生産で1台85万円ですが、量産されるともう少し安くなるのかと思います。
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 最後に菊地市民ひろばへの山下さんの取り組みについて。
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山下さんは市民ひろばWS参加者で、その後協議会メンバーになりました。個人的に、私、岩井と山下さんとの出会いは、この市民ひろばWSで偶然同じテーブルになったことでした。私はオープンスペースの考えを持っていたので、“打ち出の小槌”案の山下さんとは、全く合わないと思っておりました。でも、菊池市民ひろばWSや協議会その他を通じてお会いするうち、山下さんは低俗な考えの持ち主ではないことがよくわかりました。それは、STAViの開発をみれば一目瞭然です。加えて、本日のお話でさらにそのことがはっきりしました。山下さんは、赤字の地方が自立する、自主財源をつくるには、①企業誘致 ②菊池在住者が外にモノやサービスを売っていく(ブランド推進)③観光 の3つしかないと言ってます。交流人口を図るのが観光。移住人口はいかに住みやすい環境かということで、移住人口に比重が大きくなると新たなものが入らない。移住人口と交流人口のマッチングができるのが市民広場。あそこに行けば何か面白いものがあるとなれば、交流人口が増えるというのが山下さんの市民ひろばに関する考えでした。藤原先生の表現を借りると、打ち出の小づちとは、<循環するエネルギー>ということでした。
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 今回のまちづくり道場を見て、<人はなんで働くのか>という根源的な問いへの応えを教えてもらったように思います。勉強になりました。

                                      岩 井



 

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