建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

IMG_5024
 
IMG_1342
IMG_7458

後期も公開講座が始まりました。先生はこれまでに工業デザインなどの授業を
持ったことがあるそうです。地域社会に隠れているデザイン、デザインへの
隠れたニーズなど広義のデザインを見つめたとき、建築もその一つとして含むことが
できるでしょう。今期は赤煉瓦と鉄筋コンクリート造に特化して、建築の近代を見
つめてゆきたいと思います。


九州は幕末明示以降、わが国の近代化を資源的・技術的、人材的な側面から生み
出した創出、創業の地として重要な意味を持っています。一方文化財や文化多様性
への社会的関心が有形文化財や建造物を対象とした旧来の文化財に加え遺産や文化
資源への関心を高めつつあります。


背景には(1)文化多様性への市民社会の関心醸成、(2)無形文化財の価値認識
(3)文化資源概念の台頭(4)世界遺産制度における無形文化財への関心醸成の
影響(5)観光ツーリズムの対象化(6)まちづくりソースとしての価値の顕在化
が挙げられます。


本講座では九州各地に残された遺産を対象として、とくに赤煉瓦とRCを通して
土木と建築の近代化過程を知っていき、そこから地域固有の遺産としての文化財・
文化資源の評価と活用の妥当性を総合的に習得していきます。

東京駅のリニューアル、門司港駅の改修などタイムリーな現場との時流も重なって、
今期はとても興味深い講義となりそうです。門司港駅舎は半解体の工事現場と
なっており、下関の英国領事館なども併せて見学するツアーも含まれています。


開催日時 

1回目 10/2 ガイダンス 赤煉瓦とRCの近代

2回目 10/23 赤煉瓦の時代

3回目 10/30  RCの台頭

4回目 11/4 門司港、下関における赤煉瓦VS RC 

5回目 11/20 技術、材料、構法における近代化

6回目 11/27 意匠、表現、設計における近代化

7回目 12/11 明治19年 佐世保海軍工廠の近代

8回目 12/15-16 修学旅行形式にて 佐世保海軍工廠の遺産を訪ねて


藤原先生は建築・都市・生活の相互作用に注目しながら、明治・大正・昭和の
近代化過程を検証する実証的歴史研究者です。一方で。緩やかな市民参加を促し
ながら展開する地域固有資源・文化資源を生かしたまちづくり、地域づくりの実践的
指導には定評があります。

かつて先生がスライドで撮影された貴重な資料も公開されました。

IMG_0479

長崎 小菅
IMG_2713
IMG_2945
IMG_3268
 

ペリーが来航し開港を迫ったとき、アメリカは各所にドッグを作りました。

江戸時代の築城技術を用いて作られたドッグの近隣には、長崎独自の方法で作られた
巻き上げ機も映し出されます。明治期の煉瓦は、幅が21cm~24cmだったのですが
この巻き上げ機はじめ、この頃の長崎の煉瓦は厚さ4ー4.5cm、幅18cmー19cmの
ものでした。村松貞次郎先生はこれを「コンニャク煉瓦」と名付けます。



北海道 函館北海道函館も煉瓦造の建築のよい事例です。茂辺地の煉瓦産出地や、近隣に

立てられた煉瓦造の建築など地域の関係性が明確に分かることが特徴的です。


 

兵庫 神戸 
IMG_6019
IMG_6250

 

英国人のウィリアムハートは上海で設計技師を行っていました。道路下に新しい
下水を設置する際、技師が神戸に初めて呼ばれて設置した煉瓦造の下水道が残って
いたこともあります。

上・中・下と、側面のどこに使うか刻印された煉瓦で作られていたそうです。

神戸市の工事担当者にお願いし、この下水の一部を保存してもらったとのことでした。


兵庫 布引
IMG_5922
 

布引ダムで明治30年代に建築されたコンクリート造の橋 江戸時代以来の石造と
コンクリートの桟橋


福岡県 大牟田

福岡県大牟田市、炭鉱町には三井三池製作所がありました。その建築群の調査依頼
を受けて、学生や東大の後輩を引き連れて調査に至り、夜な夜な図面を起こして
いたそうです。

三池集治監や三井三池製作所の煉瓦は梅のマークが刻印されており、囚人などが
近辺の煉瓦工場で煉瓦を焼いていた背景があります。
IMG_1826

IMG_9893
 

IMG_9895


質疑応答

受講生:土木の分野がとても面白かったのですが、建築との流れはどのような関係があるの
でしょうか?


