建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
日本文化政策学会・企画フォーラム参加報告
博士後期課程/神戸芸術工科大学専任講師 谷口文保


さる2011年12月17日・18日、早稲田大学で開催された日本文化政策学会は、
アートプ
ロジェクトに取り組む若手研究者たちにとって充実した議論の場となった。

私は
2日目に開催された企画フォーラム「アートプロジェクトとは何か?―地域社会の
「戦略」と芸術の「戦術」―」の議論に参加した。東京藝術大学の熊倉純子ゼミ
を中心とする若いメンバーによるアートプロジェクト研究会によって企画された
同フォーラムは、これまでに至る2年
間の研究報告からスタートし、それにゲスト
コメンテーターの坂倉杏介氏(慶応
義塾大学講師)の問いかけが加わり、会場全体
に議論を拡大するという構成であ
った。

坂倉氏の「アートプロジェクトを定義すること」の意義についての問いかけは、
若手研究者たちを大いに刺激した。地域とアートの間で「悶々としている」状況
や、行政や企業への説明効果といった現場のリアルな課題が次々に語られ、アー
トプロジェクトの質的向上や、評価軸の必要性について問題意識が共有されてい
った。中でも東京藝大で大学院生時代から同テーマを掘り下げてきた小泉元宏氏
(現在は鳥取大学講師)の指摘は興味深いものであった。「ア
ートプロジェクト」
が日本でしか流通していない言葉であるという指摘や、こう
した研究が日本の
近代化の問題と深く結びついている観点から分析評価をしていく必要性がある、
という問題提起は、あらためて
アートプロジェクト研究の複雑さと多角的研究
の必要性を明らかにしたと思われ
る。

この議論には、もとより芸術文化環境論を標榜、社会とアートの結び方を研究、
かつ実践してきた九州大学大学院芸術工学研究院藤原惠洋研究室メンバーも
積極的に参加することになった。
藝大修士課程院生時代から中村研究室門下で同テーマを展開してきた國盛麻衣佳さん
はあえてア
ーティストの立場から、「何をもって成功なのか迷う」という現場の
実感を語り、だからこそ冷徹な評価の指標づくりの必要性も込め、実証的な
研究の
重要性を指摘された。
私・谷口はさらに、こうした研究を基礎に「アートプロジェクト
批評」を確立し、
その質的向上を図ることを提案した。
そしてボス藤原惠洋先生は、
建築分野における法的規制の状況と、アートプロジェクト
の自由な実践状況を比
較し、「野放図」なまでに大胆な活動が展開している
アートプロジェクトの可能
性と課題について語られた。
藤原先生の発言は、アートプロジェクトをより社会化していくには法制度や社会的
仕組みとの連携が重要であると同時に、必ずや「市民社会にアートが必要である」
とい
う言葉が発されたのが特に印象的であった。
それは各地各所でさまざまなアートプロジェクトの実践を背景に、それらの社会的
評価を目標としてアートプロジェクト研究に取り組む若手
研究者たちを大いに勇気
づけたたと思われる。


フォーラム終了後、あちらこちらで参加者同士が議論をつづける姿が見られ、こ
こからアートプロジェクト研究の全国的ネットワークが生まれていくのではない
かと感じられた。今回のフォーラムは、まさに萌芽期にあるアートプロジェクト
研究の発展を促進する有意義なものであった。ここでの議論や出会いを、しっか
りと育んでいきたいと思う。
--------------------------------------------
以上です。

特派員:谷口文保

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