建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

2012.7.21 18:30-21:00 上通長崎書店3階にて

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くまもとアートナビが主催される、くまもとアートナビアガーデンに参加しました。
オフィスムジカの代表、西嶋公一氏のご案内で参加した公開ミーティングでは
「アートで食べていけるのか?」という主題で議論がされました。かつては倉庫だった場所をスペースとして活用した場所は、オルタナティヴな
かおりがします。集っている方々もアート、演劇、クラシック、まちづくり、
音楽関係者などで興味津々です。

 
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ゲストは植村純子さん 京都府生まれで劇団衛星プロデューサーを務め
られています。大学在学中
1995年に「劇団衛星」を立ち上げ
1999年に劇団運営と劇団員のマネージメントを開始。「有限会社如意
プロデュース」設立。劇団員はアルバイトなし、演劇で生計を立てているそうです。

ファシリテーターは劇作家の岸井大輔さん 演劇作品などを制作発表をされ
2008年よりplayworks主宰。2009年一般社団法人化を果たされました。

 
劇団衛星は法人を15年継続し、法人税も納めていらっしゃいます。岸井氏は
アートかまちづくり系での依頼が多いそうで、盆踊りを作ったりされたことも
あります。人の集まりそのものを演劇と捉え、まちづくりにも積極的に
ご活躍されています。

 

アートの市場化
アートが額縁に入ったのは、サラリーマンが買うようになったからです。
貴族、王族は額装する必要は必ずしもなく、壁画や天井画に描けばよかった
ものでした。しかし商売人の台頭、市民化によって額装された美術品が
出回るようになります。
 

 音楽においても、一時期王族ではなく市民に向けてオペラを書きだしました。
モーツァルトも市民向けに描き、魔笛は現在も公演回数は年間トップクラスで
上演されています。現在はお金の流れが変わってきている時代です。モーツアルト
のように、新しい芸術の形態を生み出すチャンスでもあるのです。

かつてはギャラリーに所属することがアーティストのステータスでした。
皮肉めいて「内装屋」「サーカス」と言われていました。新店舗に美術品を
飾ったり、巡回展をするようなフォーマットが固着してきていたからです。
けれども現在はアートプロジェクトをはじめとする様々な活動形態がされています。

では食べるためにはどういう方法があるでしょうか。


|もらう・寄付
日本のお寺は1000年以上寄付でもっていました。


|コミュニティ・村をつくる

シムハウス 渋谷駅徒歩7分の場所で男女シェアハウスをしています。
それぞれが異なる分野で活動しているので、シムハウスとしての仕事の依頼が
来るようになっています。無限にカレーを食べているので「無限カレー」
というものが
あるそうです。
1人への寄付金より、30人へのアートプロジェクトに寄付金がくる
という事例はよくあります。

 
|奪う 
税金→助成金 美術展巡回 もともと武士、幕府、政府は豪族といった
権力者でした。権力者から税をもらう—これは奪うものかもしれません。


|育てる
日本人は田植えに起源をもつとして、田中民さんの演劇は農業と演劇を
両立させています。

 |稼ぐ
アートは優秀な金融商品です。有名なアーティストはいくら不況であっても
確実なコレクターが存在すれば売却率は非常に高いものです。個人にせよ
団体にせよ、営業担当がいる、ということは強みでもあると思います。 


質問者:ダンサーをやっているのですが、営業担当は最初からいたのですか?

植村:法人団体となったときに、営業ということが区別してできるように
なってきました。法人としてしゃべる、ということが可能であるということです。
自分の中で定価を作るというのもありだと思います。 

岸井:組織になった場合、個人での活動に対する報酬とは規模が違ってきます。
組織のスタッフの報酬を確保するとなった場合、営業がいるとうまくマネジメント
できると思います。加えて謝礼の金額を上回る感動を提供できるのがアーティスト
だと思います。
 


岩井:熊本の方は演劇を受け入れているような印象で、その上に成り立って
いるような印象です。私は北海道美唄市ですが、限界集落ですし芸術というより
まず生活のインフラです。そのような劇場を受け入れられていない場合、
どのような対処をなさいますか?

