建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

東日本大震災のような大きなカタストロフィーに対して、アートは復興に
寄与することができるのでしょうか。受講生の中には「力にならない」
「アートをお金に換え、被災地を支援するべきだ」という意見もありました。
また「震災でなくなってしまった風景を、再びアートで創出できるのではないか」
という意見もありました。風景を創出するアートとは一体どういうことでしょうか。
 

人と人が恊働で何かを成すこと、その土壌をアートが提供すること。それらは
「アートプロジェクト」によってもたらすことのできる可能性かもしれません。


今日はゲスト講師に神戸芸術工科大学 准教授 谷口文保先生をお招きして
「地域社会に共創を誘発するアートプロジェクトの研究」について講義を
いただきました。

 

IMG_9322 

アートプロジェクトとは?

Art 名詞 ①芸術、美術 ②技術、技芸 ③人工、技巧
Project 語源 ラテン語で「前へ投げる」の意
名詞  ①計画、企画
動詞 ①映写する、投影する ②(光、音などを)投げかける、投げ出す、
放出する、発射する
④計画する、考案する ⑤(構想や考えを)向ける

 

アートプロジェクトは完成された作品のみに価値があるのではなく、恊働によって
行われれる行為、過程、プロセスそのものに価値があると言えます。
社会や地域をフィールドに行うアートプロジェクトによって、フィールドに
とっても波及効果をもたらすことができます。日本国内では
1990年代より興隆し
まちづくり、地域社会、福祉、学校教育など様々な場面でアートプロジェクトは
展開されています。

谷口先生は地域と連携したアートワークショップを多数開催してこられました。
その中でも2008年から継続している「えびすアートプロジェクト」は、
障害者とアートの関係が社会と結びつき、豊かなコミュニティを築くための
様々な人々との恊働によるプロジェクトです。


兵庫県たつの市堂本にある福祉事業所NPO法人えびすは、企業への就労が
困難な障害者が共に働く場です。

福祉事業所
NPO法人えびす [知的障害者の就労支援]
兵庫県たつの市 就労者19名 スタッフ6
福祉事業所とは?
・企業での就労が困難な障害者が共に働く場。
・障害者自立支援法によって、就労支援へ。

NPO法人えびす
http://love.ap.teacup.com/ebisu-yasai/ 

 


 知的障害者の就労支援であるえびすでは、手作りパンや「さをり織り」など
製品を作って販売しています。ここに、谷口先生のアートの力が加わります。
きっかけは、障害者の方が描いた絵がとても魅力的で、その原画を基に
アートを創出することを思いついたことでした。
神戸芸術工科大学のファッション学科と、障害者の表現があわさって、
エプロンができあがりました。
作品収益の20%は、NPO法人えびすに還元され、利用者に均等に
配分されます。障害者の社会参画が飛躍的に拡大する活動です。

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展覧会では原画と作品化したものを同時に展示

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IMG_6919 
障害者の方の原画 → 学生とのコラボレーションによる作品制作 →
デザイン学科学生がエプロンデザイン→工業高校とのコラボレーションにより
ファッションショーなどなど、地域の濃密な連携から新しい可能性が
どんどん広がります。

「みっくすさいだー」(柊伸江代表)というグループのご紹介もいただきました。
みっくすさいだーは、2006年に神戸芸術工科大学のファッションデザイン学科の
学生が、知的障害者の青年とのコラボレーションによって展開される
デザイングループです。障害者のNさんが描いた原画が、デザイン学生によって
魅力的なテキスタイルに変わり、企業とのコラボレーションも果たします。
障害者の方の誇りや自身が創出され、デザイン学生にとっても大変意義深い
機会となっています。


ピクチャ 4

Nさんの原画がみっくすさいだーによりテキスタイル(布地)へ! 
みっくすさいだー http://www.mixsider.com/index.html 

 

 

NPO法人えびす+神戸芸術工科大学の谷口研究室+みっくすさいだー
[知的障害者の描く絵画を基に服飾デザインを展開するデザインチーム]によって
福祉施設の存在がより社会化され、就労とは違う形で地域への参画が可能と
なりました。神戸ビエンナーレではアートバスも彼らにより制作され運行しました。

 

アーティストの勝手な構想によって地域が翻弄されることもあるなど、
現場では様々な問題も発生しています。アートプロジェクトは表現と交流の循環
(=共創)が、芸術創造と社会政策の成果に繋がります。一方、アートプロジェクトの
副作用も考慮し対処しなければ なりませんし、アートプロジェクトは
地域文化を創出していくきっかけに寄与しなくてなはなりません。


谷口先生の目標は「汎用性のあるアートプロジェクトの理論を構築し、
将来その普及によって、効果的な実践を容易にし、課題共有によって創造的な試みの
促進を目指す」ところにあります。また今後人々が既存のアートプロジェクトの
形式を超えたところに、新たな社会の可能性があるのではないか、と
おっしゃっていました。

 


「芸術はこれまで「ゼロ」から「お金では買えない」価値あるものをつくりだして
きたのだが、その想像作用の重心が、モノ(作品)を作りだすことから
むしろコト(関係)—人と人との関係、人とモノとの関係−を作り出すことの方に
移動して
きているのではないか。いま芸術は、新しい「関係性」を作り上げることから
成り立とうとしているのではないか。」
(加藤典洋「楕円の思考 越後妻有で
考えたこと
有用性から関係性へ「
3.11後」の新たな展開」
神戸新
2012426日朝刊より)




[D3 國盛] 

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