建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、藤原惠洋(ふじはらけいよう)教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!

定例ゼミ 議事録 
6月8日(火) 16:30~19:20
参加:藤原先生・中村先生・村上・仲村・トウケイ・趙・
   小伊塚・光城・畠中・望月・北岡・國盛

議事録:望月
発表者:藤原先生
北岡さんお土産:学外演習先から 山口県名菓 おいでませ

藤原先生発表
『日本近代建築史学の相対化から創造的文化資源としての再布置へ』
研究手法:補助線(相対化)を用いた研究・議論を展開。
近年補助線を引いた研究を学問の領域でされている研究者が減少している。

補助線を用いた研究のメリット:研究対象や様々な分野を俯瞰的に捉え、共通点や関係性を見出す事で各分野の交流、成果の増幅、可能性の発見が可能となる。

研究対象のキーワード:東アジア 近代和風建築
研究方法:建築学の理論研究+重要文化財を用いた市民参加型プロジェクトをコーディネート

『当事者としての住民の主体化を促した参加型まちづくりの可能性と不可能生』
ネイティブ人類学(トライアルな領域)の領域の学問
※藤原史  建築史家/工学博士/まちづくりオルガナイザーとして活躍

オルガナイザーと名乗るきっかけ 
サークル村(※)の活動を行っていた谷川雁氏に由来する。
谷川氏は人間の原点に立ち返ることの大切さの提案した文学を“原点”を著書
「オルガナイザー」としての活躍を独自の形で受け継ぐべく
「まちづくりオルガナイザー」として活動を始める。
(※)サークル村 昭和36年頃、筑豊地方において農家、炭鉱、鉱山労働者などが文学を通して自己表現を行う活動が発足し、全国においても活躍が見られるようになった。自然と対峙する職業の人々は、人間の本来の五感を通した感受性や直感的な能力が長けているとして、これらの能力をもとにした、文学を通しての市民の自立・自発を谷川氏は促した。

まちづくりオルガナイザーとしての活動の経緯
1974年頃~ 当時法律により都市計画が決められ、行政・専門家がまちづくりをしていた

アメリカ西海岸の影響を受けた市民参加型のまちづくりは、横浜など一部の地域で展開されているのみであった。経済効率第一の画一化した地方開発からの地方地域が崩壊していった

地域住民の相互信頼/相互補完/相互扶助といった人間関係の崩壊

住民参加型まちづくり・恊働参画によるまちづくりの必要性が重要とされる流れに変わり始めた。当時行政主導のまちづくりから市民主体のまちづくりを促せる人間がほとんど存在しなかった

当時の実践者
林泰義氏:日本発の実践者、都市デザイン設営
藤原先生:フィールドワークにより地域の問題、原因、解決策を導き市民主体のまちづくりの介添えを行う
(藤原論)
地域があるから都市の再生が可能となる。市民主体住民参加型の地域づくりの必要性

再生すべき三つの要素
文脈の再生(地域の歴史、由来来歴を明らかにする)
矜持の再生(住民のまちを誇る気持ち、自信、自尊心、プライド)
紐帯の再生(社会のコミュニティ、他者を必要とするまちづくり)
 
 ↓解決策
他者を必要とする「まちづくり」の実践
行政=専門家=住民の三者一体
他者としての「よそ者」「わか者」「ばか者」の介在がまちづくり活動を相対化し活性化する

「足思手考」(そくししゅこう):足で思って、手で考える
→思考をするのと同等に手や足、五感を使って経験することが重要。

歴史的建造物や生活環境の調査へ「考現学」の導入

まち歩き:藤森照信さんらの建築探偵 赤瀬川原平さんらと路上観察研究→観察力の鍛錬とメディア的還元

宮崎清さんらのデザインサーヴェイ(観察力をデザインに還元する)

地域固有の文化資源の再検証、再評価へとつなぎ、まちづくりへと繋げる

九州芸術工科大学に招かれてからの活動展開
新しい授業方法を展開
例:「造形論」
  歴史、知識のインカムと同時に社会を相手にしたアウトカムを授業内で実践する授業展開

地域の介添え役を自発的に行う人材の育成を目標として実施
今地域に必要なものは何か?先に感じて自発的なまちづくりへと発展する手助けができる人材

例:「八女市八幡校区」
地域・村での活動 → インベントリーづくり 
社会変化によって地域の風景が変わって行くものを発見し調査
高校生がワークショップを通して報告書を作成発表
朝市、あきまつりなど様々な活動展開に至る

国土交通省からの依頼事業を開始:
地域の声を聞く事をベースとした事業へアレンジし実践
まちづくりの目的設定→地域育て・まち育ての主人公育て
(例:河川工事の際、河川敷で現地会議を開くなど特殊な方法での会議を開催 市民の観察目、自発性を育てる)

