建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

定例ゼミ 議事録

615日(火) 16:30 19:20

参加 / 藤原先生・中村先生・村上・仲村・トウケイ・趙

小伊塚・光城・畠中・望月・北岡・國盛

司会:村上  議事録:望月

 発表者:藤原先生

北岡さんお土産 名菓 おいでませ

藤原先生発表

①『日本近代建築史学の相対化から創造的文化資源としての再布置へ』
 
「補助線(相対化)を用いた議論

→近年補助線を引いた研究を学問の領域でされている研究者が減少」

キーワード 東アジア 近代和風

 

 

事例

歴史的建造物が重要文化財になったとしても、その後、市民に親しみをもってもらう必要がある。その為の市民参加型プロジェクトを先駆的に行ってきたと自負している。

②日本文化人類学会での口頭発表『当事者としての住民の主体化を促した参加型まちづくりの可能性と不可能生』に関して

ネイティブ人類学(トライアルな領域)の領域の学問

 ※いわゆる藤原先生の研究史にそって発表

藤原恵洋教授 建築史家/工学博士/まちづくりオルガナイザー

オルガナイザーと名乗るきっかけ←サークル村を主唱した “谷川雁”さんにならう。
“原点”; 人間の原点に立ち返ることの大切さの提案

行政 専門家がまちづくりをしていた

住民参加型まちづくり 共同参画によるまちづくりのチャンスが来たが、橋渡しできる人間がほとんど存在しなかった


住民参加型まちづくりの必要性がほとんど認識されていなかった

林泰義さん 黎明期の実践者 → 都市デザインに市民参加を実践していく

 建築家に必要なのがフィールドワーク 北海道からシンガポールまで生で見てその地域を感じることを繰り返していた

 旧来 法令の下、都市計画策定には厳然とした方法論が遵守されていた

問題 北海道 九州どこでも同じものになってしまう 相互信頼/相互補完/相互扶助といった人間関係/地域社会が崩壊していった

 地域があるから都市が再生されるという考え方(藤原)

だから市民主体住民参加型の地域づくりまちづくりが求められている

 再生すべき三つの要素(藤原先生が考える重要な観点!)

文脈の再生

矜持の再生

紐帯の再生

 


解決策

他者を必要とする「まちづくり」

行政=専門家=住民の三者一体

他者としての「よそ者」「わか者」「ばか者」の介在がまちづくり活動を相対化し活性化していく

 藤原先生の座右の銘 「足思手考」:脳みそと手や足が同じように動く!

歴史的建造物や生活環境の調査へ「考現学」の導入

まち歩き

藤森照信先生らの建築探偵 赤瀬川原平氏らの路上観察

観察力の鍛錬とメディア的還元

宮崎清先生たちのものづくりデザイン系のデザインサーヴェイ(観察した成果をデザインに還元する)

地域固有の文化資源


九州芸術工科大学に招かれてからのはなし

全く新しいオリジナルの授業を開設

「造形論」インカムでなくアウトカム

 そして

大学を相手ではなく地域を相手に! → 介添え役になろう!

 今何を求められているのか?先に感じて手助けをして行く

 いろいろな具体例を通して

八女市八幡校区 地域/村での活動 → インベントリーづくり

社会変化によって地域の風景が変わって行くものを発見調査

高校生がワークショップを通して報告書を作成発表

その他さまざまな活動を展開

国土交通省からの依頼事業を開始

地域の声を聞く事をベースとした事業へ作り替える

国土交通省が驚く住民参加型の方法論:現地の屋外でピクニック気分で芋煮会を開催しながら土地の記憶やこれからの抱負を語りあうユニークで楽しい和気あいあいの会議

 まとめ

目的

当事者の主体化

地域育て/まち育ての主人公育て

 方法

先回りしてナビゲートできる介添え役の存在の養成

地域社会の紐帯=communityを構築できる

 

まとめ(藤原先生)