藤原先生:明治の鉄筋コンクリートは明治30年代~始まりますが、当時は液体が
固体となり生活空間として身を預けることに抵抗があったそうです。20年間かけて
木造建築との調和を計りながら、少しずつRCとして独立してゆきます。


受講生:布引ダムは100年以上経っていますが、現存しています。中に鉄筋が
入っていないということですか?


藤原先生:いいえ、布引ダムは当時国家プロジェクトとして施行されたもので
とても丁寧な作りをしており鉄筋も入っています。昔の作りはとても丁寧で、
今よりも優れているかもしれません。


受講生:煉瓦は明治期、外国から輸入していたと聞きますが、紹介された建築は
輸入された煉瓦のものではないのですか?


藤原先生:明治20年代から国内生産の煉瓦が流通しています。東京の深谷に、
渋沢栄一が煉瓦工場を作り、辰野金吾の建築は品川煉瓦がよく使われています。
幕末、長崎のグラバーなどに関連する建築が建てられたときは海外から煉瓦が
届いていました。建築用ではなく、船にバランスを持たせるためにバランサー
として運んでいたそうです。当時は鉄の箱の中の中に煉瓦が詰められそれを
バランサーとしていました。ブリック(煉瓦)のことを、日本人が鉄製の壁と
勘違いし、私たちは鉄をブリキ、と呼ぶようになった?という逸話もあります。
当時は煉瓦を鉄道で運ぶよりも、船で運んだ方が経済的でした。土が良いこと
瓦を焼いていたなど技術があること、海運ルートがあることなどが煉瓦工場の
設置条件になります。



後期も初回から専門知識満載の公開講座。貴重な実物資料やスライド、現地
フィールドワークなど、今後も展開が楽しみです。

D3 國盛 









Add Comments

名前
 
  絵文字
 
 
プロフィール

藍蟹堂

藍蟹堂。感受性は海の底から波濤や世界の波瀾万丈を見上げる蟹そのもの。では蟹とは?

『日田ラボ』 最新記事
『きくけん』 最新記事
カテゴリ別アーカイブ
月別アーカイブ
記事検索
ギャラリー
  • アルティザン・トーク【第19回】 2024年4月29日(月・祝)14:00〜16:00   語り手 平山貴之さん  とよくに農園代表 農業+哲学+アート 竹田市倉木在住
  • 20240416西日本新聞 古川努記者 「国史跡級」鉄道遺構遺物65点、よみがえる物流都市 4月16日から「初代門司駅発掘速報展」北九州市
  • 20240416西日本新聞 古川努記者 「国史跡級」鉄道遺構遺物65点、よみがえる物流都市 4月16日から「初代門司駅発掘速報展」北九州市
  • 20240416西日本新聞 古川努記者 「国史跡級」鉄道遺構遺物65点、よみがえる物流都市 4月16日から「初代門司駅発掘速報展」北九州市
  • 20240416西日本新聞 古川努記者 「国史跡級」鉄道遺構遺物65点、よみがえる物流都市 4月16日から「初代門司駅発掘速報展」北九州市
  • 20240416西日本新聞 古川努記者 「国史跡級」鉄道遺構遺物65点、よみがえる物流都市 4月16日から「初代門司駅発掘速報展」北九州市
  • 2024年4月15日(月)おかげさま農法のアルティザン平山貴之さんご夫妻「とよくに農園」今年の播種作業を取材!
  • 2024年4月15日(月)おかげさま農法のアルティザン平山貴之さんご夫妻「とよくに農園」今年の播種作業を取材!
  • 2024年4月15日(月)おかげさま農法のアルティザン平山貴之さんご夫妻「とよくに農園」今年の播種作業を取材!
  • 2024年4月15日(月)おかげさま農法のアルティザン平山貴之さんご夫妻「とよくに農園」今年の播種作業を取材!
  • 2024年4月15日(月)おかげさま農法のアルティザン平山貴之さんご夫妻「とよくに農園」今年の播種作業を取材!
  • 2024年4月15日(月)おかげさま農法のアルティザン平山貴之さんご夫妻「とよくに農園」今年の播種作業を取材!
  • 2024年4月15日(月)おかげさま農法のアルティザン平山貴之さんご夫妻「とよくに農園」今年の播種作業を取材!
  • 2024年4月15日(月)おかげさま農法のアルティザン平山貴之さんご夫妻「とよくに農園」今年の播種作業を取材!
  • 2024年4月15日(月)おかげさま農法のアルティザン平山貴之さんご夫妻「とよくに農園」今年の播種作業を取材!
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