建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

天草・高浜フィールドワーク+リデザインワークショップ

東京大報告会開催ご挨拶

〜東シナ海を望む天草西海岸の「夢が高まる浜」へのご招待〜

 

 唐突かもしれませんが、ご参集いただいた方々のみならず、もっと多くの方々を東シナ海を望む天草西海岸の「夢が高まる浜」へご案内したいのです。天草までおいでいただきたい。高浜の地や白鶴浜を目の当たりに体験していただきたい。こうした高浜へのワープへの契機が、今日のこのひとときの中で生まれることを期待してやみません。
 

 2011〜12天草・高浜フィールドワーク+リデザインワークショップの成果に関します東京(大!)報告会を開催するにあたり、この二年間にわたるフィールドワークを通したユニークな地域づくり活動に全国各地から参加してくださった多士済々のみなさま、そして私たちを受け入れてくださった天草市天草町高浜地区の住民のみなさま、ご支援いただきました天草市天草支所のみなさまと高浜地区振興会のみなさま、そして天草出身のデザイナー若杉浩一さんをはじめとする内田洋行の関係各位のみなさま、そして拙い報告会を聞きにお集りいただきました善意溢れるみなさまがたに心より感謝いたします。
 

 もとより九州大学大学院芸術工学研究院でデザインを教え学ぶ私たちは、ある日突然、東シナ海に面した天草西海岸の景勝地でもある高浜地区と邂逅しました。そして閑静なたたずまいの集落を地図も持たずに巡りながら歩くことで、どこかでこの空気を肌にしたことがあるような、どこかでこの日射しの匂いをかいだことがあるような、ゆっくりと心の奥底から泡ぶくのように涌き出て来る懐かしい気持ちを感じるようになっていたのです。

 2011年2月5日に開催された高浜地区振興会主催の「高浜の懐かしい未来へ 〜地区の将来を考えるまち歩きとシンポジウム」に偶々、パネラーとしてお招きされたことが最初の機縁で、私は高浜から不思議に感じるこの懐かしさの源を訪ねたい、そしてこの気持ちをもっと若い学生諸君や大学院生諸君と分かち合いたいと考えるようになりました。そこで編み出した調査研究企画が表記の天草・高浜フィールドワーク+リデザインワークショップです。
 

 そこから2011年7月、そして続く2012年7月、2年間にわたり2泊3日のプログラムでのデザインサーベイ(参加型踏査事業)を展開しました。初年度は私が開講する「芸術文化環境論」学外演習として、2年度目はさらに九州大学社会連携事業として採択されたため、学生大学院生の授業や演習を通しての参加もより広がってきました。さらには内田洋行やJR九州、サムソンジャパンといった企業のデザイナーや技術者の方々が、みずからの社会的役割やミッション(社会的使命)を再考するいっかんとして、さらにはインターンシップや社会貢献プログラムのいっかんとして参加してくださいました。
 

 実施プログラムはいたってシンプルです。各地から集った興味津々たる調査者たちが介在者や他者として高浜をじいっと見つめながら、地域の資源とも言える魅力を振り返ると同時に地域づくりの課題や問題を冷静に見つけ出していきます。そしてこうした視線に晒される高浜の住民の方々は、いつもとはやや異なった態度や感情で高浜をきちんと伝えて行くために、みずからの足下を見つめかえすこととなるのです。高浜の風土の総体の中に蓄積されて来た場所と空間と景観の魅力や不思議さが、さらには伝承や記憶や生業(なりわい)といったヒトとコトにまつわる有形無形の出来事が、こうした当事者の存在と他者なる介在者の相互作用を経て、じわりじわりとあぶりだされてくるのです。観察や調査といった私たちの介在は、高浜の住民の方々にとって厄介な視線かもしれませんが、いつもとは異なる仕業のために日頃語られることもなかった記憶や体験や伝承が、この相互作用の中では大きな価値を意義を発揮することとなっていきます。ささやかな土地と個人の物語が、一挙に「公共」の資産や財産として力を発揮するようになっていくのです。
 

 2011年3月11日に東日本を襲ったカタストロフィー(大災害)に対する巨大な復興事業が営々と展開しつつある一方、全国に1700余もあるまちやむらには、すでに限界集落とも称され、長年培われて来た物語の文脈を断ち、後継者を喪った悲しい里が続出していると聞きます。見えにくいために危機意識すら共有されず周知されないまま、きわめて不可避な緩やかな崩壊過程がわが国全体を浸食しつつあるのです。ややもすれば、私たちが邂逅したこの高浜の地ですら、いつかこうした喪失の危機に晒されないとも限らないのです。言葉にできないまま、どこか私たちが茫漠と感じてきた懐かしさは、ある意味で緩やかな崩壊の危機を警鐘する風土からの叫びかもしれません。私が呼びかけ、全国各地からこの高浜に集うこととなった参加者は、少なくともこうした警鐘に耳を傾けることのできる感性と意識に恵まれた仲間達であったと信じています。

 そして私たちは、あの夏の日にささやかな高浜での活動からいったい何を得たのだろうか、参加者と受け入者とが久しぶりに出会い直す中、こうした活動の意義と普遍的な価値をもう一度きちんと確認しあうために東京で集うこととしました。
 

 ではなぜ、東京なのか。むろん今回の発表会は東京開催でなくても良かったのです。しかしながら、わが国の4分の1とも言える巨大な人口が首都圏に集約され、経済産業活動や文化創造活動の強大な影響が首都圏から地方社会に順次波及していくという中心=地方の悲しい格差の実態を考えるなら、地域性(ローカリティ)に内包される普遍的な価値や意義を丁寧に見つけ出しながら、中心に対して提示していくことが地方再生プログラムにおける初動期の有効な手法ではないかと構想したのです。

 だからこそこの場には高浜の住民の方々の参加が欠かせません。今回は、住民を代表するかたちで高浜地区振興会のみなさまに要請をいたしました。その結果、大里集会長さんをはじめとする6名のメンバーが相互に名乗りをあげていただき、懐かしいふるさとの薫りをふんだんに持ち込んでくださることとなりました。こうしたご尽力に対して衷心より感謝いたします。
 

 そして、私たちは今日お集いになされたみなさまを次の機会には必ずや東シナ海を望む天草西海岸の「夢が高まる浜」へご案内したいとお約束いたします。そして高浜で再会できることを心から期待しております。

 

 最後になりましたが、2012年度九州大学社会連携事業として本事業を推進することができましたことを九州大学に対して心より謝意を申し上げます。

 

                   平成25年2月21日(木)

 

  九州大学大学院芸術工学研究院 教授・工学博士

               環境・遺産デザイン部門部門長 

    高浜フィールドワーク+リデザインワークショップ主催者 オルガナイザー 藤原 惠洋






高浜報告会案内チラシ
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