建築史家/まちづくりオルガナイザーの両側面を補完

史観形成に生活観、相対化、といった影響をもたらす

コーディネーター当事者=介添え役

まちづくり、地域づくりのコーディネーターには「当事者」であることと「介添え役」であることのバランス感覚が必要

③建築技術歴史年表を用いたはなし

 発表全体に対する質疑応答

 明代さん「今までにないものを切り開く、先回りする介添え役をする上での迷い不安はあったのですか?そしてどのように解消したのか?」

 先生「最初住民のひとりからネガティブな発言を受けた事がある。よそ者にはわからないのではないか、と。しかし行政サイドからはぜひとも支援してほしい、と。このギャップを埋めて行くのは、自分自身の主体的な活動しかない。そもそも藤原先生は都市における住民参加・市民参加を展開してきた経験はあっても、村落社会で同じ事ができる自信、閉鎖された地域社会のみなさんと上手に仲良くやっていけるだろうか、と自信があったわけではない」

「その後、実際に何度か現地へ行ったが、なかなか展開する感じがつかめない。そんなとき

手伝ってくれた学生と会議後村のラーメン屋に寄った。先ほどまでの会合に来ていた参加者が飲んでおりまあまあ一杯飲め〜と薦められ、そこからほんとうの交流が始まったような気がする」

「先生は参加者が勝手に話している発言を模造紙にどんどん記録しているよね?あれはなんで?」

先生「発された意見や言葉は会議全体の財産です。個人のメモやノートでの記録は個人のものでしかないけれど、模造紙に大きく記録していけば全員の記録になっていきます。さらにわかりやすく参加者の皆さんに内容を伝えたり、確認してもらったり、話し合いそのものを資産として全部還元出来るじゃないですか!」

住民の方々から「これはけっこううまいやりかたの会議の方法じゃないか?」

その後、ようやく住民と交流がスムーズに進むようになった感がある。

 

住民の方々がより積極的になっていった気がする。 

↓一方、地域社会に関する背景を知るために、たくさんの文献を解読し、地域に関して研究していった。これは文脈をとらえるうえで理論的な裏打ち作業と言える。欠かしては行けない作業。住民以上に地域を知ることが重要。会議の席上でも住民が納得してくれるようになる。

藤原先生「不安を解消するため、理論的な裏打ち道筋を立てるために研究する」

その後、住人が空き家を用意してくれるようになった

 

村上さん「よそ者だからこそできたことはありますか?」

先生「いつしか閉鎖された年中行事を復元しませんか、と発言したことがきっかけになって、よみがえったものがある。これはよそ者だから言えたこと。地域社会の衰退の背景や内情を知らないために、かえって発言する事ができたことも少なくない。

新しいイベントや行事を開催するきっかけづくりが相当できた

 一例に、田んぼの真ん中でライブを開いたこともある(2000人程度の客が来た)

この間、住民票を持って移住。現地に7年間ほど住んだことがある。これも重要な実践だったはず。

國盛さん「先回りをして実践的プログラムを作って行くには何が必要か?例えば私は自分に不足していることやコンプレックスの面から先回りをする。」

 

先生「一つの例を考えてみたい。

ここに都市に必要な空間がある。どういう公園にするか?

専門的な都市計画家は、みずからのデザインでさっさと作ってしまうことができる。

だが私は異なる道筋を考えてきた。

都市公園のデザインをいろんな角度から考えてみる。老若男女、誰にとっての公園か。誰が楽しむのか。一年四季つれづれ、どのような変化があるのか。気象天候季節台風など。さらにはもっと身近な一日の時間帯での変化の楽しみ方。反面、それはいったい誰が守るのか。誰が掃除をするのか。愛犬家にとっての公園とデートや散策を楽しみたい利用者の立場は異なるはず。そこからアイデアを数多く考えていくべき。だからこそ多士済々に参加してもらった話し合いはアイデア合戦は有効であり、それらからゆっくり積みあげていくことが肝要。一方、予算や技術やスケジュール等の条件と相俟って総合的にデザインしていく必要がある。

重要なのは自分がさっさと何かを決めるのではなく、沢山のオルタナティブの選択肢を延々と考え一般の人と議論し合い、少しずつ合意のレベルを引き上げて行くこと。このプロセスが大切で、この密度の濃い状態を維持する為に介添え役が必ず必要。

