建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
公式ホームページより。(藤原惠洋博士も、いまや日本全国スギダラケ倶楽部の会員になりましたので、こころしてHPをみなさまにご紹介!!)

sugidara (スギダラ)とは?

スギダラとは 「杉だらけ」の略です(略されているのは「け」だけという話もありますが)。
スギダラプロジェクトを一言で簡単に説明すると、戦後の植林によって杉だらけになってしまった日本の山林をやっかいもの扱いせず、材木としての杉の魅力 をきちんと評価し、産地や加工者、流通、デザイン、販売など杉を取り囲むシステムを結びつけることで、杉をもっと積極的に使っていこうじゃないか! とい う運動です。つまり、これからは山じゃなくて、街や住まいを杉だらけにしていこう! ということです。もちろん、ただダラダラと日本全国杉だらけにするの ではありません。クオリティの高い、愛情のこもった、杉ならではのモノたちを世の中に広く行き渡らせよう、というプロジェクトです。 

ところで、小さい頃、幼稚園で先生のオルガンに合わせて歌った「お山の杉の子」を覚えていますか? (そんなのは知らない、という人はお祖父ちゃんやお祖母ちゃんに聞いてみてください)

むかし、むかし、そのむかし、椎の木林のすぐそばに
小さなお山があったとさ、あったとさ


で始まる唄。お日様に声を掛けられて目を覚ました杉の子がグングン成長して、いろんなものに活用され、国の発展に役立つ、という内容の歌詞です。その5番には、

大きな杉は 何になる
お舟の帆柱 梯子段
とんとん大工さん たてる家(うち) たてる家
本箱 お机 下駄 足駄
おいしいお弁当 食べる箸
鉛筆 筆入 そのほかに
たのしや まだまだ 役に立つ 役に立つ
 

*吉田テフ子作詞/サトウハチロー補作・佐々木すぐる作曲 
とあります。実はこの歌詞、終戦後に改正されているんですね。戦時中、つくられた当時の歌詞では「お舟の帆柱 梯子段」のところが「兵隊さんを乗せる舟」 であり、「とんとん大工さん たてる家」のところは「傷痍(しょうい)の勇士の 寝るお家(うち)」でした。戦時中から戦後にかけての日本で、いかに杉が もてはやされていたかということがわかります。
 

 

 

 

 

でも、この歌詞の中に登場するもので、今も杉でつくられているものがどれだけあるでしょう? 戦後しばらくは、建材として、建築現場の足場材や杭として大量に使わ れた杉材も、工業製品に取って代わられ、輸入の自由化によって流入した安い外国産材に押されて次第に行き場を失っていきました。今や、日本の木材自給率は 全体の20%ほどになってしまったそうです。 「国産材は高い」「含水率が高く割れや反りが起きやすい」、と敬遠されるのには、さまざまな要因が絡んでいます。狭く起伏が激しい国ゆえに、切り出した材 の運搬に手間がかかること、その人件費が高いこと、乾燥のために保管するスペースにコストがかかること、産地から消費者に渡る間にたくさんの業者が入る古 い仕組みによって値が上がること……。消費者の手に届く時には高い値がついている木材も、元の価格はびっくりするほど安く、その結果、切っても利益の出な い木(銘木などは別として)は売る努力がなされないまま放置されることになり、悪循環が延々と続いているのです。
一方、荒れたまま放置される山を放っておくわけにもいかない国は、環境保護の名目で間伐材の処理に対して補助金を出しています。森林業者に聞くところによれば、「補助金が出るからとりあえず間伐材を切るんです。そのために切り出し道が必要になるからつくるわけです」とのこと。
補助金の出る間伐材は集成材として加工されることで、割れや反りの心配のない建材として広く流通しています。それはそれで別の利用方法や価値があるかもしれません。それによって木造建築の可能性が大きくなったのも事実です。
でも中には、間伐材扱いされるべきではない「大口径間伐材」なるものもあると言います。それは本末転倒というものじゃないでしょうか? 有り余る杉の木 をどうするか、杉花粉の温床と問題視される山をどうするか、無計画な大量の植林によって日本古来の美しい広葉樹林を壊し、植生を変えてしまった責任はどう なるのか、という根本的な部分の解決になるはずがありません。
補助金を出すなら、間伐材にではなく、立派に成長した杉の成木に対して、またその有効活用に対して出していただきたい! 流通システムを見直し、産地と 加工業者が互いに知恵を出し合い、きちんとした商品開発を行って消費サイクルが活発になれば、自然に切り出し道が出来るだろうし、間伐材だってその過程で 自然に発生してくるものでしょう? 
その結果、山の保全がなされれば、川の水質も、海の水質も良くなるでしょう。日本の森林面積の多くを占める杉の利用を考えることは、実は日本を取り囲む自然全体を考えることでもあるのです。

どうせならな んの木が混ざっているのかよくわからない集成材としてではなく、1本の杉の材木としての魅力を存分に生かして、「杉なんだ!」という存在感のあるモノを ちゃんとつくって使ってあげたいものです。何といってもこれだけ大量にあるのですから、ルートを確保すれば安い価格で安定供給できるはず。無垢材だってふ んだんに使えます。 今取り組んでいる杉の家具「sugidara」シリーズでは、外材ではできない杉ならではのものを、今までの家具のつくり方にとらわ れない自由な発想でできないか、試行錯誤しながら開発を進めています。
その中の一部は、すでに企業や大学の研究室などで活躍中! コンピューターや無機質な精密機械がカチャカチャ音を立てている空間に、ドーンと杉の大木が 横たわっているなんて、まさにオアシスです。近づけば杉のいい香り。触ってみればほのかに暖かく、掌にその木が生きてきた数十年の生命を感じます。 

家具だけでなく、例えば、宮崎県日向市で は、街灯や車止め、ベンチや手摺りといったストリートファニチャーとして杉が大活躍しています。「木の文化のまちづくり」をテーマに、行政と地元森林組 合、そして市民木工組合「木の芽会」が協力しあい、自分たちの街を自分たちで創ることを目指している日向市。雨風にさらされる屋外で木を使うのですから、 当然経年変化によって傷みも伴います。でも、この街では「木は傷むもの」ということを前提に、みんなで守り育てていこうという方向を確認し、市民の協力を 得て年に1回メンテナンスするシステムをつくりあげることに成功しました。
考えてみれば、昔はそうやって使い手が自ら手入れをし、手に負えなくなったら街の職人さんが手を貸してくれて、建物も家具もメンテナンスしていたのです。何十年もかかって大きくなった木ですから、何十年も愛情を持って大切に使ってあげたいものですよね。

間伐材であれ、成材であれ、もともと杉には杉としての魅力があって、日本を代表する木として生活の中に溶け込んでいたはず。今、もう一度「杉の良さ」「杉の使い方」を改めて考え、気持ちよく楽しく暮らすための道具として、その使い方を提案していきたいと思っています。 
「一家に一台杉の家具」をキャッチフレーズに。

 
 

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