 

岸井:僕は劇場を使わない場所で演劇を作っているのですが、そのような
場所でも仕事を作っています。お葬式や結婚式も僕は演劇だと考えています。
形式がある以上、誰かが作ったものです。死を受け入れたり、運命を受け入れる
という素晴らしい演劇です。お葬式、結婚式が必要ないという集落は少ないと
思います。餓死するような農村でも積立金の3分の
1はお祭りにつぎ込んでいる
という場所もありました。農村の昔の家では掛け軸を年に4回取り替えていました。
 


岩井:そのような場合、生業として継続させるにはどうすればよいでしょうか。


岸井:僕が3ヶ月滞在して仕事を作る理由はそこにあります。この地域の人
たちからお金をもらうにはどうすればよいだろう、と考えるところから始まります。


岩井:一瞬ではなくて、そこに住んでいる人としてマネジメントするには?


岸井:まず地域に必要なものを見つけ出し、気になることを選びます。
そのことを周辺に話し、同志を見つけ再び調査をします。するとより仲間が増え
プロジェクトが立ち上がり、地域からの賛同も得られるようになります。
 


西嶋:なぜこういったテーマにしたのですか?主催者の声は?


坂口:ステージガイド「ドコサ」を作っているのですが、アートで食べて
いけないというアーティストの方々の声を聞いてきました。けれども私は
裕福ではないですがアートで行きていけています。なので熊本でもアートで
食べていけるというのは可能性としてあるのではないかと思ってこのような
テーマにしました。私はアーティスト支えているサポーターのようなことで
あったり営業をやってもいるのですが、お手伝いをすることがライフであり
好きではないことは
jobとして行っています。

 
岸井:お客は演者にお金を払っているつもりですが、大半は場所代に使われて
いるのです。劇場を使わなくなった理由に、お客さんから預かったお金を
劇場に使うことをやめたかったことがあります。

 

河原町にてギャラリー アートの日を行っている黒田さん:
日々若手アーティストと出会う中で、表現者が受け身な印象を抱いた。
東京と違うところは速度や、制作数の数も違ってくるし必死さも伝わってこない。
人のせいにするのではなく、自分で活動することにもう一度目を向けてみる
ことが大切だと思い、このテーマを掲げてみました。
 


岸田:アーティストに必ずしも速度は必要ではなく、マイペースで活動することは
アーティストの魅力だと思っています。
 

黒田:時間厳守と、やるといったらやる、これは守ってほしいと思います。
ギャラリー9年目にしてお仕事として成り立つようになってきたと思います。
 


参加者:プロとアマの差は、草野球のように好きなときに好きなことをするのが
アマチュアで、外部からのオーダーにも応えていけるのがプロだと思います。


 
参加者:ペインターをしているのですが、都心と熊本での作家の在り方に
ついて考えたりしました。哲学者の池田あきこさんの意見ではプロはそれを
しなければ死んでしまう、それくらい熱中するのがプロだということだと聞きました。 


岸井:アートマネジメントの学科も増えてきて、ゼロから自立していた時代と
変わってきています。アートとクラフトの違いについては、現在この話は
難しくなっています。
2000年ころまでは、美術教育を受けてなければ
ハイアートを作ることができなかったことがあります。作品は作家性を
売りにしていて、クラフトはこの文脈にありませんでした。現在はネットの
普及によって発信することが容易になりました。現在は美大を出ている人の方が
古典的、というような作品の在り方が出ています。美大に通わなくても
美術教育を学び現代アートを作れる人がるのが現在です。


ハンナ=アーレントによると、芸術と食べる食べられるを切り離さなければ
なりません。食べることによると現在は食べられることが権力になっています。
そのような中でも食べていく、ということを考えることが今日のテーマですが
食べていくには覚悟をし、マイペースだけれどあらゆる手を使っていく
ということかもしれません。

 

ミーティング内容の結果にはやや不完全燃焼な思いがありましたが、西嶋さんや
岩井さんの質問や他の分野のアーティストの方の現状などを聞けた興味深い
時間となりました。くまもとステージ
&アートガイド「ドコサ?」を発行
されている坂口美由紀氏にもお会いすることができました。今後も熊本の
アートやまちづくりの現場にもっと足を踏み入れてみたくなりました。



D3 國盛 

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藍蟹堂

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