だが専門家や大学は小手先の方法論に固執する事が少なくない。大切なのは持続可能な議論をじっくりゆっくり粘り強く維持しながら合意レベルを持ち上げていくことで、“議論の裾野を広げていけば合意の頂点も必ず高まって行く。裾野を広げれば広げる程頂点が高くなる。それがクオリティーであり、質の高さである。

國盛さん「もう一つ質問です。今先生の中で考えられている日本でモデルにできるアイデアや実践例はありますか?」

先生「クリエイティブシティの考え方がようやく台頭してきた。哲学や考え方がとてもたいせつで、方法論はあんまり問題ではないと考える。つまり、多彩な手法や道筋があっていいはず。

ドイツに居住する友達に仲さんという人が居る。ドイツの郊外を仲さんと話しながら散策していると、森の樹木や庭園の草木たちと語り合う、たくさんの鳥の声が聞こえる、気象の変化や風向きの動きがよく感じられるようになる。大地にはじつに豊かな生き物が共生しており、たくさんの野花、樹木が生き合っている。そんな環境に中に入ってしまうと、騒音や人工的に生まれた音が聞こえなくなる。ドイツでよく感じるのは静かだということ。社会や世間が静かに落ち着いている。その中に入れば入るほど、大きな抱擁力をもった自然のなかに生きている事を感じる。人間の生きていること、五感を感じれる生き方を大切にしたい。
でもみなさんどうでしょうか?ずさんな五感の使い方をしてはいませんか。30数年前から、私はテレビも見ないし携帯も使わない、静かに静かに生きてきた気がする。新聞もあまり読まないので、いよいよ情報に疎遠な状態をあえてつくってしまっているような気がする。そのため目下の情報を得るのは、常に人からでしかありえない。
でもこうした生き方にこだわっているとよくわかることがある。自分が生きて行くのにほんとうに必要なものはおのずから文脈をかたちづくるものであり、情報もこうした自分自身の生きる文脈を豊かにしていくためにこそ必要なのではないだろうか。そのような「私の情報」こそが大切だと思っている。そのような情報が生まれる瞬間というのは、私自身の五感からの感動から全ては始まるような気がする。このことがきちんと了解されていれば、地域社会や都市を再生していくための壮大な考え方でもある「クリエイティブシティ」のような考え方や方法論はいくらでも創造できると考えている。

ただ、私があんまりひとつひとつの生き方にこだわりを見せすぎると、研究室の若い学生諸君のみなさんが、畏怖してどことなくひいていくのが分かりますので。。。苦笑」

 

先生「麻衣佳さんはどう思うんですか?私はあなたが石炭を具材にしてしまう所だけで感動しているんですけど。。。そんな感じかなあ」

 先生「パブリックはいつ何処で生まれるか?

パンナ・アーレンツさんの言葉:人間とは主体的に観察することになり、同時に観察される客体となった。これが背中合わせになった瞬間、そこが“公共”になる、と。

これを皆にも見つめてほしい。

みんなの前で議論、論文、パフォーマンスをすればする程パブリックの強度があがっていく。これはどのリーチでも必ず伝える事ができる。」

 

事務事項

6月26日赤星さんがサマルカンドから帰ってくる。
6月27日に菊池市の養生詩塾の田村さんが大きな家に一人で住んでいるが、元気がなく元気をつけてあげたいなあと思っている。田村さんのお宅を綺麗にしますよ!と伝えている。みなさんのなかで一緒に行ってもらえる人が居たらどうですか?おいしい食事と菊池の肌にやさしい素敵な温泉入浴が付いてきます。

ここしばらく定例ゼミでいろんな外部の方の発表をされてもいいんじゃないか?

4年生望月勇作くんが欧州武者修行の旅を計画している。彼の壮行会についてどうですか?

 研究室で住所録を作成します。その為にメーリングリストを使って情報収集をしております。必要事項をのせてありますのでそちらを使って情報提供をよろしくお願い致します。

問題点:メーリングリスト外の方の情報をどうするべきか?

 

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藍蟹堂

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