建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

2011.6.6.学部授業「芸術文化環境論」にゲスト講師として、箱﨑キャンパスの九州大学新統合領域学府ユーザー感性学専攻修士院生の藤原旅人がご来訪。

講義内容は「瀬戸内国際芸術祭&アデレード芸術祭について」です。
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旅人さんは文化人類学を専攻。文化人類学は人間生活のほぼすべての
現象について文化という観点から研究する学問分野とのこと。コミュニティに
深く介在し、現地滞在やヒアリングを調査の重要な方法として人々の生活文化に
密着した研究が行われる、とのことで興味深い領域のようです。
その中で旅人さんは、人の生活とアートが
どのように密着しているか、を大学院の研究テーマとしています。

今回のゲスト講師では、昨年開催された瀬戸内国際芸術祭と今年の初春に踏査を行ったオーストラリア・アデレード国際演劇祭の調査報告をしていただきました。

 

瀬戸内国際芸術祭は、直島を中心とした7つの島をアートで繋ぎ島の歴史文化を
人々に開放することが重要なコンセプトとなった芸術祭です。地域の問題を
浮き彫りにしながらもアートの力で島の魅力を発信している様子を伺いました。
 

直島は荒廃した製鉄所跡からアートの島として20年以上かけて生まれ変わりました。
現在は沢山の入場者で連日島はにぎわい、アートサイトとしての認知度も
世界レベルです。

直島、男木島、女木島、豊島、小豆島、大島、高松の中には、
荒廃した精錬所跡の島、不法投棄の島、ハンセン病の方が住む隔離された島、
農業が盛んなど、様々な特色があります。様々な問題によって、住民の矜持も
失われつつあった地域にアートが介在することで、住民が自発的にまちづくりや、
他者を歓迎する活動を始めています。


閉鎖していた島には沢山の歴史や文化が凝縮しています。それらがアートと
地域住民の力によって,開花する瞬間の美しさを体感することができます。

ハンセン病の大島に、家族以外の人が上陸するのはおよそ60年ぶりだそうです。
住民によるアート作品やカフェが開設されています。島民の方のもてなしを
受けることができる中で、ハンセン病を知り、またこれまで私たち国が
どういう態度で接してきたのかを、痛い程に感じる場所です。

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瀬戸内国際芸術祭の様子 




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 一方オーストラリアのアデレード芸術祭は1960年代から始まった、
2月〜3月に開催されるアートフェスティバルです。クラシック、先端映像、

サーカス、演劇、音楽、アートがテーマとなっています。
 

オーストラリアで5番目に大きく、学研都市でもあるアデレードでは芸術系の
専攻も多く、街にもギャラリーやアトリエが多く点在しています。市民の
芸術文化に対する意識が高い印象だったそうです。
 

冬休みが明けた時期に開催される不思議なフェスティバルですが、それゆえに
人々の普段の暮らしと芸術祭が共生しているのも魅力的です。


古い教会、病院、キャバレー、路上、仮設的なサーカス劇場、レストラン、
画廊などあらゆる場所が演劇舞台になります。大道芸も盛んにパフォーマンス
されていたそうです。アデレード芸術祭実行委員長へのヒアリングによると、
ここ数年でようやくアジア出身の参加者が参加するようになったとのことでした。

オーストラリアは先住民と開拓者、アジアの移民の対立が、まちの形成への
障害となっていたそうです。しかしこの芸術祭が50年近く行われることによって
異なる民族の文化を受け入れ理解しようとする姿勢が顕著に見えてくるように
なりました。

 

このような踏査報告から両者を比較した考察がなされました。

ボランティアスタッフ・・・瀬戸内国際芸術祭では学生のスタッフが多く
参加の動機目的が明確でない人も多い印象でした。けれども興味関心や、
「なにか役に立ちたい」といった意思がスタッフ参加者に強くあるようでした。
一方アデレードは年齢層も多彩で、アーティストに会いたいなどという明確な
動機がありました。
 

芸術祭の特色・・・アデレード芸術祭はエディンバラ芸術祭やアビニョン芸術祭
ともスタンスの違うものだと考えます。エディンバラは裕福層が鑑賞するような
選抜された高価な演目が多くあります。アビニョンは地域住民がバカンスに
出かける間に開催される、いわば地域外の方が主に楽しむものです。

しかしアデレードは市民の為の、比較的安価であったりオープンな体制の、
市民と密着した芸術祭であることが分かりました。



鑑賞の方法やチケットの購入の仕方、詳細なども案内され、芸術祭に
行ってみたくなるような講義でした。


[D2國盛] 

 

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