建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

2012年2月15日(水)〜2月17日(金)

全国劇場・音楽堂等アートマネジメント研修会2012

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藤原研、修士の北岡慶子です!ご報告が大変遅くなりましたが・・

今年も「全国劇場・音楽堂等アートマネジメント研修会」に参加して参りました。

全国の公立文化施設、いわゆる劇場、○○市民会館とか○○市民ホールと呼ばれる施設が所属する公立文化施設協会が主催となって、ホールで働く職員の為に毎年開催している研修会です。

 

2012年は「アートの力 明日への第一歩」というテーマの元、2011年3月11日の東日本大震災による劇場の被害や、その後展開された復興への文化芸術活動の状況等の報告が大きく扱われました。

昨年は「仮称劇場法」を中心とした議論がなされましたが、本年はテーマも雰囲気も一変した状態でした。

震災直後、日本全国が自粛モードになって、そして、今なお続く原発事故の影響から、多くの公演が中止・延期になったことは周知の通りです。また、今でも各劇場では節電が義務づけられ、実行されており、たとえばロビー等の照明を少なくするといった対策が続けられています。そんななか、この1年での各施設の現状と、これからの施設が求められる役割について提起をしていくような研修会となっていました。

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今回の研修会では専門ごとにコースが分化され、「企画・制作(企画立案編/マネジメント編)」「劇場経営」「ホール運営」「自治体職員」といった構成が取られ、その分野をより深く学んでもらおうという内容になっておりました。私は主に劇場経営コースと震災関連の講座に参加しました。

また、今年度は参加者が非常に多く定員オーバーとなって、お断りした職員の方もいたとのことです。どの講座会場も人があふれ、また活発な議論・意見交換が行われていたのが非常に印象的です。


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2月15日の「今日的政策課題Ⅱ災害復興とそのミッション」では、震災当時に総務大臣であった片山善博氏による報告がありました。

そこで、「ハード面の被害に目がいく。人々の被害、その後は物的な被害に次になってしまう。ソフトは二の次になってしまう」という事を言われました。

例えば、被災者の方の気持ちでも、生きていてよかったということで初めのころは明るいが、それは当座のことで、その後絶望していく。肉親が亡くなった方も多く、それはとてつもない心の痛みであり、同時に地域社会の崩壊でもあった。身の回りのものが全部なくなってしまう。そんな状態では絶望するしかなくなる。家が壊れても、銀行も貸してくれない。そういう沈み込んでしまう心の問題へ、ソフト面でのケアの方が、被災者にとっては重要であり、寄り添って、励まして、絶望を少しでも希望や安心にかえるようなケアが必要というお話しがありました。そのために、まずは住む場所の確保、ということをおっしゃられていました。

片山氏が鳥取県知事をされているときに、鳥取県西部沖地震があり、そこでも地域社会が壊滅する現場に直面したそうです。そのときに、それまでどうしようもないと絶望していた方々が、住宅の再建支援をすると決定したとたん、生き生きと復興に向かっていかれたとのことです。

大きな災害、特に今回は大津波により、生活基盤が根こそぎ奪われてしまっています。その中で、まず、将来的に落ち着いてくらせる場所の確保ということが挙げられました。

 

併せて孤独死と震災孤児についてのお話しもありました。

避難所にいたら、同じ被災者がおり慰め合ったり励まし合ったり、心の支えにもなっているが、仮設住宅に入居後、コミュニケーションを取る場も無く孤立化、孤独死が阪神淡路大震災のときは起こっていったそうです。そこで、今回は孤独死が起こらないようにと、被災地支援本部を設置し、主として心のケアをすること。そして各省庁の狭間のニッチの要求を受けることを行っていき、具体的に集会所の設置等も行ったとのことでした。

また、震災がおこり、まず気になられたのは孤児のことだったそうです。幼児と児童、児童保護などあるが、明らかに行政の枠組みから取り残される子どもたちがいる。そこで孤児のためのケアができるような体制づくり等も進められたそうです。今でも、地元の保育士たちを中心に活動が続けられているとのこと。

 

被災者たちへの心のケアの中に、福島県双葉郡の浪江太鼓の紹介がありました。

名実ともに村、町が破壊されるなか、皆で戻ろうと復興しようと意識はをもつが、くじけそうになる。そのときに、太鼓の音が聞こえると、言葉がないながらも音によって気持ちを伝え、励ましあっているというお話しがありました。郷土芸能のもつ力、その重要性が非常に浮き彫りになった。

鳥取の震災の際も、高校生たちが行っている地元の神楽が被災地たちの大きな励ましとなったという話しがあったそうです。日野高校の生徒たちが演じる荒神神楽。それはもう大切にしないと!ということで、韓国や台湾との交流のなかで、伝統芸能の交流・公演発表などを行っていたそうです。

震災により、多くのアーティストが自身の表現を悩んだということも、身の回りの方々からたくさん聞きました。それでも、被災者の心のケアとしての、芸術文化の力がどこの地域でも見られてきたのは事実です。では、その力を我々がどうするのか、ということが今回の研修会では常に投げかけられていました。

 

 

その②へつづく・・

 

(修士 北岡慶子)

 

 

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