建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

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昨年度は建築家として多忙を極めた中村享一先生が、4月から復学されることと
なりました。研究室はより一層、産業遺産・炭鉱遺産・世界遺産への知見を高める
年になると思います。軍艦島研究会では中村先生の最新知見をご紹介いただきます。


中村先生が軍艦島に持っている一番の関心は、どうして長崎県端島という、都心
ではなく地方において日本で最初の鉄筋金クリート集合住宅が建てられたのか、
ということでした。ひいては、日本はどのような経過を経て、近代というシステムに
組み込まれたのか、その中で建築や都市は、どのような役割を果たしたのか。
そのようなことを浮彫りにするにあたって、最適なテーマであると言えます。




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端島の自然災害環境と財務経営環境

三菱は企業としての経営が先んじて行われ、炭鉱業を企業化した最初の財閥。
端島・高島の石炭は燃料としても良質であり海外船においても良質なものとして
重宝されていた。 三菱は東京丸の内の敷地を購入するにあったって、資金の半分
以上を鉱山による利潤によって手に入れた。 しかしながら、明治37年の日露戦争時
経営が悪化すると同時に坑道が深くなり、運炭費がかさみ経営が悪化してゆく。



白石直治 
三菱のドライドッグを制作。地元にある素材と技術をもって作り、あまかわのような
工法を取り入れていた。材料の配合をパーツごと代え、ローコストを心がけている。
ドッグに大量のセメントを用いていると同時に、横浜・神戸・長崎の周辺には
鉄筋コンクリートの倉庫群が三菱の関係により建てられていた。倉庫を建設する
技術を通して、鉄筋の研究を試みていたと考える。



1890年頃
日本軍にはコンクリート・セメント・石灰を研究する部門が存在した。
三菱がドックの建設を真剣に考え始め、白石直治は軍の研究部門から三菱に入り
鉄筋コンクリート開発に注力していく。


1905年-

三菱ではモルタルの研究と発表を行っていた。1900年代のはじめから三菱・長崎
には様々な技術が蓄積していた。


1907年ー

三菱の労働状況は働き手が減少し、炭鉱は良いところだという吹聴で人員を募集、
賭博を奨励して前借りをさせている側面も持っていた。機械化、産業効率化は
小手先でなんとかしのごうとしていた。坑夫は労働環境への不満が爆発し
労働争議がたびたび起こるような状況であった。

福利厚生を徐々に充実させ、折衷をぎりぎりのところで保っていた。



1908年ー

曽根達三は、三菱合資会社唐津支店本館を建築した頃、ある講演で「鉄筋コンク
リートは今後作れないものはないという程、様々な用いられ方をするだとう」と
述べている。


1913年ー 日下部健太郎就任

残柱式であった高島炭鉱を半分以上が運炭費であり、採掘費用を越えていた。

日下部はニューヨークやシカゴで高層建築を沢山見て帰ったので、ここに考えが
及びコンクリートで高層建築を端島に建てることを意図した。

また日下部は明治政府が宗教を保護利用しなかったことを懸念し、宗教によって住民
の意識をまとめることにも注目する。



三菱の技術者は曽禰達蔵、保岡勝也などが筆頭とされる。端島の12号棟、13号棟は
鉄筋コンクリート造という意見の論文もあるが、鉄筋を組んでいない。柱はL型の
もので補強しているのみである。30号棟社宅は2階ずつ仕上げ、坑夫を住まわせて
さらに2階を積み上げ、最終的には9階まで建設していた。建造が1910年代まで続く
とから、この技術が後の三菱の構築物に影響を与えていたのではないかと考える。


30号棟が近代建築である、ということがまだまだ言われていないのではないか。
イタリアで未来派達の手により描かれた都市が極めて近い形で具現化したもの
であるということを指している。それは新しい産業が入り、産業と住居がともに
あったことであり、三菱は、本格的に近代産業・資本主義を経営・技術・海外
マーケットにターゲットを当ててきた第一の企業である。三菱の中にはフランス
イギリス・アメリカの技術が入り込んでおり、長崎の中にそのような技術も
入っていった。
それゆえ、明治末期と大正時代では端島はまったく違う風貌を見せるようになる。

避難通路、防護なども含めたインフラが充実した、近代産業都市として鉄筋コンク
リート造が端島に建てられた。


 

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質疑応答から生まれた疑問・課題点


・明治34年に三井三池が本格的に採炭を始める。第二次世界大戦まで、日清・
 日露戦争の影響は端島に随分と影響を与えているはずである。

 三菱という資本がどういう利潤を生み出していたのか?


・肥前の白石藩は下浦石工を18世紀半ばに指導していた。なぜ備前(岡山)
 の石工が携わっているのか。 石工はの技術は秘伝であって、あちらこちら
 殿様に雇われ技術を明らかにするようなものではないのではないか?


・かなり詳細なデータが集まっており、建築の宿命とも言える経済性と密接な
 背景を明らかにしながら30号棟の出現の必然性を明らかにしようとしている。
 膨大なデータをシンプルに、着地点まで持って行く方向性が問われる。





中村先生の一番の興味は、日本全体の社会改革をしなくとも、三菱の手によって
端島に30号棟という優れた近代建築が建てられた背景とのことでした。
経済や資本と技術の関係を解き明かすために、端島は最適な素材であると言える
でしょう。適切な技術の発露としての空間は、これまで日本社会において
実現してきたとは言い難いでしょう。



三菱の建築家達は、自己表現を全面に出した建築ではなく、中途半端に即席に
作って世の中に出す建築ではなく、資本や資金というものを大きな評価軸に
しながらも、安価な材料を最大限に使うための技術を磨きあげてきました。

そのような歴史が日本の近代化を支え作ってきたことを翻って、私達の経済社会、
資本、建築はどうでしょう。そのようなことを考えさせられるひとときでした。



D3 國盛 


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