地域社会の紐帯=communityを構築できる

まとめ
■当事者の主体化の可能性と不可能性

可能性: 建築史家/まちづくりオルガナイザーの両側面を補完した実践研究
 生活観、相対化、といった視点を持ち込むことが可能となる
 先回りしてナビゲートできる介添え役の存在の養成
 (介添え役 =コーディネーター当事者)

不可能性:いつまで経ってもむらびと(村民)にはなれずじまい

まちづくり、地域づくりのコーディネーターには
「当事者」であることと「介添え役」であることのバランス感覚が必要
 
建築技術歴史年表紹介

質疑応答
仲村「今までにないものを切り開く、先回りする介添え役をする上での迷い不安はあったのですか?そしてどのように解消したのか?」

先生「地域社会は決して藤原を歓迎したわけではないため、当初相克があったものの、いくつかの契機を生かしながら地域社会と馴染む努力をしていった。」

村上「よそ者だからこそできたことはありますか?」

先生「外部の人間だからこそ提案できることもある。その提案がいろんな行事開催のきっかけづくりとなることがあった。」
例 : 田んぼでライブ開催 / 八女市の木鶏書院には2000人の来客 /村との交流の継続

國盛「地域住民の自発的なまちづくりを介添えするために、先回りをして実践的プログラムを作って行くにはどのような視点や考えが必要ですか?私は自分に不足していることやコンプレックスの克服が活動の動機になります。」

先生「例:ここに都市に必要な空間がある。どういう公園にするか?
   私の場合、
   ①いろんな角度から最低20通り考え、都市公園を総合的にデザイン
   ②重要なのは自分の一つの案で決めるのではなく、沢山のオルタナティブの選択肢を延々と考え一般の人と議論し合い、少しずつ削って行く。
   このプロセスが大切で、この密度の濃い状態を維持する為に介添え役が必要。
   最近の大学では方法論の教育が主流である。しかし大切なのは議論の維持で、“議論の裾野を広げるところ”にある。裾野を広げれば広げる程、研究、実践対象の頂点(質)が高くなる。
   目標や研究対象の関連性から生まれる分野、裾野を十分に広げ、知識、経験、見識を深めることが重要である。

國盛「もう一つ質問です。建築の理論研究と、まちづくりの実践の成果を包括して生まれる、日本における地域計画の案、モデルは現在ありますか?」

先生「クリエイティブシティというアウトプットの一つは確かに形式として参考となるものがあるけれど、重要なのはそういった形式の創出を成果とするのではない。鳥の声、たくさんの野花、樹木、自然を感じるなかや、生活を慈しむ中に生きている事を実感し、人間の生きていることへの感動、五感で空間、生活を感じることのできる生き方の実現が目標である。現在は五感を使った生活がなおざりになりがちな日本社会である。私にとって情報を得るのは、常に人からで、文脈をかたちづくる情報が大切である。そのような五感からの感動から全ては始まる。ただ公共において生活や感覚に対するこだわりを見せることに対しては、調節もしていますよ。

パブリックはいつ何処で生まれるか?

ハンナアーレンツ氏 [人間とは主体的に観察することになり、同時に観察される客体である。これが背中合わせになった瞬間“公共”になる。]

学生でのケースに例えると、人前での議論、論文、パフォーマンスはすればする程パブリックの強度が上がる。どのリーチでも必ず伝える事ができるようになる。それは自分自身が発信を通して主体的に他者を見つめ、また他者に見つめられることによる。」 

議事録者 望月の感想
藤原先生のこれまで継続され続けてきた研究・調査活動を文脈としての情報を通して感じ、藤原先生の新しい一面を垣間見ることのできるゼミだった。
すべての始まりは“感動”から。その言葉は表現者としての望月に響き、同時に研究者としての私自身にも強烈に響いた。最近身のまわりが人と人の交流が無くなり、ネットワークでの交流が広がり、3Dテレビが売り出され世界がデジタル化していっているのを感じている。それも便利で面白いと思うが、やはり大切なのは身をもって五感を使うことだと改めて思った。
また“公共”ということについても考える機会を頂き、何度も議論検討をした状態で公共に公開するのが大切だと強く思った。

Add Comments

名前
 
  絵文字
 
 
プロフィール

藍蟹堂

藍蟹堂。感受性は海の底から波濤や世界の波瀾万丈を見上げる蟹そのもの。では蟹とは?

『日田ラボ』 最新記事
『きくけん』 最新記事
カテゴリ別アーカイブ
月別アーカイブ
記事検索
ギャラリー
  • いよいよ塩田千春さんの展覧会が森美術館で開催!!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
  • ふ印ラボ第3回定例ゼミを開催しました!!望月ゆうさく先輩の自己紹介!!田晶さんの北京林業大学卒業プロジェクト、台湾文化資産局柯勝釗さんの博士研究を聴講・討論!!
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