建築史家でまちづくりオルガナイザーこと、九州大学藤原惠洋(ふじはらけいよう)名誉教授の活動と、通称ふ印ラボ(ここで「ふ」の文字は意味深長なのでちょっと解説を。ひらがなの「ふ」は「不」の草体。カタカナの「フ」は「不」の初画を指しています。そのまま解釈すれば「つたない」かもしれませぬ。しかし一歩踏み込んで「不二」とも捉え「二つとないもの」を目指そう、と呼びかけています。ゆえに理想に向けて邁進する意識や志を表わすマークなのです。泰然・悠然・自然・真摯・真面目・愚直を生きる九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論藤原惠洋研究室というわけ、です!)の活動の様子をブログを介して多くの同人・お仲間・みなさまにお伝えしています。 コミュニケーションや対話のきっかけとなるようなコメントもお待ちしております!
ふ印ラボ関係のみなさまへ

あらためて対話を生み出しにくい閉塞された時代、と思います。悲喜こ
もごも2008年の道すじはどうなっていくのでしょうか?

最初の定例ゼミを冒頭1月7日(月・午後2時~5時)に開催しました
が、その際に行なった年頭の一字に対し寄せてくれた諸君の希望や抱負
は意味深いものでした。

私は「道」と書きました。五里霧中で歩んできたこれまでをやや冷静に
ふりかえり、これからの道すじを明らかにしたい、という強い思いと、
建築史学+芸術文化環境論+文化政策学の三本柱を軸とした私独自の研
究世界のさらなる研鑽作業に対する態度や作法を、あえて道という古色
蒼然とした謂いで表現しておきたいと思ったのです。

ひきつづき二回目の定例ゼミでは、いよいよまとめに迫った卒業研究な
らびに修士研究の進捗動向が紹介されました。

さて、私も昨年からこの新年にかけて、いくらか動きが生じています。
まずはそれらを簡単に紹介しつつ、今後の研究室活動によりいっそうの
参画と支援をうったえておきたいと思います。


(1)八女市の市町村会館の再生事業
  ようやく地域交流センターへのコンバージョン(転換)設計案がま
とまりつつあります。設計業者は山下設計、大手の設計事務所です。現
在、大ホール、小ホール周りの詳細を詰めつつあります。今年9月まで
の実施設計、それ以降に施工が動き、約1年間の建設事業を経て、来年
2009年9月には竣工、3ヶ月程度のホール養生を行ない、平成22
年(2010年)1月のグランドオープンの予定です。私は八女市から
の依頼で、全体に対するアドバイザーという立場で、これからの動きの
要所要所にかかわることになるはずです。


(2)八女市と東部地区の市町村合併事業
  平成22年2月に、八女市と黒木町・立花町・広川町・矢部村・星
野村との市町村合併が行なわれます。(予定)これまで矢部川流域に展
開するこれらの町や村を対象フィールドとしてさまざまな活動を展開し
てきましたが、ようやく行政的にも一体感のある地域社会となっていく
ことを願っています。今後は行政マニュフェスト構築や新市建設計画に
反映していく観点からの実証的な調査研究を急ぎたいと考えています。
 また現在も、九州大学社会連携事業として、八女クリエイティブ・
フィールドワーク事業を続行中です。こうした地道な調査活動や研鑽か
ら得てきた知見は少なくありません。おおいに今後の、八女地域全体の
地域づくりへ還元していくことを構想してやみません。


(3)九州大学大学院芸術工学府 環境・遺産デザインコース + 大
学院ホールマネジメントエンジニア育成ユニット
  今年4月より、大学院所属が芸術工学府 環境・遺産デザインコー
スと変わります。もっぱら環境設計学科や建築学科の学部卒業後に進学
する大学院生の教育研究指導にあたるのですが、講義科目は「芸術・文
化環境論」を死守しました。芸術文化と社会との結びかたを理論化し実
践していこうという主旨はなおいっそう強化しつつあります。そこか
ら、新たな大学院人材養成プログラムとして科学振興調整費を獲得した
ホールマネジメントエンジニア育成ユニット(いわゆる劇場支配人養成
講座)のスタッフとしても稼働することとなりました。
 この領域での研究には、中国留学生で大学院博士前期課程に在籍中の
李成倫君が展開中の『近代化遺産と文化資源の評価に基づいたヘリテイ
ジング(遺産スタディツアー)の構築に関する研究』(仮題)が日中を
横断するかたちで成果づけられていくことを期待されます。


(4)らんかいどう ふ印ラボ・クリエイティブ・プロジェクト1 比
較建築学+比較デザイン学
  初めて海外へ行ったのは1万トン級の船舶にっぽん丸での国際航
海、赤道を南下し初めて降り立った国がパプアニューギニア。そこから
数えれば69カ国の建築と都市と暮らしを探訪してきたことになりま
す。今年は70カ国目の記念碑にアイルランド調査を位置づけておりエ
ンヤを聴いたり、映画『ONCE~ダブリンの街角で~』に溜息しな
がら夏季調査の準備を開始しているところ。
 そのうち、たとえば昨年末には急遽、15年ぶりに韓国・全羅道のま
ちやむらを訪ねることとなり、すでに前世紀に調査をした楽安面邑が韓
国を代表する歴史的民俗村として再評価再整備されてしまっていること
に驚いたり、数回目の光州市の郊外や木浦市の沿岸部の都市整備があま
りにも現代的な様相を生み出してしまっていることに憤慨したりとする
ように、フィールドワーカーとして年輪を重ねただけ新たに獲得した観
点や気づきがもたらされることも少なくありません。比較建築学、とは
10年ほど前から渉猟するしか能がない私が自嘲して呼称しだしたこと
ですが、むしろ建築に対する私の感受性を基盤づけるにはほど良い概念
として成長しつつあるようです。
 この研究分野では、韓国より留学中のファイバーアーティスト・李粉
善さんが博士後期課程に在籍しながら、『〈布〉観の成立と展開にに関
する日韓比較研究』(仮題)のテーマで課程博士論文を作成中です。多
摩美術大学大学院時代に指導を受けたわたなべひろこ先生を初め良い成
果が生まれる事を数多くの日韓の仲間たちが期待しています。
また、個人的な興味を募らせているのが、数年来、これまでのの芸
術工学とは何か?論議とは別に私じしんの歴史家としての関心から初代
学長であり芸術工学概念の創案者・小池新二先生の研究を単独で進めて
おり、その中でも強靭なテーゼとなった「技術の人間化」とはじつのと
ころいったい何だったのだろうか、そんなモチベーションから調査研究
を展開中です。その結果、戦前期から戦中、戦後期にかけてデザイン・
イデオローグとして限られた国際情報収集に向け如何なく力を発揮した
小池先生独特のデザイン・プロデューサーとしての初期動向が見え、さ
らには哲学的な立場からはすでに弁証法的止揚発想を根幹としていたこ
とが見て取れます。芸術+工学の根幹がすでに戦前期より小池先生の内
部に宿っていたと見る事ができます。今後、より詳細な小池研究を展開
すれば「芸術工学」の真意を分析的に把握する可能性が十分あると考え
ているのです。

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藍蟹堂

藍蟹堂。感受性は海の底から波濤や世界の波瀾万丈を見上げる蟹そのもの。では蟹とは?

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