建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

 

第3回「菊池千年風土時空探検隊ワークショップー宝物ハッケンまち歩き」参加レポート

 

九州大学社会連携事業のいっかんとして藤原惠洋研究室で取り組んでいる菊池市でのワークショップも昨年に引き続き,今回で3回目になります.今回は,正観寺から大琳寺を結ぶ日田街道界隈をグループに分かれて,商業や歴史,自然などについての9の問題をまちの人に突撃インタビューしながら解いていきました.

前回はこの冬いちばんと思われるほどの天気でしたが,今回はカラッと晴れて絶好の待ち歩き日和.早速集まった30名ちかくの社会人,菊池高校の生徒,研究室の学生でまちへ繰り出しました.


わたしは「俺たちは自由だ!」チームで2名の社会人,3名の高校生と一緒にフィールドワークをしました.チーム名の由来は,「だいたいルートから外れていろいろと違う道を歩いてしまうから」なのですが,名前のとおり,おもしろそうな道があったらそこにどんどん入り込んでいくまち歩きになりました.

メンバーのひとり,Sさんはわたしたちを謎の小径にいざなってくれます.碁盤の目状に走る道路は菊池氏時代に築かれたもので,ここが九州の小京都と呼ばれる所以だそうです.その通りから横道に通る人幅の小径はくねくねとうねりながらとなりの通りまでつながっています.まるで猫にでもなった気分でその細い道を歩きます.

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再び通りに出ると,歩道と車道がフラットになっているのに気がつきました.この歩道部分は以前は柳の並木になっていて水路(井手−いで)を見受けることができたそうですが,現在は井手の上を塞いで道路にしているそうです.これらの井手は,肥後国熊本藩初代藩主・加藤清正によって築かれた水路で,菊池川と迫間川を水源に隈府の町中に通っていて,人々の生活を支えていたそうです.歩きやすさで考えると現在の姿の方が安全で(とはいっても,歩道との境目がないのでちょっとこわい思いもしますが)よいのかもしれませんが,今も生きている水路を感じることができないのは残念に思いました.

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隈府の町には,お菓子屋さんが多い!ということで,質問のひとつでもあった「製菓店に立ち寄ってインタビュー」をすべく,「丸宝」というお店に伺いました.いちばんの売れ筋「わいふ」は,レモンの風味がさわやかなクッキーです.お話を伺っていておもしろかったのは,隈府に何店舗もある菓子店それぞれが独自に製品を作っていて同じものを販売していないということでした.また,ここでは新しく「スイーツ宅配便」を始めるそうです.お菓子とお茶をいただき,あったまったところでまち歩き再開.ごちそうさまでした.

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西照寺の境内に入ると,左手に不思議な小径をハッケン.さっそくインタビューをします.以前はここには蔵があったそうでその頃の名残というところまではわかりました.菜種の油をひく石臼の片割れもハッケン.

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隈府にはお地蔵様が多く祀られています.あるお地蔵様の前でこれは何のために祀られているのだろうと話をしていると,ちょっと離れたところでわたしたちの様子を眺めていたおばあさんが声をかけてきて,火除け地蔵であることを教えてくれました.

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寄り道の大好きなわたしたちは,津村友宝堂を訪ね柚餅子について奥様に伺いました.戦前は酒樽を製造していたそうですが,戦後あんこの販売から始まり,今は製菓・販売をされているそうです.お菓子づくりの材料も販売していらっしゃっています.柚餅子もいただきました.竹の皮と柚子の香りがさっぱりとしていておいしかったです.奥様は,継ぎ手がいないがためにお店をたたむ人が増えてきたことについて,「すきなものがどんどんなくなっていくことが悲しい」とおっしゃっていました.わたしたちはこういった声を聞き,伝える役目があるように思います.

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目的地,大琳寺についた頃には2時間も歩いていて驚きましたが不思議と疲れはありませんでした.問題の答えを探しながらお寺の周辺を歩いていると,おばあさん2人が声をかけてきてくださいました.やっぱりわたしたちって目立つみたいですね.確かに,6人くらいの集団が,しかも年齢もばらばらの,歩いているだけでまちでは目を引く光景だと思います.でも,菊池高校の生徒さんのおかげで地元の人が何かしているということが伝わり,気軽に声をかけてもらえるきっかけになっているみたいです.おばあさんたちは「こどもの頃はね,」とわたしたちが探している答えについて教えてくださいました.

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北宮神社まで足を運び,お参りをしてまち歩きも後半戦.隈府小学校や原口製菓の方へ向かう途中,行き先の方から歩いてきた女性が「まち歩きの人たちね?」と声をかけてくれます.「さっきも見かけたわよ.」ちょっとした会話でしたが,わたしはなんだかとても嬉しくなりました.わたしたちは,菊池について知ろう,ハッケンしようという姿勢でまちを歩いています.一方まちの人たちは,わたしたちに質問される,わたしたちの姿を見るといったような経験をしています.これまで,じぶんたちの知識や理解を深めることばかりを思っていましたが,いつの間にか周りの人たちを巻き込み始めている,このときそう感じることができました.

隈府では,オープンガーデンを行っているお宅があり,わたしたちはその一つ,荒木邸の「こて庭」を見に行きました.庭の端に鎮座するのは真っ白な壁と下部になまこ壁を有する蔵.この蔵は明治14年に建てられたもので,今は改修さ書斎のような空間がつくられていました.今も米の貯蔵に使用されていて,米の量をはかる升や樽をご主人が見せてくださいました.蔵の外壁には,左官職人によって仕上げられた鶴亀松,孔雀のこて絵やなまこ壁が見受けられます.また,庭石は様々な場所のものを持ち込んでつくられたそうです.

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今回のまち歩きでは,先に記したように,声をかけられる経験が多くなったこと,まちの人たちの気づきを感じるひとときでした.そして,わたしがそのことに気づくまで,わたし自身が一方的な参加者であったように思います.つまり,菊池のまちを歩くことで学ぶ,知る,ハッケンするという目的のみに終始した参加の形で,その先にあるのは次回のワークショップであり,結局のところ受け身のままでいるという状態です.しかし今回,まちの人たちの経験(わたしたちとの会話や受け答え)に気づくことができたことによって,わたしたちは単なる参加者ではなくなったように思います.リアクションの連鎖をわたしたちはつづけなくては,と思いました.そうすることで,この取り組みで得るものはさらに広がりを見せるような気がします.

 

次回は3月13日(日).このときには,写真家の藤田洋三さんや作家の森まゆみさんをお迎えし,藤原惠洋教授と3人でのシンポジウムが開かれます.これまでの振り返りと共に,菊池のおもしろさを皆さんといっしょに考える,そんなひととときになりますので,ぜひお時間のある方はご参加ください.

 

(D2 A.Nakamura)

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